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欧州司法裁判所によるHuawei v. ZTE事件判決後のドイツにおける標準必須特許(SEP) (17/04/27)
2015年7月16日付のHuawei v. ZTE 事件判決 (C-170/13)において、欧州司法裁判所(ECJ)は標準必須特許(SEP)保持者が102条TFEU下における市場支配的地位を侵害することなく侵害者に対して差し止め救済措置する際の新しい法的基盤を制定した。ECJによる6つのステップは以下のとおりである:
1. 特許権所有者は申し立てられた侵害疑惑について被告に通告しなければならない
2. 被告はFRAND条件のライセンスに対する意欲を明らかにしなければならない
3. 特許権所有者はFRAND条件のライセンスに関して具体的な書面提案をしなければならない
4. 被告はその申し立てに対し牛歩戦術ををとることなく返答に努めなければならない
5. もし被告が特許権所有者の提案を拒否する場合、FRAND条件に則った反対提案を行わなければならない
6. もし特許権所有者が反対提案を拒否する場合、被告は(過去の作為を含む)適切な保証を提供せねばならず、その使用に関する作為の釈明をしなければならない
ECJの判決後、ドイツはデュッセルドルフ、マンハイム、カールスルーエの特許訴訟室では幾つもの基本的な、また状況によっては逸脱した判決を下している。
2017年1月24日付の判決では(事件番号 2 O 131/16)、マンハイム地区裁判所特許権所有者による侵害報告について、親企業であったとしてもSEPによる懸念及び侵害行為、そして侵害実施例(クレームチャートは必要でない)を持って十分とみなしていると指し示した。マンハイム裁判所は侵害報告及び特許権所有者による最初の申し出間の一時的相殺は必要ないと判断した。
更にはデュッセルドルフ地区裁判所は2016年3月16日付(事件4a O 73/14)の判決で供給者が侵害事件について知った場合、侵害報告は必ずしも必要でないと強調した。例えば、第三者による報告や既に保留となっている侵害事件での被告による報告などが挙げられる。デュッセルドルフ控訴裁判所 ( I-15 U 36/16事件) は第一審判決の強化に基づいた判決で確証した。
ドイツの判例法は特許権所有者の提案あるいは特許使用者の反対提案が実際にFRANDであるかを審査する際には均一ではない。マンハイム及びデュッセルドルフ裁判所では審査の企画に関して異なる条件を課していた;例えばFRAND条件への明らかな矛盾のみが妥当であるか否か(マンハイム地区裁判所2016年3月4日付判決、事件番号 7 O 96/14を参照)あるいは提案がFRAND条件を満たしていると積極的に判断されるべきか(デュッセルドルフ上級裁判所2016年11月17日付判決、事件番号I-15 U 66/15を参照)。
最近の判例法ではデュッセルドルフ及びマンハイム裁判所の両方がFRANDに則ったライセンス提案を満たす条件に関するいくつかの指標を提示している:
2016年11月17日付の指示命令において、デュッセルドルフ上級裁判所(事件番号I-15 U 66/15) はSEP保持者が、ライセンス契約時の主題であるすべての条項に則った詳細を含めた十分なライセンス提案の申請書を提供しなければならないとしている。しかし、デュッセルドルフ裁判所はSEP保持者がとりわけFRANDライセンス費用を判断するにあたって一定の決定権があると認識している。ただし、特許権保有者は単に要求されたロイヤリティ費用や各自算定根拠に言及するだけではなく、具体的な金額に貢献するすべての要因を開示することで ”ロイヤリティの計算方法”を明示しなければならない。裁判所は更にFRAND規格の提案が”適応条項”が必要であるという意見を持ち出した。これは例えばSEPポートフォリオにおける明白な変化の場合に採択を許可するロイヤリティ費用の観点などが挙げられる。
デュッセルドルフ裁判所によれば、無差別なFRAND提案の判断には特許権所有者が裁判所に対し、例えば既存する第三者とのライセンス契約などの規定のライセンス業務によってライセンス提案が約束されたものである と証明されなければならない。マンハイム地区裁判所第七室(事件番号7 O 19/16) も同様にアプローチしており、2016年11月17日付の判決では原告の申し立てが、要求された単位あたりのロイヤリティがなぜFRANDとして判断したかという理由を申し立てられた侵害者側に十分な開示がなされなかったとして却下した。
この見解に反して、マンハイム地区裁判所第二室は2017年1月24日付の判決(事件番号 2 O 131/16)にて、すべての提案は各事業分野に対するライセンス契約内に大抵記載されている全ての条件が含まれていなければならないが、要求されたライセンス費用に関する公判前の説明はECJによる判決下では必要とされない。
ライセンス提案に関していえば、マンハイム地区裁判所(2016年3月4日判決、事件番号 7 O 96/14)及びデュッセルドルフ(2016年3月31日判決、事件番号4a O 126/14) は同様のアプローチを通じて世界的ポートフォリオのライセンスを含んだ提案に関して、もしそれが関連分野において一般的であり、また最低でも申し立てられた侵害者が世界的にSEPを使用している場合にはFRANDであると判断した。
これまでに下された判決では、ECJによる Huawei v. ZTE判決に則ったFRAND条件を設定するドイツ裁判所のアプローチが未だ統一されていないことが分かる。とりわけ、FRAND条件に従うための特許権所有者による提案及び特許使用者の反対提案に関する条件にも一貫性が見られない。よって、SEP所有者及び申し立てられた侵害者の両者が近日の判決に関して通知を受けており、また、ECJの判決に基づいた判例法で制定された条件に従うべく明白な戦略を発展させることが必須となる。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com