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クイン・エマニュエル   

実績

当事務所はこれまで多岐にわたる業界においてクライアントを代理し、成功を収めてきました。航空宇宙、航空、自動車、銀行、コンピューター、建築、エンターテイメント、メディア、医療、ホテル、保険、医療機器、不動産、レストラン、証券、半導体、ベンチャーキャピタルなどがその例です。また、当事務所は、様々な分野の訴訟を取り扱ってきました。

成功を収めている多様な訴訟分野

特許および知的財産権

特許訴訟は、当事務所で最も伸びている分野であり、幅広い技術に関する特許訴訟を手がけています。特許訴訟においては、裁判所の特許の解釈によってこそ訴訟の帰趨が決せられるという考え方に基づき、トライアルのみならずサマリージャッジメントにおいても輝かしい実績を収めてきました。当事務所が特許訴訟において代理してきたクライアントとしては、Nokia、AOL Time Warner、IBM、Johnson & Johnson、Johnson Controls、Lockheed Martin、Sony Electronics、Zurich Insurance、Seiko Epsonなどがあります。

知的財産権訴訟はこれまでも常に当事務所の業務の中心でした。当事務所の弁護士の10%以上は、電子工学、化学工学、機械工学、自動車工学、土木、分子生物学、コンピューターサイエンス、物理学、数学等の技術系の分野において修士または学士を取得しています。ホログラフのイメージ作成から遺伝子組み換え技術に至るまで様々な知的財産権に関する係争において、IBM、Avery Dennison、LifeScan、Lockheed Martin、Nike、AOL Time Warner、Nextel、Vivendi Universal Net等の企業の代理人を務めてきました。当事務所が勝訴してきたのは、技術を知っているからのみならず、陪審員や裁判官と裁判所においてどのようにコミュニケーションをとるべきかを熟知しているからです。

著作権、商標、営業秘密に関する当事務所の経験には、他に例を見ないものがあります。当事務所は、営業秘密に関する訴訟において、IBM、Lockheed Martin、Morgan Stanley、Avery Dennison、Seiko Epson、Johnson Controls、Disney、Loral、General Motors、Nextel Communications、CalComp、Bancorp Services、Hughes、Teledyneを代理してきました。また、Academy of Motion Picture Arts and Sciences のOSCAR(R)、MattelのBARBIE(R)とHOT WHEELS(R)、Lockheed MartinのSKUNK WORKS(R)、National Academy of Recording Arts & SciencesのGRAMMY(R)、ナショナルフットボールリーグ(NFL)、ESPN、メジャーリーグサッカー、ワールドレスリング連盟のHULK HOGAN(R)やその他のライセンスされている名前をはじめ、America's Cup組織委員会のAmerica's Cupのロゴ等の商標権や著作権の行使に際し、クライアントの代理人を務めたことがあります。

消費者によるクラスアクションおよび製造物責任

全ての消費財の製造者や流通業者は、クラスアクションのターゲットになり得ます。この種のケースにおいては、素早く、正しい方法で対応することにより、数百万ドルを節約することができます。

当事務所は、消費者への詐欺行為や不正競争その他の主張に基づいて提起されたクラスアクションにおいて、IBM、Washington Mutual、Northrop Grumman、Pep Boys、KB Home、Hughes等のクライアントを代理し、数多くの成功を収めてきました(カリフォルニア州の不正競争法は、おそらく米国で最も幅広い分野をカバーする不正競争法であり、消費者によるクラスアクションの原告側弁護士によく利用されます)。当事務所は、クラスアクションに対して実際にトライアルを行った数少ないカリフォルニア州の法律事務所の1つです。もっとも大抵の場合には、クラスアクションとして承認されるべきでないことを主張・立証したり、サマリージャッジメントで勝訴の判決を得ることにより、訴答手続の段階で勝訴してきました。当事務所は、その豊富な経験に基づいて、クラスアクションに対し、独自の有効な方法で対処していきます。

戦略的IP計画

場合によっては、訴訟は競争の一手段(ビジネス上の目的を達成するための戦略)になることもあります。当事務所は、御社の目的に照らし合わせてIP戦略の策定をお手伝いすることができます。御社の技術分野におけるIPの状況を調査し、IPポートフォリオを発掘・構築して、御社のIPの相対的な競争力を評価します。

独占禁止法および通商規制

価格操作を巡る訴訟と調査における被告と原告の両サイドでの豊富な経験を基に、当事務所は、大陪審や連邦取引委員会、司法省に対してクライアントの代理人を務めます。対象となる業界は、医療、エネルギー、家電、航空宇宙、食品、鉱業、化学など多岐にわたり、独占禁止法および通商規制関連の訴訟について、当事務所は州裁判所と連邦裁判所の両方において豊富な経験を有しています。

証券訴訟

当事務所は、企業の存続を脅かすようなクラスアクションや株主代表訴訟から、不満を持つ投資家が起こした嫌がらせの訴訟に至るまで、あらゆる種類の証券訴訟の経験があります。

当事務所は、これまでに社内取締役、社外取締役、取締役の特別委員会、会計事務所、投資銀行や証券引受業者、そしてもちろん企業自体(Northrop Grumman、Mattel、American Express、Option One、Hughes、Sumitomo Trust 等)の代理人を務めてきました。
また、証券取引委員会や司法省の捜査の際において、企業の代理人を務めたこともあります。当事務所のパートナーの多くは、買収を計画している会社または、買収の対象会社の代理人として、株式公開買い付けを巡る訴訟について豊富な経験を持っています。
さらに当事務所の弁護士は、米国や海外における刑事および民事規制に関する内部調査についても、幅広く深い経験を有しており、証券、防衛、銀行、保険、エンターテイメント、医薬品、技術等の分野においてこのような調査を受けた個人、著名な企業や特別委員会、取締役会から依頼を受けて、非常に繊細かつ最先端の問題に対処しています。

