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欧州裁判所は、コンピュータのプログラミング言語と機能性は保護されないと判示 (12/11/01)
ルクセンブルクの欧州裁判所は、SAS Institute Inc. v. World Programming Ltd., No. C-406/10 (May 2, 2012)において、ヨーロッパ連合の法において、コンピュータプログラミングの機能性とプログラミング言語は著作権法の保護の対象ではないと判示した。SASは、Base SASデータベースがデータを取り出すためのスクリプト言語とアプリケーションを開発した。商用利用可能なSAS製品を使うことで、被告は、その言語で書かれたスクリプトを動かすことができるソフトを開発した。欧州裁判所は、これは著作権侵害ではないと判断した。すなわち、ヨーロッパソフトウェア著作権指令は、「インターフェイスの基礎となるものを含め、コンピュータプログラムのいかなる要素の基礎となるアイディアや原則」を保護の対象から除いており、被告がコンピュータプログラムの機能性の複製を行ったことやプログラム言語を用いたことは、保護される表現形式の侵害には当たらないと述べた。
この決定は、コンピュータソフトウェアの保護に対する著作権法の調和を図りたいという潮流を反映して、国際的な注目を集めている。たとえば、Oracle America, Inc. v. Google Inc., No. C 10-03561 WHA (N.D. Cal. May 31, 2012)において、カリフォルニア北地区地方裁判所は、Java Application Programming Interface (API)の構造、数列、構成が著作権法の保護の対象になるかという判断を行う前に、当事者に対して、欧州裁判所のSAS Institute決定について、簡単にまとめるように求めた。OracleがJava関連の著作権と特許権を保有していたSun Microsystemsを買収した後、Oracleは、Googleに対して、Androidプラットフォームが特許権及び著作権を侵害しているとして、訴訟を提起した。Googleを支持する判断の中で、Alsup裁判官は、「方法を実行するために使われる特定のコードが異なる限り、著作権法において、Java APIで使われるいかなる方法の中で、全く同様の機能又は仕様を実行するコードを書くことは自由である。」と述べた。さらに、Googleが異なるヘッダーラインやクラス名称を使うことを選択しなかったことは本件と関係がないとし、「著作権法の保護は、法律論として、名称や短いフレーズには及ばない。」と述べた。最後に、裁判所は、特許法と著作権法の基礎となる考え方に衝突が生じた場合、特許法が優先されるべきであるという見解を示した。したがって、仮に、APIの構造、数列、構成が創造力の産物だとしても(そして、争いあるも、著作権法の保護の対象だと仮にしても)、特許権で保護されていると主張されているAPIに著作権法の保護を与えることは、20年という特許法上の請求の制限と矛盾してしまうだろうと述べた。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com