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Covid19によるロックダウンをよそに司法手続きは進み続ける
:仲裁の進展に関しての最新動向 (20/07/17)
COVID19パンデミックは私たちが知るように世界と環境を混乱させ続けている。さらにこのパンデミックは、司法と仲裁を含む裁判事務の取り扱いに非常に大きな影響を及ぼしている。しかし世界的なロックダウンと現在の情勢が我々に突きつけるかもしれない課題にも関わらず、回復力と迅速な適応能力によって司法手続きの継続が確かなものとなっている。
特に注目すべきは、国際商業会議所(「ICC」)が2020年4月9日にCOVID19パンデミックの影響を緩和するためにとられうる手段を記したガイダンスノートを発表したことだ。(COVID19パンデミックの影響を緩和することを目的として取られうる手段について記したICCのガイダンスノートは以下で参照可能。
https://iccwbo.org/content/uploads/sites/3/2020/04/guidance-note-possible-measuresmitigating-effect-covid-19-english.pdf
ガイダンスは現在進行中の訴訟を進展させるための様々な方法の示唆を提供するために、裁判所だけでなく、当事者らや弁護士にも同様向けられている。さらにそれは新たに訴訟手続きを取ろうと願う当事者らにそれができる保証をし、手続きを容易にすることをも目的ともしている。ICCは彼らが現在完全に稼働しており、彼らのガイダンスが既に進行中の手続きの進展の継続を確実にすることを目的としているということをはっきりとさせている。その具体的な言及がICCの仲裁ルールの(「ルール」)22条1項にあり、裁判所と当事者らには「仲裁を迅速で費用対効果の良い方法で」行う義務があるとされている。さらに、裁判所はルールの25条1項に準じて、彼らには当事者らに話を聞いてもらう公平な機会を与えると同時に、可能な限り短い時間の枠の中で手続きが行われることを保証するというらにさらなる義務があるということをリマインドされている。これは、前例のなく、極めて不確かな時代において、効果的でスピーディーな紛争解決の方法を提供する目的と狙いを言い換えたものである。
実用的意義:どの方法が許されているのか?
多くの当事者らは次の何か月かの間に審理を予定しているかもしれず、その彼らは今、ルールに定められていることの範囲で調整をしないといけないことになった。ガイダンスノートはヴァーチャル、もしくはリモートの要素を組み込むということが国際仲裁手続きにおいては新たな概念ではないということを思い出させるものとして機能しており、例えば、審問を行うためにすべての当該個人を物理的に一つの部屋に集めることに現実的な課題があることなどがその一例である。
ICCは常に手続きが公平で効率的な方法で行われるようにするテクニックの配備と技術の使用に関する規定を作成してきた。(当事者と仲裁裁判所へのICCの仲裁ルールの下の仲裁の遂行に関する忘備録 以下にて参照可能。
https://iccwbo.org/content/uploads/sites/3/2017/03/icc-note-to-partiesand-arbitral-tribunals-on-the-conduct-of-arbitration.pdf)
採用された手段に関しては、手続きを進めるにおいて最も適したやりかたを実現するためにケースバイケース基準で検討されるべきである。
始点は22条2項であり、それは裁判所に仲裁の手続きを効果的に行うために必要であると思われるいかなる手段の採用をも許すものである。
裁判所は24条に準じて機会があり次第ケース・マネジメント・カンファレンス(「CMC」)を招集することが要求されている。これは裁判所、当事者らとその弁護士らが会う機会を得て、手続きの実施に関しての枠組みの構築に着手する最初の会議である。CMCは今日まで様々な方法で行われてきており、必ずしも毎度対面で行われてきたわけではない。裁判所らはCMCを行うために電話会議、メールのやり取りとビデオ会議をこれまで用いてきた。これらの方法は22条2項の要件を満たし、ルールの24条の下の裁判所の義務が果たされていることが保証されている。したがって慣れ親しんだ領域でCMCを開催するための許可を得ることは、それが自宅のワークステーションからであってもそれほど困難なことではないべきであるはずなのだ。
特定の制約と可能な解決策
ルールにはいくつかの制約がある。その制約は書面上での重要な問題に関する形式的な決定を禁ずる。裁判所は当事者らが彼らにそれぞれ、訴訟を提起し、相手方当事者らの訴訟に触れる妥当な機会があることを保証することを要求されている。(25条)