国際仲裁

米国には、国際仲裁に関して豊富な経験を持つ法律事務所はほとんどありません。当事務所の弁護士は、ロンドン国際仲裁裁判所や国際商工会議所、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、リマの米国仲裁協会において、イギリス、ドイツ、ギリシャ、ペルー、スウェーデン、ベネズエラなどの企業の仲裁を行ったことがあります。当事務所は毎年のように、世界中の弁護士や仲裁人が参加する国際仲裁会議を主催しています。当事務所の弁護士は、国際仲裁法および米国の仲裁法に精通しており、草案作成の手助けをしたこともあります。

当事務所の仲裁の成功例としては、スウェーデンでの仲裁においてAeroflotを相手取り1500万ドルを回収した事案、ロンドン国際仲裁裁判所での仲裁においてHughes Elec-tronicsを代理して2500万ドルを回収した事案、ロンドン国際仲裁裁判所においてSpace Imagingを代理してギリシャの事業体を相手に1500万ドルを回収し、これに対する相手方の主張がすべて棄却された事案、ロンドンで行われた企業価値評価を巡るケースで5000万ドルの支払い命令が下された事案、5000万ドルの支払を請求されていた仲裁において棄却判決が下されCentre Reinsuranceが勝訴した事案、台湾の大手コンピューターメーカーがIBMに対して求めた4000万ドルの支払請求が棄却された事案などがあります。また当事務所は、ICCやAAA、及びその他の仲裁手続において多くの日本企業を代理してきました。

2006年に勝訴した多分野の企業訴訟例

当事務所は裁判所も陪審も熟知しており、あらゆる分野の企業訴訟において勝訴してきました。2006年だけを例にとってみても以下の通りです。

  • ITCに提起された中でも最大の特許侵害訴訟の一つにおいて、Seiko Epsonを代理して勝訴。
  • 契約違反等に基づき Bertelsmann AG およびその元CEOを訴えたケースにおいて、3ヶ月の陪審審理を経て3億ドルの評決を勝ち取る。
  • 原告が営業秘密の不正使用に基づき2000万ドル以上の賠償を求めていたケースで、被告のIBMを代理し、被告勝訴。
  • セイントルイスにおける営業秘密の不正使用のケースで、Bancorp Servicesを代理し、1億1830万ドルの支払いを命じる評決が下され勝訴。
  • プリペイドのワイヤレス電話システムに関する特許侵害訴訟において、Freedom Wire-lessを代理し、1億2800万ドルの支払いを命じる評決が下され勝訴。
  • 保険の適用を巡る訴訟において、Occidental Petroleumに対する責任が陪審の評決によって認められた後に、9桁の金額での和解成立。
  • カリフォルニアのガソリンスタンドのディーラーによって提起された価格操作に関するケースにおいて、Shell Oilを代理し勝訴。
  • 国際産業スパイに関するケースにおいて、Avery Dennisonの代理人として8000万ドル勝ち取る。
※この中には仲裁において勝訴したものは含んでおりません。

長期間のトライアルを回避し勝訴した事例

以下のケースは、長期間のトライアルを回避し、勝利した最近のケースの一例です。

  • 欠陥商品を理由にIBMが数百万ドルを請求されていたクラスアクションにおいて、棄却判決が下され勝訴。
  • Unovaを代理して、2件の特許権につき文言侵害であるとの判決を得た後に2500万ドル以上の和解金で和解。
  • 4000万ドルが請求されていた特許侵害訴訟において、Nikeを代理して非侵害のサマリージャッジメントを獲得。
  • 受託者としての義務に違反したとして米国の主要銀行を訴えた国際銀行10行のうちの一つである Sumitomo Trust & Banking Co.を代理し、勝訴のサマリージャッジメントを獲得した後に2億ドルの和解金を勝ち取る。
  • NBAの試合の放映に関し、DIRECTVに対して提起された独占禁止法の訴訟において棄却判決が下され勝訴。
  • ヨーロッパ史上最大の倒産から生じた100億ドルが請求された3件の訴訟において、Extraordinary Commissioner of Parmalat S.p.A.を代理し、1億5000万ドルの和解金を勝ち取る。
  • テキサス州の米国企業が起こした特許侵害訴訟において、日本の技術系企業を代理し、勝訴のサマリージャッジメントを獲得。
  • 証券訴訟において、改正破産法第11章に基づく債務者である Superior National In-surance Groupを代理し、1億5000万ドルを超える金額で和解を成立させる。
  • HughesとEchostar の合併中止の件より生じた6億ドルの支払いを請求された株主訴訟において、Hughesを代理し、棄却判決が下され勝訴。
  • Volkswagenに対する営業秘密のケースで、General Motorsを代理し、11億ドルの和解金を獲得。
  • 人工衛星の欠陥に関して、合計1億3700万ドルが請求されたケースで、 Northrop Grumman を代理し、棄却判決を獲得。
  • ING Bankを代理し、四大監査法人のひとつとの間で3500万ドルの支払いを受ける和解を成立させる。
  • 800万ドルの支払を請求された特許侵害訴訟において、Pennzoil-Quaker StateとMedo Industries を代理し、非侵害のサマリージャッジメントを獲得。
  • 高利貸しおよび不公正取引方法に関するクラスアクションにおいて、3000近いレストランとその経営者からなる原告らを代理し、6400万ドルの支払いを受ける和解を成立させる。
  • 知的財産権に関する画期的な2件のケースにおいて、AOL Time Warnerを代理し、サマリージャッジメントが下され勝訴。
  • Northrop Grumman を代理し、8件のクラスアクションにおいて棄却判決を獲得。
  • 4000万ドルの支払いが請求された保証不履行に基づく裁判において、IBMを代理し、棄却判決を獲得。
  • Time Warnerを代理し、特許侵害訴訟においてサマリージャッジメントで勝訴した後に、75万ドルの弁護士費用の支払いを命じる判決を獲得。
  • 人工衛星のプログラミングを巡るケースにおいて、5億ドルおよび1億6900万ドルの支払いを命じるサマリージャッジメントが下され勝訴。

ニュースレター《事例報告》

Vol.5 2008年5月

特許法改正を巡る攻防: 

