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2010/06

【記事】特許訴訟における損害賠償額について裁判所が慎重化

【記事】連邦控訴裁判所、和解による清算条項の有効性を限定

【記事】ホワイトカラー犯罪の最新情報

【記事】
  米国の陪審評決による損害賠償額は、ときに企業の経営を左右しかねない ほど高額になることがあります。 最近の裁判所の動きには、損害賠償額について慎重な姿勢が見られるように なりました。企業にとって注目すべき傾向だといえるでしょう。

特許訴訟における損害賠償額について裁判所が慎重化


 知財を担当する法務担当者にとって、特許侵害訴訟における賠償額の高額化は、もっとも頭を悩ませる問題の1つである。ときに、原告は、多額の賠償を認める判決を期待して合理的な和解案を拒否し、他方、被告は、そのような判決を恐れて不合理というべき和解案に合意するか、または何百万ドルも費やす裁判で戦うかの選択を迫られることになる。

 現在、米国議会では、特許法について、この50年ではじめての大きな改正が議論されている。より具体的には、特許侵害訴訟における損害額の認定に関して、トライアル、証拠法、陪審員への指示について、連邦裁判所にもっと積極的な役割を付与することが検討されている。残念ながら、この3年間、このような改正への動きは失敗に終わっており、このたびの議論が実際の改正につながるというべき積極的な材料はない。しかし、最近、連邦地方裁判所・控訴裁判所では、すでに立法の動きに先立って、特許侵害訴訟における損害額の認定についてより慎重な審理をするようになっている。

損害賠償額についての現行の法的フレームワーク

 特許法上、特許権を侵害された場合、合理的なロイヤルティ額を下回らない範囲で、その侵害を補填するに適当な賠償をうけることができる。35U.S.C§284(2006)法律上は、遺失利益(lost profits)と合理的なロイヤルティ(a reasonable royalty)の2種類の賠償形態があるが、ほとんどの原告は、立証が容易な後者を選択する。

 合理的なロイヤルティ額の算定は、同等のライセンス契約で設定されているロイヤルティ率をはじめとした様々な要素が考慮される。これは、Georgia-Pacific v. United States Plywood Corp., 318 F.Supp.1116, 1120(S.D.N.Y. 1970)にちなんで、Georgia-Pacific factorsといわれる。このような立証の基本的な枠組みに変更はないものの、最近では、高額の賠償判決が容易になされすぎるという批判に対応して、裁判所は、より慎重に賠償額を審理するようになっている。以下に、具体的な裁判例をいくつか紹介する。

Cornell University v. Hewlett Packard Co., 609 F. Supp.2d279(N.D.N.Y.2009)

 Cornell v.Hewlett Packardにおいて、連邦控訴裁判所は、Cornell側の損害鑑定人のEntire Market Value Rule適用に誤りがあるとして、陪審員が認定した1億8400万ドルの損害額を5400万ドルに減額した。

 通常、たとえば、特許技術が、航空機の座席に関するものである場合、そのロイヤルティ額は、当該座席の価格をベースに算定されるのであって、航空機の価格がベースとなるわけではない。しかし、原告が、特許技術が対象となる商品全体の需要を増加させることを証明した場合、そのロイヤルティ額を商品全体の価格をベースに計算することを認められている。これが、Entire Market Value Ruleである。

 Cornell側の損害鑑定人は、このEntire Market Value Ruleに従って、ロイヤルティ額算定のベースとなるHewlett Packard社の売上を230億ドルと算定し、陪審員は、この金額に0.8%のロイヤルティ率を乗じて1億8400万ドルという賠償額を認定していた。しかし、連邦控訴裁判所は、当該特許発明によってHewlett Packard社のサーバまたはワークステーション全体の需要が増加したというべき証拠はないとして、Entire Market Value Ruleの適用を否定した。

Lucent Technologies Inc. v. Gateway, Inc., et al., 580 F.3d 1301(Fed. Cir.2009)

 Lucent v. Gatewayにおいても、連邦控訴裁判所は、Entire MarketValue Ruleの適用を否定した。この事案では、Lucent社は、特許侵害製品の総売上に8%のロイヤルティ率を乗じた5億6700万ドルの判決を求め、これに対して、陪審員は、3億5800万ドルの一括払いロイヤルティの支払いを認める評決を下した。

