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証券クラスアクションの傾向 (10/07/01)
2010年3月、スタンフォード大学ロースクールのMichael Klausner教授が、同教授の下で証券訴訟データベースを運用しているJason Hegland氏と行った、最近10年間の証券クラスアクションの研究結果が公表された。
この研究は、2000年から2003年までに提訴され、2001年から2009年までに終結した726件の訴訟を対象に行われており、調査の結果として以下の点が指摘されている。
- 被告の訴え却下の申立てが、18%の事案で確定力ある決定として、28%の事案で確定力のない決定として、それぞれ認容されている。
- 全体のうち、34%の事案が、確定力ある却下又は訴訟取下げによって終結している。
- 和解された証券クラスアクションのうち、概ね半数が、訴え却下の申立てについて最終的な決定が下される前に終結している。
Michael Klausner & Jason Hegland, When Are Securities Class Actions Dismissed, When Do They Settle, And For How Much? Part II, Prof. Liability Underwriters Soc'y J.2 (March 2010)
調査によれば、2001年から2009年の期間において、半数を超える53%の証券クラスアクションにおいて、保険会社が和解金の全額を支払っており、また35%の事案で、保険会社が和解金の一部を負担している。Michael Klausner & Jason Hegland, How Protecitve Is D&O Insurance In Securities Class Actions? Part I, Prof. Liability Underwriters Soc'y J.1(February 2010)
また、和解金額が250万ドルから1500万ドルの事案では、保険会社が、平均で75%から90%の和解金を負担しているが、1500万ドルを超える事案では、保険会社の負担は減少する。また、約5%の事案で社内役員がその負担で和解金を支払っているが、社外役員が和解金を負担した事案は極めてまれである。
また、Cornerstone Research, Securities Class Action Filing, 2009: A Year in Review 23 (2010)によれば、金融機関に対して提起された証券クラスアクションの件数は、2009年で84件であり、2008年の112件から大きく減少している。この減少を反映して、証券クラスアクションの被告となった証券会社は、2009年で全体の1.8%と、2008年の2.6%、過去12年平均の2.4%と比べて減少している。外国会社に対する訴訟の件数も、訴訟全体の16.4%を占めていた2007年をピークに、2009年には12.4%にまで減少している。
もっとも、2009年において訴訟の件数は減ったものの、被告となる会社にとっていいニュースばかりではない。和解金の合計金額は、2008年の27億5000万ドルから、2009年には38億3000万ドルに劇的に増額した。なお、わずか5つの原告側法律事務所が、全体の63%の和解に関与している。
また、Cornerstoneによれば、2009年の後半期において、訴えが提起されてから終結するまでの期間の中央値は2倍以上の100日になっている。また、訴えの提起から長期間経っているクラスアクションほど、短期間のクラスアクションと比較して、より高い割合で却下されている。
スタンフォード大学の法学教授Joseph Grundfestは、「長期化する訴訟は、原告において、かつて訴えの提起をするに魅力的でなかった訴訟を持ち出して訴訟のパイプラインを繋げようとしている」ことをうかがわせるものであり、これらの訴訟は、「大きなマーケット全体の動きというよりも、1つの大きな原告側法律事務所の戦略の独特の要素が反映するものではないか」とs述べている。