既存の特許制度を抜本的に改正する特許法改正案が現在国会で審議されています。今回の改正作業は、特許制度全体に亘る1952年以来の大きな改正となります。この間、連邦巡回控訴裁判所の創設のように特筆すべき変更はありましたが、特許法の主要部分については半世紀もの間、実質的な改正はなされていません。現代技術の諸問題に利害を有する企業や団体は、知的財産が益々重要な意義を有するようになってきている経済上の問題点について注目しています。
現在の法案が国会で可決された場合の変更点としては以下の事項が挙げられます。

1. どの出願人が最初に発明したかに拘らず、最初に発明を出願した者が特許を得るという「先願主義」に移行します。この制度によって、米国の制度は事実上、世界中の他の全ての特許制度と調和することになり、またインターフェアランス手続の複雑さが緩和されることになります。

2. 現在の再審査制度に代わり特許付与後異議申立制度が創設されます。特許権者は、特許権の有効性が、特許の存続期間中いつまでも確定しないことは、特許の経済的価値を損なうとして、特許付与後の審査を一つの時期に固定することを求めています。これに対し審査の時期を無制限とすることを提案している者は、その無効の証明にどれだけ時間がかかろうとも、そもそも無効の特許は経済的価値を付与するに値しないと主張しています。

3 大半の特許侵害訴訟の裁判籍が、被告の実際の所在地に限定されます。改正案の提案者は、テキサス州東地区が特許権保有者に好意的な場所であるが故に、法廷地漁りの激増が同地区への特許侵害訴訟の集中を招いていることを非難し、さらに歴史的に見ても、裁判籍は28 U.S.C.§1400の下で実際に所在してきた場所に限定されてきたことを指摘しています。改正案の反対者はこれに対し、テキサス州東地区は、特許法に特化した専門家による、使い勝手の良い法廷地を提供しているのであり、被告の居住地に裁判籍を限定することは、小規模な提訴人につき経済的負担を強いることになると反論しています。

4 クレーム解釈についての連邦巡回控訴裁判所への中間上訴が認められるようになり、連邦巡回控訴裁判所はこれを裁量により拒否することができなくなります。改正案の提案者は、このような中間上訴により、多額の費用がかかるトライアルが、誤ったクレーム解釈に基づいて行われることを阻止できると主張しています。連邦巡回控訴裁判所は、当然のことながら、おびただしい数のクレーム解釈に関する上訴が起こされることを憂慮しており、この改正につき強く反対しています。

5 米国特許庁の監督力が強化されます。特に出願人は、その発明を説明することや、先行実施例の調査を行うことを義務付けられるようになります。改正案の提案者は、出願人は実体の無いような特許を取得するためにしばしば審査官が多忙であることを利用していると主張しています。これに対し反対者は、先行実施例を調査するのは特許庁の義務であって、これを出願人に行わせると出願費用の高騰と不衡平行為(inequitable conduct)についての訴訟の増加を招くだけであると主張しています。

6 最も議論を呼んでいる改正点は、今回の改正案が、特許訴訟における損害は当該特許の「先行実施例に対する具体的な寄与」の価値に基づいて算出されなくてはならないとしている点です。改正案の提案者は、特許の価値は当該発明の人類の知見に対する寄与に限定されるべきであり、特許の損害は、侵害品に既に含まれている先行実施例の価値にまで及ぶものではないと主張しています。これに対し反対者は、「発明」は、その価値を適切に定量化するには空虚過ぎるものであり、上記改正は訴訟費用の高騰を招くのみであるとし、いずれにしても特許権者は、発明意欲を刺激し、発明の経済的価値を限定するのではなく、むしろ侵害者を罰するための、単なる補償を越えたボーナスを求めていると反論しています。

                 * * *

本改正案につき猛烈な陳情活動を行っている利害団体は、広く二つの陣営に分けることができます。改正案の支持者は「技術(Tech)」という範疇でまとめることができ、そこには電子機器やソフトウェアの会社、ジェネリック医薬品会社、金融サービスの会社、そして消費者擁護団体が含まれます。予想どおり、このうちの多くは、ソフトウェアやビジネス方法特許の拡大により最近特許制度に組み込まれた経済分野から来ており、しばしば特許訴訟において被告側にされてしまうことが多い者です。改正案に対する主要な反対者については、よく「医薬(Pharma)」という範疇でまとめられることがあります。この中には、製薬会社やバイオテクノロジー関連会社、特許のホールディングカンパニー、大学、製造業者、及び特許出願を行っている代理人が含まれており、これらの全ては、特許権の執行に経済的利害関係を有しています。

各陣営内における利害関係は必ずしも統一されていません。例えば、製薬会社は、特許のホールディングカンパニーが反対している先願主義への移行については比較的無関心です。そして大学は、明らかに特許のホールディングカンパニーによる法廷地漁りをターゲットとしている裁判籍に関する条項から適用を除外されています。にもかかわらず、侵害者に対する特許権者の力の強化という広い問題点については、両陣営の利害や動機は自明です。これが、特許権者は法廷地を選ぶことができるようにすべきかどうか、特許権者を特許権付与後において有効性への攻撃に晒すべきかどうか、そして陪審員による損害の算定に厳格な制限を課すべきかどうか、という各問題点についてのそれぞれの陣営の立場に現れています。

政府は改正案の中に盛り込まれている改正点については、訴訟における損害額の算定の点を除きその大半を支持しています。しかし、政府は断固として損害額の算定の点については反対しており、この点のために改正案全体に対して反対である旨表明しています。しかしながら同時に、議会を通過した改正案に対して本当に拒否権まで発動する用意があるのかどうかについては依然として定かではありません。また、本改正案が、ブッシュ大統領の任期の最後の年における重要な立法案件であり、今後も経済に影響を及ぼしていくものであることを考慮すると、ブッシュ大統領はこの改正作業を後任に残していきたくないと考えているかもしれません。

