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連邦巡回区控訴裁判所は、共同特許権侵害に関する誘引の証明の要件を緩和した (13/02/01)
Akamai Tech. v. Limelight Networks及びMcKesson Technologies, Inc. v. Epic Systems Corp.事件における、6対5の全裁判官による決定において、連邦巡回区控訴裁判所は、侵害の誘引の法理に基づく、責任の立証の基準を明確に緩和した。
BMC Resources, Inc. v. Paymentech, L.P., 498 F.3d 1373 (Fed. Cir. 2007)における同裁判所の判例の下、方法クレームの誘引侵害を証明するためには、方法クレームのすべての段階を実行した一人の直接侵害者が必要である。Akamai及びMcKessonのいずれにおいても、そのような直接侵害者は存在しなかった。Akamaiにおいて、被告は、方法クレームのうち、いくつかの段階を実施し、残りの段階を実施するように他者を誘引した。McKessonにおいては、被告が、複数の者に対して、方法クレームのすべての段階を「集合的に実施」するように誘引した。すなわち、誰も一人では、直接侵害に必要とされるすべての段階を実施していないのである。両被告とも、一人の直接侵害者が存在しないことから、原審段階では勝訴した。
しかしながら、再審理において、連邦巡回区控訴裁判所の所属全裁判官による法廷は、BMC Resourcesにおける一人の主体がクレームの全段階を実施する必要があるという要件を明確に変更した。Akamaiにおける意見は以下のとおりである(強調は原文のまま)。
誘引侵害に必要なものとして直接侵害が存在したことの証明が必要であるということと、直接侵害者としてその単独行為者が責任を負うことの証明が必要であるということは同一ではない。当事者が、原告の特許権を侵害するために必要な行為を行うように他者を故意に誘引し、他者がそれを行った場合、どの単独行為者も直接侵害の責任を発生させるために必要なすべての行為を行わないように行為を組み立てることのみによって、誘引者が間接侵害の責任を免れる理由はない。
連邦巡回区控訴裁判所の裁判官の多数意見は、複数の他者を集合的に誘引した者や、クレームのうちいくつかの段階を実施し、残りの段階を実施するように他者を誘引した者は、「単独の直接侵害者による同一の侵害を誘引した者と全く同じ影響を特許権者に与える。」と述べた。
今後、原告は、単独の直接侵害者がいない場合でさえ、誘引を立証することが少し容易になったと考えるかもしれない。方法クレームの全段階が実施されることは依然として必要であるが、「単独の主体」がそれらを実施したことを示す必要はもはやない。そうだとしても、侵害者と主張されている者が故意に侵害を誘引したことを示す必要があることから、この決定が、現在係属している誘引侵害の事件に与える影響は小さいかもしれない。また、裁判所は、その意見を方法クレームの侵害に限定していることから、現在の特許実務に与える影響はさらに減じる可能性がある。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com