2つ一緒に読まれるべきである25条2項と25条6項の下、いかにしてこれらの義務を遂行できるのかについてはいくらかの議論がある。条文らは審問がすべての当事者らが一緒に対面な状態で行われることを要求する。(もしもいずれかの当事者からの要求があった場合)
問題は裁判所の実測の証拠の検討、法的議論と専門家の意見の提示を必要とする実体の審問において生じる。しかし、ルールの24条3項は裁判所に当事者らとの相談の上、適切な手続き上の手法を用いることと/もしくは手続き上の予定表を修正する権限を与えている。以下のものを含む様々な範囲の手段がガイダンスにより提案されている(他のものとともに)
・ICCの仲裁ルールの下の当事者らと仲裁裁判所への仲裁の実施に関する注意(以下で参照可能。https://iccwbo.org/content/uploads/ sites/3/2017/03/icc-note-to-parties-and-arbitraltribunals-on-the-conduct-of-arbitration.pdf)の74から79パラグラフにあるように、特定の申し立てや弁護を、ルールの22条の法規内で迅速に処分する。これは一つ、もしくはより多くの主張や弁護へ迅速にそれらの主張や弁護に明らかに要件を欠く、もしくは仲裁裁判所の管轄外であるという根拠の下判断し、略式判決の適用ができることを示している。両当事者らが彼らの訴訟を提示し、もしも適当であれば審問でその意見を聴いてもらう機会を提供されていることからこの適用は主な問題として考えられるだろう。したがって最終的には問題となっている課題を以下のように絞り込む。
・論争中の問題をステージごとに解決する。もしもそうすることがより効率的な訴訟の解決策に結果的になるのであれば、例えばある特定の問題が最初に対処できるものであれば、すべての問題を最終審問まで残しておかずに手続きを分岐する。管轄と本案に関する論争などはステージごとに策がとられうるものの例である。
・紛争の全体や個別の課題が、予備審問なしに紙面上などに基づいて解決できるものであるのか否かを識別する。
・場合によっては彼らの専門家からの助けをかり、論争中の問題を絞り込める当事者間での合意によって解決することができることになるかもしれない問題を識別する。
・裁判所は当事者らに、論争中の問題に関する共同のリストである合意された事実の年表を作る、もしくは他の同様に共同で作成された論争中の問題の範囲を定義し、狭めることを助ける文書を作ることを要求する。
・紛争に焦点をあてる方法を当事者らと判断するために合間のCMCを計画する。
・潜在的に解決可能でありうる問題が、文書作成や開示のフェーズなし、もしくは判断するにあたって大切と考えられる文書に限り、より狭められ焦点を当てた文書の作成によって判断されていいのか否かについて考察する。
・証人と/もしくは専門家の証拠なしで、もしくは相手方当事者や裁判所からの質問状に基づいて、そして証人や専門家からの答弁書/筆答の提供に基づいて解決することができるかもしれない問題を識別する。
・専門家による実地訪問や調査がビデオプレゼンテーションや専門家による共同報告書によってとって変えられるか否かを検討する。
・当事者によって指名された専門家に対して、裁判所によって指名された専門家を採用することが適切であるか否かを検討。
・電話会議やビデオ会議をCMCと審問において可能で適切な際には使用する。
・仲裁付託書の数とサイズがいかに、そして制限されるのか否かについて検討し、
・当事者らがICC仲裁規則にオプトインすることに同意するか否かを検討。
他の仲裁機関
世界中の他の仲裁機関は同様にリモート審問に関するガイダンスを発行し、オンラインの世界での訴訟の進行をサポートすることで新たな状況に適応してきている。ロンドンの国際仲裁裁判所(LCIA)、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)、ストックホルム商工会議所の仲裁機関(SCC)とスイス商工会議所の仲裁機関は例えばすべて稼働しており、オンライン審問をサポートする様々な取り組みを行ってきている。2020年5月に投資紛争解決国際センター(ICSID)でのAlverley Investments Limited and Germen Properties Ltd v. Romania (ICSID Case No. ARB/18/30)訴訟においてクインエマニュエルは証人尋問つきの史上初めてのオンライン審問に弁護士として参加した。裁判所のメンバーと審問参加者らは皆違う場所におり、それは5つの国、7つのタイムゾーンにまたがった。困難にも関わらず、ICISD事務局は裁判所とそのほかの審問参加者らがICISDのオンラインのプラットフォーム(ICSIDはWebexをそのセキュリティ面からもっぱら使用している)に適応することへのサポートに熟達していることを示し、審問は効率的に重大な障害なしに進んだ。
どの技術が必要とされているのか?