今回の議会の開催中に最終的に本改正案が可決される見通しについて予測することは困難です。下院は既に法案(H.R. 1908, by 220-175)を可決しており、上院では委員会から既に報告がなされています。しかしながら、本会議での投票がいつ行われるかは決まっていません。また、損害の算定に関する改正点に対する大きな反対があることからすれば、上院で可決されるのに必要な票が集まるのかどうかは全く不明な状況です。

もっともこの改正案がすぐさま立ち消えになるということは考え難いでしょう。最終的に1952年特許法となった法案の最初のドラフトが下院司法委員会において用意されたのが1950年の1月のことだったことからすれば、立法の遅れは当初から予想されるべきことです。
知的財産の重要性が増し、特許訴訟が増加していることからすれば、特許法改正の問題は、たとえ特許改正法が今年可決されなかったとしても、今後も議会の注目を集めていくものと思われます。

Vol.4 2008年4月

ITCにおける特許侵害訴訟で再び勝訴: 

米国国際貿易委員会(ITC)は、ITC史上最大の特許侵害案件において、当事務所のクライアントである、日本のプリンター及びインクカートリッジの製造会社及びその米国子会社に対し、勝訴の最終決定を下しました。この案件では、25の被請求人及び1000種類を超える侵害品たるインクカートリッジにつき、11の特許に含まれる31個のクレームに基づいて侵害の主張を行っていました。本レポート(英語版)の2007年5月版でもご報告致しましたが、7日間のトライアル後に出された397ページにも及ぶ仮決定において、ITCの行政判事は、当事務所のクライアントに対して有利な判決を下し、主張した31個の特許クレームは全て有効でかつ侵害されていると判示しました。更に行政判事は、侵害品の米国への輸入を禁止する総括的排除命令及び侵害品たるカートリッジの販売を禁止する停止命令を勧告しました。

ITCは、上記の仮決定を再度検討した後、全員一致でこの仮決定を支持する旨の最終決定を下し、31個のクレーム全てが有効であり、1個又はそれ以上の侵害品たるカートリッジによって侵害されている旨を再度認定しました。ITCは、総括的排除命令、制限的排除命令、及び特定の停止命令を下しました。総括的排除命令の下においては、製品の出所がこのITCの手続の当事者であるか否かに関わらず、特許を侵害している全ての製品の米国への輸入が禁止されます。

またITCは、大統領が決定を審査している期間中に(大統領は行政機関の執行部門として、ITCが下した決定を審査します。)侵害品たるインクカートリッジを米国に輸入しようとする輸入業者に対して、各インクカートリッジにつき$13.60の保証金を預託させることを命じました。その後、大統領の審査期間は、ITCの決定が非承認とされることなく終了しました。これによりITCの決定は完全に効力を発することとなり、侵害品たるインクカートリッジの輸入は一切認められなくなりました。

ITCとは、不公正な輸入貿易につき関税法第337条(19 U.S.C.§337)に基づき調査を行う行政機関の執行部門です。第337条に基づく殆どの調査は、特許または商標権侵害に関するものですが、その他にも企業秘密の不正利用、詐称通用、虚偽の広告、及び独占禁止法違反といったことも含まれます。これらの全ては第337条により、不正競争とされるものです。法律により、ITCは第337条の調査を「実施可能な範囲でできるだけ早く」終了させる必要があります。大半の調査は、請求がなされてから1ヶ月以内に調査が開始され、調査開始後12ヶ月から15ヶ月の間に終了します。
 
請求人は、ITCの手続に拠らなければ、多数の年月をかけて地方裁判所で訴訟をしなければならず、しかも時にはその判決の執行は困難なことすらあるのですから、ITCによる強力な総括的排除命令と迅速な処理は彼らにとって大変魅力的な制度です。また、地方裁判所で勝訴した原告は、侵害品の動向につき、米国の製品市場を常に監視しておく必要がありますが、ITCで勝訴した請求人は、米国の税関の監視により侵害品が米国に輸入されてくることを阻止できるのです。

Vol.3 2008年3月

プロ・パテントの都テキサス州東地区裁判所における訴訟戦略:

ヘンリー幸田

1 イントロダクション

マーシャル市を中心とするテキサス州東地区における特許訴訟が今、知財実務家達の熱い注目を集めている。最近数ヶ月を振り返るだけでも、大型の特許訴訟が多数提訴されている。代表的な事件を挙げれば、次のとおりである。

  • ノースイースタン大学対グーグル(データ探索方法)
  • オプティ対AMD(キャッシュ処理方法)
  • シスコ・システム対ホアウェイ(ソフトウエア)
  • モザイド対ハイニックス(DRAM)
  • パラレル・プロセッシング対ソニー(プレステ3)
  • シャープ対サムスン(LCD)

一見して明らかなことは、先端技術を主題とする特許侵害訴訟が多く、当事者は、米国企業に限らず、日本・中国・韓国・カナダ等幅広く、国際的な大型紛争が中心である。

数年前まで年間における特許訴訟件数が20件程度の目立たない地区であったのが、本年は300件を越える勢いである。訴訟件数が激増した理由は明白である。80%に及ぶ原告勝訴率、そしてこれまで特許権を無効とした例がない等、プロパテント政策を具現化した代表的管轄としての認識が急速に広まった点に集約されるであろう。

米国の偉大な田舎と呼ばれるテキサス州に、何ゆえ過激とも思われるプロパテント政策が根付いたのであろうか?

