quinn emanuel trial lawyers tokyo

  • トピックス
  • 事務所について
  • 業務案内
  • 弁護士紹介
  • セミナー
  • 論文・出版

ニュース

セミナーTOP
ニュース一覧へもどる

ニュース

クイン・エマニュエル法律事務所の最新情報をお知らせします。

お客様にとってもっとも関心のある知財や独禁法・金融・労使関係などの最新の話題をお届けします。
御社の法務・経営戦略にお役立てください。

Firmnews

Firmnewsアイコン
  • TOPICS
    デラウェア州一般会社法の大幅改正案に州知事が署名
     (25/05/23)

3月25日、デラウェア州知事は、デラウェア州一般会社法についてここ数世代で最も重要な改正に署名した。デラウェア州法に対する批判や、デラウェア州法人を他の州で設立し直すことすら検討している企業の声に応え、同州上院法案21は、ディールメーカー、支配株主、投資家にとって、法律の内容がより確実で予測可能なものとなるように設計されている。そして具体的にこの法案(厳密には上院法案21の上院補欠案1)は、デラウェア州一般会社法を以下に挙げる3つの主要な点で改正するものである。

第一に、独立取締役や株主の承認といった手続き上の仕組みを利用することで、利益相反取引が後の訴訟で無効とされることから保護されることを可能にするセーフハーバーを追加する。

第二に、支配株主についての定義、および取締役の独立性を否定するために必要とされる証明の内容を明確にしている。

第三に、株主による帳簿・記録の開示請求に応じて、株主は企業のどのような記録について開示を受けることができるかについて、新たに明瞭な基準を設けている。

DGCLのこれらの改正は直ちに発効し、遡及適用される(法案提出前、すなわち2025年2月17日以前に提起された訴訟および帳簿・記録の開示請求を除く)。従って、近い将来、上院法案21が現実に利用され、そしてそれについて争われることが予想される。


 

第144条の改正-利益相反取引のセーフハーバー

DGCL第144条は、会社とその取締役もしくは役員との間の利益相反取引が、利害関係のない取締役や株主によって承認されている場合、または会社にとって公正である場合には、それのみ、すなわち利害相反取引であることのみを理由として、無効とされることはないと長年規定してきた。しかしながら、第144条は、単にそのような利益相反取引は無効であるというコモンローのルールから当該取引を保護するものに過ぎず、より広範なセーフハーバーを提供するものではなかった。

デラウェア州裁判所は、コモンローによるセーフハーバーすなわち、当事者の判断を尊重するビジネス・ジャッジメント・ルールを適用するという形によって手続き的保護を与えるという内容の法理を発展させることによって、このギャップを埋めてきた。例えば、支配株主の関与や資産の浪費を伴わない、利害関係のない十分な情報を得た株主によって承認された利益相反取引については、「Corwinドクトリン」により、デラウェア州裁判所は損害賠償請求を棄却することができるようになった。Corwin v. KKR Financial Holdings LLC, 125 A.3d 304 (Del. 2015)。しかし、支配株主が関与する取引については、独立した十分な権限を有する特別委員会によって交渉され、十分な情報の提供を受けた利害関係のない株主が強制されることなく、その過半数によって承認した場合に限り、司法による再審査を回避することができた。この「MFWドクトリン」はよく知られているものである。In re Kahn v. M&F Worldwide Corp., 88 A.3d 635 (Del. 2014)。

第144条の改正は、潜在的な利益相反を有する取締役、役員、支配株主、または支配グループが関与する行為または取引について、このようなコモンローの枠組みを大幅に拡大するものである。

支配株主が関与しない会社とその役員との間の行為または取引について、新第144条(a)は、以下のいずれかに該当する行為または取引を司法的判断から保護する。
(1) 利害関係を有しない取締役の過半数が、重要な事実を知らされた上で、誠実に、かつ重大な過失なく行動して承認した場合、または、
(2) 利害関係を有しない株主の過半数の投票によって承認された場合。但し、これらの株主は、必要な情報の提供を受けており、かつ承認することを強制されていないことが必要である。

