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最高裁が国際仲裁合意における非当事者による仲裁強制命令が可能であると判決を下す (20/09/20)
近日、最高裁はGE Energy Power Conversion France SAS, Corp.v. Outokump Stainless USA, LLC, 140 S. Ct. 1637(2020)にて外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約が仲裁合意の執行を可能とする国内の衡平法の禁反言と抵触しない事を満場一致で判決を下した。この判決によって巡回裁判所間での長年の意見不一致が解決され、過去に第二、第三、第九、そして第十一巡回裁判所にて下された国際仲裁合意における署名者/調印者のみが当条項の強制を許される、という判決が覆されることとなる。
外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(1958年6月10日, 21 U.S.T. 2517, T.I.A.S. No. 6997 (“条約”)は条約に関係する当事者への国際仲裁裁定の執行を取り締まる。
米国では条約を実行する法令は連邦仲裁法 (FAA)第二章、 9 U.S.C. § 201 et seqである。 (“第二章”).第二章下において仲裁強制命令の申し立てを要求する当事者は存在と効力の有無を”条約範囲内での合意を書面にて”証明しなければならない。例:Balen v. Holland Am. Line Inc., 583 F.3d 647, 654-55 (9th Cir. 2009) (引用省略).
条約第二条一節では、各締約国が当紛争の仲裁を行うにあたって”書面上の合意”を“認識しなければならない”としている。第二条二節では”書面上の合意”とは”当事者達によって署名された契約内または仲裁合意書内の仲裁条項、または手紙あるいは電報でのやり取り”を含むよう定義されている。
巡回裁判所間の意見相違
1988年、第四巡回裁判所はJ.J. Ryan & Sons, Inc. v. Rhone Poulenc Textile, S.A., 863 F.2d 315, 320-321 (1988)にて親会社とその子会社が本質的に分離不可能な場合の申し立て時において、裁判所は親会社が仲裁合意に関わりがなかったとしても、条約に基づいて申し立てに応じるよう付託している。この結論に至るにあたって、第四巡回裁判所はMitsubishi Motors Corp. v. Soler Chrysler-Plymouth, Inc., 473 U.S. 614, 631 (1985)における最高裁判所の、仲裁に賛成する連邦政策は条約内の文言の代わりに”国際通商の分野における特別な効力を持って適応”されるという陳述に依拠。
1994年、第五巡回裁判所は仲裁条項が記述されている国際契約の非署名者はSphere Drake Ins. PLC v. Marine Towing, Inc., 16 F.3d 666, 669 (5th Cir. 1994)に基づいた条約下において当条項を施行できると判断。第五巡回裁判所は条約内第三条二節の文言を分析し、”当事者による署名”と言う記述が”仲裁合意”と言う記述を変更したと結論づけたものの、”契約内の仲裁条項”においてはその様ではないとした。従って、第五巡回裁判所は当事者が非署名の保険契約書について仲裁条項を施行できると言う地区裁判所の判決を、”ここで言う争点とは契約内の仲裁条項であり、仲裁合意に適応できる資格に関しては当てはまらず、従って署名は必要とされない”として肯定の意を示した。 Id.
第二巡回裁判所は第五巡回裁判所によるKahn Lucas Lancaster, Inc. v. Lark International Ltd., 186 F.3d 210, 215-18 (2d Cir. 1999)における第二条二節の見解に異論を示している。
Kahn Lucas事件で第二巡回裁判所は第二条二節の文章及び起草履歴を分析し、条約内の”書面による合意”の定義が仲裁合意、あるいは契約内の仲裁条項問わずいかなる合意においても当事者による署名が成されているか、または手紙あるいは電報のやり取り内に含まれていなければならない。従って、第二巡回裁判所は問題の契約を訴訟者の1人が署名していなかったとの理由で仲裁を強制する地区裁判所の判決を覆した。
第二巡回裁判所によるKahn Lucas事件の見解はのちに第三巡回裁判所によってStandard Bent Glass Corp. v. Glassrobots Oy, 333 F.3d 440, 449 (3d Cir. 2003) 、及び第十一巡回裁判所によってCzarina, LLC v. W.F. Poe Syndicate, 358 F.3d 1286, 1290-91 (11th Cir. 2004)にて採用されている。第九巡回裁判所はYang v. Majestic Blue Fisheries, LLC, 876 F.3d 996, 1000-1001 (9th Cir. 2017)事件でのKahn Lucas裁判所の見解を適用し、Kahn Lucas裁判所の”条約の解釈における原則への忠実な固守、””第二条(2)の立法歴及び交渉に関する詳細分析”、及び”説得力のある分析”に言及し、Sphere Drakeを”権限もなく、かつ分析も提供されない状況下における判決であること…従って我々の姉妹巡回裁判所により却下された”として棄却した。Id.at 1001.
最高裁はGE Energy Power Conversion France SAS, Corp. v. Outokump Stainless USA, LLC事件にて巡回裁判所間の相違を解決する為、裁量上訴を付与した。140 S. Ct. at 1643.