テキサス州は、アラスカに次いで広大な面積を有する米国第28番目の州である。ここは、かつてムエバ・エスパーニャ(New Spain)と呼ばれた地区である。メキシコがスペインから独立した1821年後は、メキシコ領テキサスとして、開発が進められた。

その後、入植したアメリカ系入植者たちによる反乱を機に、1836年テキサス共和国が宣言された。だが反乱軍が守る要塞は、圧倒的なメキシコ軍の前に全滅した。アラモの砦である。砦は全滅したが、アメリカ系反乱軍による運動は、「リメンバー・アラモ」を合言葉にさらに拡大していった。こうして1845年、テキサスは第28番目の州としてアメリカ合衆国に併合された。

さらに1861年に勃発した南北戦争においては、アメリカ南部連合の雄として独自の立場と主張を貫き通した。そして土地に密着した集団としての長く激しい体験は、テキサス住民(彼らは、自らをテキサス人と呼ぶ)の間に強い信念を植えつけたようである。近年の権利者に極端に有利とも思われる判決傾向を分析すれば、テキサス人の間に定着した独特の伝統的価値基準が訴訟実務において顕在化したものと思われる。

本稿はテキサス州、特にマーシャル市を中心とする東地区における訴訟実務の特質を分析し、日本企業の立場から見た効果的対応方法を、実体験を基に論ずることを目的とする。

2 テキサス州東地区マーシャル市について

テキサス州には、ヒューストンそしてダラスと二つの大都会が並立する。東部を支配するダラスからさらに東に向かって250キロ、マーシャル市は、ルイジアナ州との州境に近い人口約2万5千人の小さな町である。むしろ村と呼ぶ方がふさわしいとも思われる。

町の中心には、ダウンタウンと呼ぶのをためらうほどに小さな商店が散在する。その一角に、目立たないレンガ造りのビルがある。この小さな町の小さな建物が今、米国知的財産権の世界の注目を集めている。テキサス州東地区連邦地方裁判所、マーシャル分署である。

マーシャル市は、アメリカ南部によく見られる平凡な農村の一つで、目立つ特徴は何もない。ところが最近、特許侵害訴訟が激増し、米国知財活動の重要拠点になりつつある。一体、何が起きたのだろうか?

テキサス州東部地区は、18世紀から続く綿の名産地。住民の大半は、果てしなく続く綿畑で農作業に従事した。白人とメキシコ系が混在する構成は、代々変わることなく、土地との繋がりは強固であった。

時は流れて19世紀後半、南北戦争が勃発した。住民たちは何の疑問もなく、南部連合軍組織に従った。激しい戦闘の末、南軍は破れた。敗戦の傷跡は徐々に回復し、近代化の波が押し寄せ始めた19世紀の末、マーシャル市にも鉄道網が延びてきた。

広陵たる綿畑の中で鉄道工事が始まったとき、それまでには見られなかった人々が移り住んできた。仕事を求める弁護士たちである。鉄道工事には、人身事故と労働争議が付き物、事故に関する係争を専門とする弁護士にとっては、新たな市場である。こうして、小さな町の割には、弁護士の数が多い社会構造が始まった。

20世紀に入り、綿産業が低迷期を迎えるとともに、陶器の技術が普及した。豊かな農地は、焼き物用の土に適していたのであろう。この頃まで、マーシャルは、比較的のどかで静かな南部の田舎町であった。人々は、飽きることなく南北戦争を懐かしみ、祖父・曽祖父等が巻き込まれた数々の戦闘の跡を語り継いだ。現在でも、土地の人々が集まる折には、南北戦争における様々なエピソードが熱い話題となる。このような生活習慣が長期化するにつれ、保守的体質が人々の心の中に浸み込んでいったのは、不思議なことではあるまい。

1980年代後半、マーシャル市に小さな異変が訪れた。テキサス州ダラス市に拠点を置くテキサス・インストルメンツ社(TI)による特許侵害訴訟の提起である。TIは、いわゆるキルビー特許を中核とする半導体技術を囲い込んだ強力なパテント・ポートフォリオを武器に、複数の企業に対し特許戦争を挑んだ。

サムスン、ヒュンダイ、ソニー・・・TIによる特許戦略は、マーシャル地区連邦裁判所を巻き込み、スケールの大きな法廷闘争に発展した。マーシャル地区の住人は、突然嵐のごとく舞い起きた知的財産権をめぐる争いに、陪審員としていやおうなく関わりを持ち始めることとなった。

地域全般が極端な保守傾向に置かれた住民にとって、連邦政府(特許商標庁)によって正規に認められた特許権を侵すことは、許しがたい不徳な行為である。住民たちは、特許論争に対し、思うが侭に対応した。その結果、原告(特許権者)の勝訴率は、80%を超える驚異的な高率となった。特に、権利の有効性に関しては、昨年まで特許権無効の判決を得て勝訴を収めた被告は皆無である。

マーシャル地区連邦裁判所による極端とも思われるプロパテント傾向は急速に評判となり、侵害行為に悩む特許権者たちが殺到した。マーシャル地区を中心とするテキサス州東地区における提訴件数は、1990年代、年間30件足らずであったが、昨年の統計では234件に達する。この提訴件数は、カリフォルニア州中部地区(ロサンゼルス)に次ぎ、全米第2位である。人口規模と経済規模を考慮すれば、地方の小都市におけるこの提訴件数は異様である。本年は、恐らく300件を超えるものと推定される。加えて前述のごとく、特許権者の勝訴率は80%を超える。

こうしてマーシャルを中心とするテキサス州東地区連邦裁判所は、特許権者の天国、あるいはプロパテントの都と呼ばれるに至った。この地区の裁判所は、マーシャルに加えて、タイラー、シャーマン、テクサルカーナ、ラフキン、及びボーモントの各市に分署を置く。

それでは、マーシャル地区連邦地方裁判所の特質をさらに具体的に分析してみよう。

3 マーシャル地区連邦地方裁判所の特質

マーシャル地区の裁判所による実務を考察するとき、特に興味を引くポイントが三つある。

第一に、テキサス東部における住民の根強い保守傾向である。代々土地と強固に結びついた農民にとって、土地所有権を保証する連邦政府は、絶対的な信頼感に支えられた存在である。その連邦政府(特許商標庁)が慎重な審理を経て発行した特許権は、不動産のごとき財産権と同様、敬意に価する。

陪審を構成するテキサス東部住民にとって、特許権に対し権利無効の挑戦を企てる被告(非権利者)の態度は、神聖なる権利に対する非礼な暴挙として映るのではあるまいか?だから、権利無効で勝訴を得た被告は昨年まで存在しない。