最近の会議でICCのメンバーがZOOM、Skype for Business、Webex、BlueJeansを含む(が、それだけに限られず)とその他同様の技術が、審問に参加している個々人それぞれに十分に配備されているか否か、手続きを効率的に行うために技術が実行可能なものであるのか否かを含めて検討されるべきであると提案した。
提案の中には個々人がアクセスのできた装置を考慮をすることが含まれていた。それはある特定の技術の使用が自宅から実現可能でなかった場合に裁判所のメンバーや弁護士が仲裁審問センターのスイートを活用する可能性、装置への投資や賃借とテスティング、審問に至るまでにテスティングを行うことなどが挙げられた。
ガイダンスは審問での「対人」の意味に関していくらかの異なる意見があるかもしれないことを認めている。面と向かっての審問を要求するのか、遠隔会議やビデオ会議技術の使用がその要件を満たすのか否かのどちらにせよ、どのように解決されようと、それは仲裁裁判所の裁量のもと25条2項の解釈に最終的にはよる。
ガイダンスはさらに審判の開始の前になされておく必要がある様々な検討事項をリスト化している。審問の多くがヴァーチャル審問に限定されているのではなく、ロジスティックな段取り、テクニカル面での考慮、機密性、プライバシーとセキュリティ、エチケットと証拠の提示と事実証人と専門家の尋問を含む実際に対人で行われる必要のある審問であることを考慮するとこれらは意外なことではない。
対面での審問は一つの部屋にいるすべての該当する個々人らと手続きの秘密性を保持することにおいて常に有利に作用してきた。主なセキュリティの懸念はハッカーらが秘密であることが意図されているヴァーチャル審問にアクセスするかもしれない可能性がある際に生じる。セキュリティのレイヤーを追加したパスワード/パスコードとプラットフォーム/技術の使用(活用)など の追加のセキュリティ手法への考慮が求められている。
リモートで準備をする際の課題や変更の必要があるか?
書面での訴訟の提示、審問での口頭での訴訟の提示、いずれの目的によっても同様、チームで話し合う際、そしてさらに訴訟を提起する過程で証人と専門家らにインタビューをする際には弁護士は以上で言及したような技術の使用により依拠することが求められるようになるだろう。審問後の検討がまだ残っている裁判所のメンバーは、裁定の草案をし、他の裁判所のメンバーとリモートで相談をし続けることができるべきであり、当事者らは仲裁地や署名の場所に関する要件など適当であるかもしれないどんな特定のルールへも特別の考慮をするべきである。
通信の方法と仲裁付託書の伝達
2020年3月17日の事務局の通信後、すべての新たな仲裁の要請(関係書類を含む)は事務局で電子フォームで記入される必要があることになった。
ICCはさらに文書の電送を推奨している。例えば、付託事項書は電子上でその写しに署名することが奨励されている。
ガイダンスはさらに裁判所が通信、仲裁付託書と関連書類の電送を推奨し、現状ではハードコピーが不要であるべきであるとしていることを示唆している。事務局との通信は既に電子上でなされることが明示的に必須とされている。
次は何か?
これが最終決定ではない。終わりではなく、むしろ現在のCOVID19パンデミック以降の標準業務として遂行されるであろう、手続きの方法の適応と再開発の始まりである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
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