 しかし、連邦控訴裁判所は、この陪審員評決は実質的な証拠を欠くとして、これを棄却し、新たにトライアルを行うべきとの命令を下した。裁判所は、判断の理由として、特許技術が消費者が特許侵害製品を購入する理由になっているとはいえず、したがって、Entire Market Value Ruleを適用すべきでないことを挙げている。また、この点に加えて、Lucent社の損害鑑定人は、その結論を導くにあたって、出来高払い式のロイヤルティの分析をベースにしているが、このような分析が、一時払い式のロイヤルティの算定の根拠となることについて、ほとんど説明がなされていないという点も指摘している。

i14i Ltd. Partnership v. Microsoft Corp., 589 F.3d 1246(Fed. Cir. 2009)

 損害額の認定について裁判所が慎重な姿勢をとりつつあることは被告にとって有利にとなるものの、i14i v. Microsoftは被告において注意しておくべき事件である。この事件では、Microsoft社において、法的問題を理由とする判決の申立て(motion for judgment as a matter of law)を行っていなかったために、連邦控訴裁判所は、陪審員の評決を支える証拠が十分であるかについて判断を行うことができず、その結果、陪審員が認定した2億ドルの損害額が維持されることとなった。同裁判所は、もし、特許侵害製品の小売価格やMicrosoft社における同種のライセンス契約の観点から、陪審員の評決が行き過ぎたものでないか判断することができたならば、結論は変わっていたかもしれないと述べている。

まとめ

 これらの裁判所の損害額に関する慎重な姿勢は、現在、継続中の訴訟でも、現れている。たとえば、IP Innovation LLC, et al. v.Red Hat Inc.,et al., No.07-447(E.D.Tex. Mar. 2, 2010)において、連邦控訴裁判所は、原告の損害鑑定人が鑑定にあたって使用したライセンス契約を「訴訟の対象となっている特許と比較できるものではない」として排除し、さらには、Lucent事件を引用して、Entire Market Value Ruleの適用を否定した。これらの一連の事案からは、損害額の認定について、特許法の改正に先立って、裁判所がゲートキーパーとしての役割を担いつつある傾向が明らかである。

【記事】
  今回はクラスアクションの和解に関する留意事項、およびホワイトカラー犯罪の最新情報をお届けします。

連邦控訴裁判所、和解による清算条項の有効性を限定


 クラスアクションを和解で解決する場合、被告が、広範な清算条項を求めることは多い。これは、問題となっている製品や役務についてさらなるクラスアクションが提起されることを懸念するためである。

 しかし、Hess v. Sprint Spectrum LP, __ F.3d __(9th Cir. Mar. 10,2010)における連邦控訴裁判所の判決は、そのような清算条項が被告が期待するよりも効果が小さいことを示唆している。この事案では、あるクラスアクションが和解で解決された後、新たな原告によって同種の訴訟
が提起された。被告は、原告の請求は、前訴の和解における清算条項によって却下されるべき旨を主張した。ところが、裁判所は、、新たな訴訟は、和解された訴訟における請求が前提としていた事実関係と、同一(identical)の事実関係に基づくものではないとして、被告の主張を退けた。裁判所が、前訴の清算条項の執行について、文字通り、事実関係の主張が「同一」であることを要件と考えているのであれば、広範な清算条項の価値は実質的に低減されることになる。

【記事】

ホワイトカラー犯罪の最新情報

米国証券取引委員会がサブプライム投資に関してゴールドマンサックスを提訴

 2010年4月16日、米国証券取引委員会(SEC)は、サブプライムローンを裏付資産とする債務担保証券(CDO)の販売に絡む詐欺の疑いで、ゴールドマンサックスを提訴したと発表した。SECの訴状によれば、ゴールドマンサックスは、リスクの高いサブプライムローンをCDOに組み入れて販売する一方で、同社の顧客であるヘッジファンドマネージャーのジョン・ポールソン氏が、そのCDOに組み入れる資産の選択に関与していたこと、そして、クレジット・デフォルト・スワップによってそれらのCDOの空売りしていた事実を開示していなかった。これらの取引を通じ、ゴールドマンサックスは1500万ドルの利益を、ポールソンは10億ドルを超える利益をそれぞれ上げた
が、他方で、ゴールドマンサックスからCDOを購入した投資家は、10億ドルを超える損失を被ったとされている。

 SECのゴールドマンサックスに対する訴状は、1933年証券法17条(a)及び1934年証券法10条(b)違反といった典型的な法律構成を含むが、従来とは異なったアプローチをとっている。すなわち、従来のサブプライム関連の詐欺事案の訴追では、金融機関は、サブプライムの高いリスクについて投資家に十分な情報を開示しなかったことについて、その責任が問われてきた。しかし、このたびゴールドマンサックに対する訴追においては、ゴールドマンサックスが、投資家に対して質の悪い金融商品を販売する一方で、ポールソン氏のヘッジファンドと「隠れた取引を行い、当該金融商品から利益を上げていたことの責任が問われているのである。SECの執行部門長であるロバート・クザミ氏は、今回のゴールマンサックスの訴追は、SECがウォールストリートの金融機関に対して提起する可能性ある新たなケースのプレビューになるかもしれないと述べている。