非侵害の抗弁についても、事情は基本的に変わらない。特許発明との相違を強調し、非侵害の理論によって被告を擁護する弁護士の弁論は、テキサス東部の住民にとって、狡猾な言い逃れとして響くのであろう。
その結果が異様とも思われる原告勝訴率となったものと推察される。

第二に、判事による徹底的なルール遵守の実務を挙げるべきであろう。連邦地方裁判所には、その地特有のローカル・ルールの適用権限が許される。マーシャル地区裁判所における特質は、極端とも思われるルール遵守方針である。誤解を避けるために言明すれば、厳格なのはルールの文言というより、ルールを適用する上での実務にある。

特に期日、そして書面の分量、質問項目の数・・・ルール違反に対し宥恕の余地は皆無に近い。この極端な方針は、実務的に見るとき、被告にとって特に過酷な負担を強いることになる。何故ならば、原告側は提訴前からの準備が可能である。これに対し、被告側は通常、提訴された後に具体的に訴訟対策を開始する。この差は意外に大きい。特に期日の遵守に厳しいため、手続の進行は、他の裁判所地区と比較して遥かに早い。このため、準備が遅れがちな被告側の負担は、特に厳しくなる。

極端とも思われるルール遵守の体制は、どのように築かれたのだろうか?鍵を握ると見られるのは、マーシャル地区裁判所の代表を務めるジョン・ウォード判事(T.John Ward)である。今年64才を迎えるウォード判事は、地元でビジネス・ローヤーとしての経歴を重ねた上、クリントン大統領の指名により、1999年9月判事に就任した。

着任以来、裁判手続の開始に先立って、原告・被告側の弁護士に対し、ルールの遵守に関する誓約を求める。誓約に例外は許されない。制限を超えた文書量、そして証人に対する誘導尋問は、厳しい制裁の対象となる。中でも期限の遵守は絶対的である。その結果、マーシャル地区における地裁審理は、1年未満で決着を見るいわゆる「ロケット・ドケット」として注目を集め始めた。

ウォード判事によるルール遵守を核とする訴訟モデルは、テキサス東部の他地区においても、急速に浸透した。結果的に、原告有利の実務が地域社会に形成されるところとなった。

第三に、急増する特許訴訟による経済効果を無視することはできない。傑出した経済活動に欠ける地方の小都市にとって、大型の訴訟事件は、さまざま側面での経済効果を派生した。数多くの法律事務所が開設され、長期滞在する訴訟関係者が訪れ、それらにかかわるホテル・レストラン・不動産業等の地元産業は、急速に潤い始めた。

4 日本企業としての戦略

(a) 非権利者として

テキサス州東地区における特許侵害訴訟において被告とされた場合、次の点を明確に認識すべきであろう。

第一に、特許権無効を中心とする抗弁は、極めて困難である。その理由は、テキサス人のメンタリティーに従えば、連邦政府としての特許商標庁の認可した特許権に対しては、敬意を払うのが当然の理であり、これに戦いを挑むことには理屈以前の生理的な反感を覚えるようである。
だが無効化の道がないわけではない。まず(1)議論の余地がないほどに近接した公知資料(単一の先行米国特許が好ましい)を入手した場合、そして(2)権利者の特許権取得手続において、特許商標庁を欺く不正行為(フロード)が判明した場合である。つまりテキサス人の正義感に訴える戦略が好ましいと思われる。

第二に、被告が勝訴を得た判決における理由は、基本的に非侵害による抗弁である。ここでポイントとなるのは、クレームの範囲を認定するための、いわゆるマークマン・ヒアリングにおける戦略である。
マークマン・ヒアリングは、地元テキサス人による陪審が関与する以前の手続ではあるが、裁判官自身テキサス人であることを忘れてはならない。つまり、他の地区における基準に基づく実務は、通用しないことを認識すべきであろう。このため自己に有利なクレーム定義に導くためには、工夫を要する。一例を挙げれば、すべての事項に関し有利な定義を求めず、重要な事項に絞り、非重要事項については、ある程度譲歩することにより目的を達成することが可能となる。

第三に、サマリー・ジャッジメント(略式判決)の積極的活用である。先の公知資料又はマークマン・ヒアリングにおいて有利な材料が入手された場合には、陪審によるトライアルを待つより、サマリー・ジャッジメントを活用することにより、審理を短縮し、費用を節減し、さらに予測不能に近いテキサス人による陪審を回避することも可能となる。

(b) 権利者として

近年の傾向としては、日本企業が原告として特許訴訟にかかわることも珍しくない。特に、中国・韓国・台湾企業との関係においては、権利者として侵害品対策のため、特許訴訟に関与する例が急増中である。
当然ながら、極端なプロパテント政策を取るテキサス東地区への提訴は、権利者企業にとって、魅力のある管轄であろう。ここで留意すべきは次の点である。

第一に、前述のごとく、権利者が敗訴した場合の基本的理由は、非侵害に基づく被告企業の抗弁が容認されたときである。総体的に見れば、被告の抗弁が容認される背景には、権利者による特許権取得における不正行為(フロード)ないしそれに近い行為が認定された場合が多く見られる。それを回避するためには、提訴前の準備作業として、ファイル・ヒストリーの詳細な検討が重要なポイントなるように思われる。仮に疑義ある場合は、再発行(Reissue)あるいは再審査(Re-examination)により、可能な限り自ら欠陥を修正しておくことが薦められる。

第二に、権利者が有利となる一つの要素は、審理が迅速であり、かつ手続の延期が認められない点にある。権利者としては、提訴前の準備を整えておくことにより、この利点を強化することができる。このため、先のファイル・ヒストリーを含め、マークマン・ヒアリング、証人の準備、モック・トライアル(模擬トライアル)等、可能な限り、事前準備を進めておくべきであろう。

第三に、上記のいずれの点に関しても、東地区特有の判断基準が存在する。極論すれば、各担当判事により差異が見られる。このため、これらの事情に精通した地元弁護士を訴訟チームに含めることが鍵とある。
最後に、マーシャルを中心とするテキサス東部地区裁判所による実務の将来を予測してみよう。

