インタビュー:ライアン・ゴールドスティン
最近、裁判の証拠としての価値が非常に高くなっている電子メール。データの量が膨大であるため、保存、管理の手間が煩雑化しがちという問題がある。日本企業がどう対処していくべきかについて、インタビューに答えた。
訴訟弁護士は、クライアントに有利な電子メールなどを可能な限り揃える。電子メール、特に社内メールは、注意がおろそかになるためか、当事者の本音が書かれていることが多く、証拠価値が高くなる。たとえば、契約違反を争う訴訟において、契約書上のある文言の解釈が争点となった場合、被告側が保存していたメールに、「Aという表現を使うと、契約上不利になるので、Bという表現を使いましょう」、「後で相手方の追及をかわせるように、この場はあいまいなCという表現にしておきましょう」というやりとりが見つかった場合、被告側がその文章を意図で定義していたかは隠しようがない。
また、存在するメールだけではなく、あるはずだったメールがないというのも、重要な証拠になるケースがある。なぜ意図的に消去する必要があったのかという点だ。
電子メールの取り扱いで不可欠な5つのステップ
- 法務部、知財部が開示すべき証拠の範囲について、米国訴訟を熟知した弁護士に相談する。証拠について、破棄してよいものか否かの判断も明確に支持してもらえる。
- ディスカバリーの対象となる関係者が誰であるかを明確にする。全体の手間と管理を適切化することができる。
- ITグループとも直接話し合う。ディスカバリーの重要性を認識してもらう。
- ディスカバリーのの対象となる関係者を直接弁護士と合わせる。リスクマネージメントの自覚を持ってもらう。
- リーガルテクノロジーを提供するソリューションベンダーとの連携。ベンダーの技術を生かして、コストをコントロールする。
ディスカバリーによって、開示が請求された場合、日本語のメールは翻訳が必要なため、多大なコストと労力が必要になる。メールの英訳で手間取っている間に、先手を打って戦略を練ることもできる。また、デポジションは、大使館でもできる。日本企業の場合、日本のアメリカ大使館まで相手を呼び出すことになれば、相手は手続きや渡航などの煩雑さに関係者を絞り込むなど、作戦変更を余儀なくされることもある。
ディスカバリーの本質を知り、戦略的に動くことで日本企業も十分対応していけることを理解してほしい。