米国証券取引委員会が和解の一般的方針を再検討

 米国証券取引委員会(SEC)が和解によって事件を解決する場合、長らく、詳細な事実関係は和解の書面には記載しないという運用がとられていたが、この運用が、近く変更されるかもしれない。SECの執行部門長のロバード・カザミ氏は、ワシントンポストのインタビューに応え、SECにおいて、現在、事件を和解によって解決する場合、被告に対して、SECの調査によって明らかになった不正な行為の詳細を記載した和解書の締結を要求すべきか否かを検討していることを明らかにした。ただ、このような形での和解は、専らSECの調査結果に頼ったクラスアクションの提起を引き起こしかねない。SECでは、それによって、被告が和解による解決に消極的になり、その結果、
現在すでに人員不足にある同委員会がさらに事件の対応に苦労する事態となることを懸念している。しかし、にもかわらず運用の変更が検討されている背景には、バンクオブアメリカが、メリルリンチを買収した後、同社の従業員に高額なボーナスを支払った事件で、裁判所から、当初提案の和解案について、文言があいまいであり、「株主、そして真実を犠牲にして」、両当事者が勝利を宣言することを許すようなものであると強く指摘されたことが背景にあるのかもしれない。現在検討されている運用の変更は、将来において和解案に対するこのような批判を回避するためと思われる。

司法省が刑事証拠開示手続のガイドラインを発表

 この18か月にわたり、政府は、刑事捜査・訴追手続において、被告人に対し情報を提供すべきとする憲法上の義務が果たされていないとの批判を受けてきた。いくつかの連邦裁判所の事案では、起訴自体が却下され、その他の事案においても、政府を鋭く批判する判決がなされている。(なお、却下された事案のうち2件は、クインエマニュエルのクライアントに対して起訴がなされた事案である。)このような批判に対して、司法省は、刑事事件の運用と証拠開示についてガイドラインとなる意見書を発表した。このガイドラインは、すでに確立されている証拠開示のルールを超える新たなルールの策定を意図したものではなく、「司法省が正義を追求することに支障が生じる事態を避けるため、証拠開示に関して、秩序立ったアプローチを確立する」ことが目的とされている。変更点として、特定の米国連邦検察事務局の職員を現場における証拠開示の専門家に任命すること、あらたな証拠開示の参照資料を作成すること、法執行官のために義務的研修を実施することなどが挙げられている。このガイドラインが、証拠開示の違反やそれに関連する訴訟を減らすことにつながるかは、今後に委ねられている。

司法省が、2011年度予算について、経済犯罪に関する予算の増額を要求

 2010年2月1日、オバマ大統領は、2011年度の予算要求を議会に提出した。この予算要求では、特に、経済犯罪の対応のため、司法省の予算について、昨年度より23パーセント増となる、合計9680万ドルの増額が求められている。これは、主としてホワイトカラー犯罪に集中する143名の職員と157名の弁護士を含む、708のポジションの追加のための予算、さらに、金融犯罪、福祉犯罪、医薬品・医療機器業者による詐欺の調査及び訴追のための予算となる。

ダイムラーAGが、Foreign Corrupt Practice Act違反に関して、米国証券取引委員会と司法省と1億8500万ドルで和解

 司法省と証券取引委員会(SEC)は、海外汚職行為防止法(Foreign Corrupt Practice Act)による規制を強めている。司法省とSECは、ダイムラーAG及びその関連会社の各国にける販売方法に関して、2004年から同法に基づく調査を行っていたが、2010年4月1日、同社と和解による解決に
至ったと発表した。和解において、ダイムラー社は、民事・刑事制裁金として合計1億8500万ドルを支払うに合意した。司法省との合意では一部の起訴が延期される一方で、ダイムラー社は、今後3年間、海外汚職行為防止法の遵守を監視する独立した機関を設けることが規定された。SECによって提起された民事訴訟では、その訴状において、ダイムラー社は、ロシア、中国、ベトナム、ナイジェリア、ハンガリー、ラトビア、クロアチア及びボスニアにおいて、そのビジネスを確保するために、贈賄を行っていたとされている。和解に関連して、SECは、ダイムラー社が、継続中のSECの調査に協力するともに、内部調査を実施し、判明した問題について是正していく旨を発表し
た。




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