5 マーシャル地区連邦裁判所の将来

特許権者たちにとって天国とも思われるマーシャル地区裁判所による実務は、非権利者たちにとっては地獄であろう。このため、この実務をめぐり、二つの相反する顕著な現象が浮かび上がってきた。

第一に、急激な訴訟件数の上昇である。2006年における総件数は、234件に達し、本年は300件を越える勢いである。その結果、すでにロケット・ドケットの評価は過去のものとなり、審理期間は約24ヶ月を越える状況であり、他地区と比較して、格別早期審理と呼ぶのは困難になりつつある。

またこの地区の裁判官は、事件数が過重になっても、他地区に事件を移送することをためらう。従って、審理期間は、今後さらに長期化するものと予測される。その時、ルール遵守の方針は、早晩限界が訪れるもと思われる。
その結果、極端な被告不利の実務は、ある程度解消されることになるであろう。

第二に、極端なプロパテント政策に対する批判は、テキサス東部地区裁判所に限らず、全米的に浸透中である。この動きは、マーシャル地区を初めとするテキサス東部地区裁判所による偏った判決傾向に対する修正機能を果たすことになるものと予測される。
具体的には、連邦高裁(CAFC)による判決の破棄・差し戻しである。現に、相当数の控訴事件が、CAFCによる審理継続中であり、結果的にテキサス東部地区裁判所による多くの判決が覆され、あるいは修正されるものと予測される。

上記の考察をまとめれば、次のようになる。
注目を集めたテキサス東部地区裁判所によるプロパテント傾向は、案件の急増による審理期間の長期化、及びCAFCによる修正機能により、実質的な方向転換を迫られるであろう。しかしながら、それでもマーシャル地区裁判所を中心とする基本的なプロパテント傾向は、地元住民、担当判事たちの保守性と地元産業に対する経済効果に支えられ、息長く根付くものと予測される。(完)

(注) 本稿は、月刊ローヤーズ誌(ILS出版)2007年12号に掲載された論文に修正を加えたものである。

Vol.2 2008年2月

KSR事件判決の下における特許権侵害訴訟のサマリー・ジャッジメントでの勝訴例:

Teleflex Inc. v. KSR Int'l Co., 127 S. Ct. 1727 (2007)

近日、当事務所は、クライアントであるRealNetworksを代理した特許権侵害訴訟において、サンフランシスコ連邦裁判所のウィリアム・シュワザー(Judge William W. Schwarzer)判事が下したサマリー・ジャッジメントにより勝訴を得ました。本件では、原告であるFriskit, Inc.が、インターネット上のストリーミング・メディアに関する4つの特許権侵害を主張し、7千万ドルを超える損害賠償を求めておりました。
 
本件がトライアルに入る直前に、Teleflex Inc. v. KSR Int'l Co.事件, 127 S. Ct. 1727 (2007) (以下「KSR事件」) についての連邦最高裁判決が下されております。KSR事件において連邦最高裁判所は、特許案件における自明性の適正な判断基準について判示しました。連邦最高裁判所は、従前の最高裁判例が示してきた「拡張的で柔軟なアプローチ」を支持し、自明性に関する既存のテストの「厳格な」適用を否定しました。
 
RealNetworksは、Friskitが主張しているクレームは、ReaNetworksのインターネット製品を含む先行技術に見られる各要素の自明な組み合わせに他ならないこと証明するためにKSR事件判決の法理に依拠して主張を展開しました。
 
この判決において、シュワザー判事は「インターネット上でユーザーがストリーミング・メディアを容易に検索し視聴することを可能にするというFriskitの特許の個々の特徴は、全て先行技術に含まれていたものに過ぎない」というRealNetworksの主張を支持しました。RealNetworksによって提出された先行技術を検討した後、シュワザー判事は「これらの様々な要素を統合するというアイディアは新規なものではない」と結論しました。
 
この判決は、非自明性に基づいて特許権が無効とされた極めて稀な例です。実際、当事務所の勝利は2007年7月31日(火)付けのWall Street Journal誌において取り上げられ、同誌はこの類稀な勝利を「裁判官がKSR事件判決に基づいて自らの立場を変更し、被告側の主張を認めて訴えを破棄した最初の事件である」と記しています。
 
更に、RealNetworksは、プレスリリースの中で「この判決はRealNetworksのみならず、専ら無効な特許の権利行使によって利益を得ようとする者から特許権侵害で訴えられている全ての企業にとって大きな意義のある勝利である」と述べています。
 
本件における勝利は、過去18ヶ月の間で当事務所が特許案件につきRealNetworksを代理して勝ち取った2度目の勝利になります。2006年には、Ethos Technologies Inc.がRealNetworksに対し、インターネットからのダウンロードに関する2件の特許権に基づいて訴えを提起した事案において、被告勝訴の陪審評決が下されています。連邦控訴裁判所は、口頭弁論後24時間以内に同評決を承認しました。
 

Vol.1 2008年1月

ITCにおける主要な勝訴案件:

クイン・エマニュエルは最近、国際貿易委員会(ITC)において被請求人を代理し、大きな勝利を収めました。2006年の半ば頃、QualcommはITCに対し、Nokiaの携帯電話がQualcommの6件の特許権を侵害していないか調査するよう求めました。仮にQualcommが勝訴していれば、ITCは、対象たる全ての電話機の米国への輸入を差止める決定を下すことができましたが、Qualcommの主張は認められませんでした。反対にクイン・エマニュエルは、Nokiaのいかなる製品も侵害していないこと、及びQualcommの主要な特許は自明性に関する「明白かつ確信を抱くに足る証拠」に基づいて無効とされるべきであることにつき、行政判事を納得させたのです。
 