GEエネルギー事件について
GEエネルギー事件は欠陥があるモーターを巡って生じた訴訟である。
2007年にThyssenKrupp Stainless USA, LLC (“ThyssenKrupp”)はアラバマ州にあるThyssenKrupp社の製鉄工場にて冷間圧延機を製造する為、F.L. Industries, Inc.との間で三つの契約を締結した。各契約内には”契約に関係した両当事者間、あるいはその履行により発生した紛争は…関係和解へ向けた仲裁として提出されなければならない”と言う内容の仲裁条項が含まれていた。F.L. Industries, Inc.は更にGE Energy Power Conversion France SAS, Corp. (“GE Energy”)との間で下請契約を結び、圧延機のモーター製造を図った。後に、Outokumpu Stainless USA, LLC (“Outokumpu”)はThyssenKrupp社の工場を買収。GE Energyのモーターが2015年夏に故障し、多大な損害に繋がったと申し立てられた。
2016年、Outokumpu社とその被保険者はアラバマ州裁判所にてGE Energyへの訴訟を起こした。GE Energyは第二条二百五節下に基づいて連邦裁判所へ事件を移送した。これによってもし訴訟が”条約下における…仲裁合意に関係する”場合、州裁判所から連邦裁判所への訴訟移送を許可されることとなる。GE EnergyはF.L. Industries, Inc.及びThyssenKrupp間での契約における仲裁条項に依拠して更に却下及び仲裁強制を申し立てた。Outokumpu Stainless USA LLC v. Converteam SAS, 2017 WL 401951 (SD Ala., Jan. 30, 2017). 地区裁判所は契約が”売主”及び”当事者”内に下請業者を含むよう定義されている為、GE Energyが仲裁条項下に基づいて当事者として認められると判決を下した。Id., at *4.
裁判所がOutokumpu及びGE Energyが共に合意の当事者であると判断した為、合意が衡平法上の禁反言における原則下において執行可能とするGE Energyの申し立ては却下された。Id., at *1, n. 1.
第11巡回裁判所は地区裁判所による仲裁強制命令を覆した。
Outokumpu Stainless USA, LLC v. Converteam SAS, 902 F.3d 1316 (2018).
第11巡回裁判所は、GE Energyは”売主”または”当事者”の定義いずれかに該当するという地区裁判所の判決をまず却下し、条約が”仲裁を強制するには当事者が実際に合意書に署名をする必要がある” 為”GE Energyは確実に契約の署名者とはならず”、従ってGE Energyは仲裁を強制することはできない”と説明。Id. at 1326.
第11巡回裁判所はまた、条約の署名条件と抵触する為、GE Energyは衡平法上の禁反言に依拠できないと述べた。
Id. at 1326-1327 (上記はCzarina, LLC v. W.F. Poe Syndicate, を引用).
最高裁は裁量上訴を付与。裁判所の分析は仲裁合意の強制に関連する州法原則の適用を許可するFAA第一章から始まる。裁判所はArthur Andersen LLP v. Carlisle, 556 U.S. 624, 631-632 (2009)にて”FAA第一章は非署名者が仲裁合意を執行するにあたって州法である衡平法上の禁反言の原則に依拠できる事を認識している”と言及。140 S. Ct. at 1644.
裁判所は条約が”仲裁裁定にほぼ完全に集中して…”おり、更に”条約内でただ一つ、第二条のみが仲裁合意について記載している”と述べた。Id. at 1644.
裁判所は第二条が三つの短い節しか含まれていないことに触れている:第二条一節及び二節(上記関連部分にて引用)及び第二条三節であり、ここでは”契約を結ぶ州での裁判所が、占有された訴訟事項に関する当事者達がこの条項の意図の範囲内で合意に至った場合に、一方の当事者が要望すれば当合意が無効かつ無価値、動作あるいは実行不可能であると判断されない限りは仲裁に付することができる”と指摘。Id.
裁判所は更に、9 U.S.S. § 208下において”第一条は[第一章]が当章[第二章]あるいは条約と抵触しない範囲内にて当章に基づいて申し立てられた訴訟及び法的手続きに適用される”と説明。Id.
裁判所はまた、”FAA第一章下にて許可された衡平法上の禁反言の原則”が条約と抵触するか否かが争点であると定義し、結果、問題にはならないと判断した。Id. at 1644-1645 (引用省略)。裁判所は条約の文章が、非証明者が衡平法上の禁反言を含む国内の原則下において仲裁合意は強制可能かと言う点には触れていないとし、更に:”条約内のいかなる文章においても国内における衡平法上の禁反言の原則の適用を禁止するとは言及されておらず、この無言が争点となる”と注目。Id. at 1645.
裁判所は、第二条三節の文言では、契約州にある裁判所が訴訟の当事者が仲裁について書面上で合意を示し、かつ一方の当事者側から仲裁の要求があり、更に”仲裁合意の施行により寛容である国内法の適用は防げないものの、仲裁合意が特定の状況下にて施行されなければならないという条件を元”に”当事者を仲裁に付する…ことができる”と指摘した。Id.
この分析に基づいて裁判所は、”条約のいかなる内容にもFAA第一章下で許可されている国内における衡平法上の禁反言の原則の適用とは’抵触’しない”と結論づけた。Id. 裁判所は次に条約の起草履歴及び交渉内容、また署名国の裁可後の行為を再考察し、彼らもまた裁判所による条約の文章解釈について一貫していると結論づけた。Id. at 1646-1647.
最高裁はGE Energyが衡平法上の禁反言の原則または当判決を統治する法典下の仲裁規定を強制できるかについては判断しておらず、従って差し戻しの申し立てを示唆している。裁判所は条約が非署名者によって結ばれた国内法における衡平法上の禁反言の原則下の国際仲裁合意の強制と抵触しないと述べた。
Sotomayor判事は”適用し得るいかなる国内原則においても、仲裁同意の原則に根付いてなければならない”と強調し、賛成意見を提出した。Id. at 1648.
賛成意見では、”下級裁判所は国内の非署名原則を適用することがFAA既得の制約に違反するかどうかケース・バイ・ケースに従って判断しなければならない”と結論づけた。Id. at 1649.
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
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マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
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