あらゆる案件を大量に画一的に高度専門的に 処理するシステムの構築を
幸田 西田先生はホームロイヤーズという非常にユニークな組織をおつくりになったと聞いています。広く一般にもホームロイヤーズは多重債務者救済で非常に有名になりましたが、この組織の沿革というか、どういった経緯でこの組織ができたのかというところを、まず最初にお聞かせいただけますか。
西田 もともと私は、人権関係の問題に二十数年取り組んできました。フィリピンの残留邦人の問題や海外における環境事件など、現地の人を代理して日本政府や大企業を相手にする大型の案件もこれまでに数多く手がけています。そのように、弁護士はひとりでも依頼者が沢山いて、さらに相手が大きいという事件を数多く処理してきたわけです。それらをどういう手法で成功させたかというと、問題解決のプロセスを徹底的に最適化して解決モデルを構築したのです。雑多に発生する業務をマニュアル化、標準化したうえでITを駆使して情報管理を行ない、パラリーガルが作業をできるところにまで落とし込んだのです。フィリピン残留日本人の国籍確認など、膨大な歴史的証拠などが必要になる大型の案件を担当するうちに私か思い当たったのは、結局、法律業務はすべて、要件事実を確認し、事件処理方法の細部にいたるまでマニュアル化して標準化すれば、簡単に行なえるということだったのです。
幸田 具体的にはどのようにお進めになったのですか。
西田 たとえば、フィリピンの残留日本人の国籍確認の問題なら、戦後3000名ほどが取り戻されました。そういった人々の苦難の歴史を家族ごとに立証して、日本政府に対して国籍の回復を迫る。これは非常に膨大なプロセスです。しかし、それに関しても、証拠の収集や評価、分析などをマニュアル化することが可能でした。この時には、報告書を英語でQ&Aシートにまで落とし込むということをやりました。それを通じ戦前戦後の歴史を明らかにしたのです。
幸田 なるほど。そうした手法を多重債務者の救済に応用したということですね。
西田 ええ。そういった経験を踏まえて、10年前ぐらいになりますが、当時、300万件から400万件と言われていた、多重債務に苦しむ人たちの肋けになるようなシステムをつくろうと考えました。さらに言えば、消費者問題だけではなく、労働事件や離婚事件、また医療過誤についてもこれまで3000件を超える相談を受けていますが、そういったすべての案件を、大量に、画一的に、しかも質の高い処理をするシステムを構築しました。
幸田 その発想には、何かモデルのようなものがあったのですか?
西田 具体的なモデルというものはありませんが、私はもともと商社に勤めていましたので、様々な事業について勉強する機会がありました。事業者というのは、経営戦略を練り上げるために、事業を取り巻く環境を要件ごとに分類し、さらに、要素や要因といった周辺環境を徹底的に分析しますよね。そして、それらを組み合わせたり重ね合わせたりしながら最適な道を探るわけです。これが経営の基本であって、民間の企業は当然のように実行してきたことです。法律の世界も、もっと早くそれに気づくべきだったと思います。
幸田 それを可能にするためには、弁護士の環境整備が必要だったようですが。
西田 私は1999年の9月に、弁護士広告の禁止と弁護士報酬規定に関して、公正取引委員会に措置請求を出したのですが、それは日本の弁護士の活動のあり方に限界を感じたことが理由です。1年後には弁護士広告が解禁になり、その後報酬規定も事実上撤廃されました。それをきっかけに、大量かつ迅速に、そして正確で標準的に案件を解決するシステムというものを、色々な分野で開発することが可能になったのです。
幸田 あの改正は西田先生が仕掛けられたのですか。
西田 具体的には、業務をマニュアル化、標準化し、ITでバックアップしていく。そこにパラリーガルを使うのです。さらに言えば、弁護士業というのは、書類作成や証拠収集、調査など事務作業の固まりですが、これらはすべてアウトバウンドすることができます。そしてITを使った情報ネットワークを使えば、すべての情報を弁護士が管理統制することができるのです。この方法ならば、弁護士ひとりにパラリーガルを10名つければ、弁護士の仕事量は10倍に。さらに、それぞれのパラリーガルに20名のアウトバウンドしたスタッフをつければ、さらに20倍。単純な計算ですが、弁護士は200倍の生産性をあげることが可能になる。このシステムこそが、わずか2万人の弁護士数で日本国民が抱える1000万作以上のニーズを満たすための、唯一の方法だと私は思っています。
幸田 なるほど。そのあたりがホームロイヤーズの基本理念ということになるのでしょうか。
西田 付け加えさせていただくとすれば、日本は無法社会ではないかと私は思っています。弁護士が機能していない、裁判所も実は機能していない、警察も検察も十分には機能していない。機能不全だらけの官僚支配国家です。多くの弁護士も官僚的な発想で仕事をしていますから、真の法治国家とは言えない。
幸田 最近の足利事件の冤罪問題をはじめとする司法の様々な不祥事を見ていると、そう思わざるを得ない面があります。
西田 ホームロイヤーズの根本にある目的は、法治国家を実現するということです。具体的には全国に安心安全ネットを張り巡らせて、それを実現する。安心安全ネットとは、我々を含む法律の専門家をはじめ、その他の専門家やパラリーガルなどが有機一体となって、国民の生活に関わる大きなナレッジ産業を巻き起こしていくということです。現在、我々はアウトソーシングセンターも含めると600名を雇用しています。弁護士は所属が11名、協力弁護士が25名。 |