当初、QualcommはNokiaに対して6件の特許を主張していました。当事務所は直ちに調査し、Qualcommが、これら6件のうちの2件の特許については、権利行使する合理的根拠を有していないことを証明する証拠を入手しました。Qualcommはこの証拠の提出によって、これらの2件の特許については主張を取り下げざるを得なくなり、Qualcommにとっては早い段階でつまづく結果となりました。そしてクイン・エマニュエルからの継続的なプレッシャーにより、Qualcommはその数ヶ月後に3件目の特許も取り下げたため、残りは3件となりました。これらの残りの特許は、携帯機器の出力制御に関する発明でした。携帯電話やその他の携帯機器は、バッテリーを節約したり、様々な基地局において受信される信号を標準化するために、頻繁に信号の送信出力を変えています。Qualcommは、同社の特許が、Nokiaの携帯電話において採用されている出力制御技術を含むものであると主張したのです。
 
審理に向けて手続が進むにつれて、Qualcommは勝訴するものと考えていました。何故なら、Qualcommが権利主張していた特許は、本件以前のNokia以外を相手方とする侵害訴訟において、米国連邦地方裁判所の判事によって、ITCの本件訴訟においてNokiaにとって不利になるような解釈がなされていたからです。Qualcommはそれらの特許のクレームは、法律問題として解釈済みであり、ITCは連邦地方裁判所判事による解釈をそのまま採用して審理を進めるべきである旨主張しました。
 
クイン・エマニュエルは、徹底的に検討し直しました。連邦地方裁判所の判事によるクレーム解釈と連邦地裁での数日に及んだ審理の記録を再現することによって、我々は、Qualcommが充分に審理され決定されたと主張するクレーム解釈は、実際にはそうでなかったことを証明したのです。それどころか、連邦地裁は、当初のクレーム解釈の決定を検討し直す旨示唆していたのです。この直後にQualcommはその件につき和解しました(恐らくクレーム解釈だけでもそのまま維持しておきたかったものと思われます。)。当事務所は、ITCは連邦地裁の解釈を単にそのまま採用すべきでないことを主張しました。最終的に当事務所は、Qualcommが連邦地裁に対して認めた内容が、ITCにおけるNokiaに対する侵害の主張と矛盾することをITCに対して明らかにしました。その結果、行政判事は、従前のクレーム解釈に拘束されるものでない旨判示した上で、Nokiaにとって有利なクレーム解釈を採用するに至ったのです。
 
クイン・エマニュエルはまた、Nokiaの技術を調査し、Qualcommとその弁護士は、侵害の対象とされた製品がアメリカのセルラーシステムとどのように相互運用するかという点について決定的に誤った理解をしていることを発見しました。この発見によって、Qualcommの侵害主張はその根底を揺らがされることになったため、主張の立て直しを余技なくされました。
 
そして本件は、ITCに長年務めており、特許法の分野においてアメリカで最も著名で権威のある、Paul Luckern行政判事の下において、2週間にも及ぶ審理に入りました。当事務所の戦略は2点ありました。まず第1点目は、Nokiaがどの特許も侵害していないことを証明する説得的な証拠を提出することでした。当事務所がQualcomm側の鑑定証人に、同人の定義に従えば、彼が「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」に該当しないことを認めさせたことは、Qualcommにとっては痛手でした。第2点目は、Qualcommが権利主張する特許の有効性を覆すことです。反対尋問において当事務所は、Qualcommが主張する3件全ての特許の主たる発明者に、Qualcommの主要な特許の全ての構成要件は既に先行技術に開示されていることを認めさせたのです。さらに、他の発明者についてもQualcommにとって不利な点を認めさせことに成功しました。例えば、当該発明を考えることは自明であった旨の供述、などです。こういった決定的な自認によって、Qualcommは、非自明性について二次的考慮事項を主張することにつき大幅な制約を受けることになってしまいましたが、当事務所はさらに、そのような主張の可能性すら閉ざしてしまったのです。すなわち、我々はQualcommの技術者達が、出力制御の問題点は、当該特許の発明以前に既に解決されたものと考えていたことを証明したのです。
 
このような審理の結果、判事は長く詳細に亘った判決を下し、何らの侵害もなかったこと、及びQualcommの主要な特許が無効である旨判示しました。これにより、当初Nokiaに対して影響力を及ぼすようになることを期待していたQualcommは、本件訴訟の終結時には、その特許のうちの一つを主張することすらできなくなってしまったのでした。
 

第2サーキットにおける主要な勝訴案件:

Merrill Lynch & Co. v. Allegheny Energy, Inc.事件 において、当事務所は、当事務所のクライアントであるAllegheny Energyに対し1億5800万ドルの賠償金の支払いを命じた判決の破棄と、複雑な会社間契約の紛争から生じた案件における、潜在的には3億5000万ドル以上に相当するAlleghenyからの反訴請求の復活について、第2巡回控訴裁判所を説得することに成功しました。
 
Enronのスキャンダルが発生してから間もない2001年に、AlleghenyはMerrill Lynchからエネルギー貿易事業を現金と株式合わせて4億9000万ドルで買収しました。ところがMerrill Lynchが1億1500万ドルで株式の買い戻し権を行使しようとしたところ、AlleghenyはMerrillによる不実陳述と、当該買収の交渉中に重大な事項を隠していたことを理由にこれを拒否し、さらにAlleghenyは、Merrillに対して詐欺及び保証義務違反に基づく反訴を提起しました。しかし、地方裁判所はAlleghenyの反訴を棄却し、Alleghenyに対しMerrillに1億1500万ドルの損害賠償及びその利息を支払うことを命じたのです。当事務所は、控訴審より同事件を受任し、上訴実務のトップである弁護士キャサリーン・サリバン(Kathleen Sullivan)がこれを担当し、第2巡回控訴裁判所において主張を展開しました。   
 
同控訴裁判所は統一意見をもって、地方裁判所は、Alleghenyが買収において獲得していた保証の解釈を誤った上に、信頼(依存)、因果関係、及び損害について誤ってニューヨーク州法を適用したと判示しました。第2巡回控訴裁判所は、Merrillに有利であった判決を破棄し、Alleghenyの反訴請求を復活させた上で、地方裁判所に対し、同控訴裁判所の判決を本件の事実にどのように適用すべきかという点についての指示と共に本件を差し戻しました。当事務所は差し戻し審を受任中です。