但し、取締役の過半数が当該行為または取引に利害関係を有する場合には、上記(1)の選択肢では、2名以上の取締役で構成される委員会が当該取引を承認する必要があり、かつこれらの取締役はいずれも取締役会によって利害関係を有しないと判断されなければならない。

非公開化取引以外の支配株主間取引について、新第144条(b)は、以下のいずれかに該当する取引を司法判断から保護する。
(1) 当該取引について交渉および拒否を行う権限を明示的に授与され、重要な事実を知らされた上で、善意かつ重大な過失なく行動する2名以上の取締役(これらの取締役はいずれも取締役会により利害関係を有しないと判断されなければならない)によって構成される委員会により承認または推奨された場合、または、
(2) 利害関係を有しない株主による過半数の投票により承認された場合。但し、これらの株主は必要な情報を提供され、かつ承認することを強制されていないことが必要である。

支配株主による非公開化取引については、新第144(c)条は、第144(b)条で規定される両方の構成要素、すなわち、以下を満たす形で承認された場合に限り、当該取引は司法判断から保護される。
(1) 取引の交渉および拒否の権限を明示的に授与され、重要な事実を知らされた上で、誠実に、かつ重大な過失なく行動する2名以上の取締役(これらの取締役はいずれも取締役会により利害関係を有しないと判断されなければならない)から構成される委員会により承認または推奨され、および、
(2) 利害関係を有しない株主による過半数の投票により承認された場合。但し、これらの株主は必要な情報を与えられ、かつ承認することを強制されていないことが必要である。

上院法案21は、Corwin法やMFW法のような既存のコモンローによる保護をなお維持するものの、上院法案21に較べるとこれらの法の有用性は限定的なものとなるかもしれない。何故なら多くの点で、新第144条(b)項と(c)項はMFWセーフハーバーを拡張するものであるからである。
・MFWの原則は、現在の第144条(b)のように、2つの仕組みのうち1つのみによって承認された支配株主取引を対象とはしていない。
・MFWの原則は、実質的な交渉が行われる前に、委員会が設立され、「最初から」権限を授与されることを要求しているが、上院法案21はこれを要求していない。
・上院法案21は、株主の承認は、発行済議決権の過半数ではなく、「行使された議決権の過半数」によって承認されれば足りることを明確にしている。


 

第144条改正-独立取締役と支配株主の範囲の明確化

上院法案21は、独立取締役と第144条における支配株主の範囲を明確化し、取引に更なる確実性をもたらすものである。

この改正により、「支配株主」の定義が初めて成文化された。「支配株主」は、近年その範囲が拡大されてきており、議決権の50%未満の株式しか保有しない株主であっても、実際の支配のメカニズムを行使する株主であればそれに含まれるようになった。そして、上院法案21においては、支配株主(または関連会社)とされるには以下の条件を満たす必要がある。
(1) 議決権の過半数を有する、
(2) 契約その他により、取締役会の過半数を選出する権利を有する、または、
(3) 議決権の少なくとも3分の1を有しかつ過半数の議決権を事実上支配しているのみではなく、会社の事業および業務に対して経営上の権限を行使することができる。

また、「独立取締役」の定義が近年変化し、通常のビジネスや社会的コネクションを持つ取締役の独立性が一部によって疑問視されていることも改正案では認識されている。これを受け、上院法案21では、上場企業の取締役で、適用される証券取引所の独立基準を満たすと取締役会が判断した取締役については、独立性の推定を強化した。この推定は、その取締役が問題となっている取引について「重要な利害関係」を有するか、またはその取引に「重要な利害関係」を有する人物と「重要な関係」を有するという点についての「実質的かつ具体的な事実によってのみ覆すことができる」。


第220条の改正-帳簿と記録の調査

デラウェア州の裁判所は30年近くにわたり、株主に対して、訴訟を起こす前に、DGCL第220条に基づく帳簿書類の開示を行うという、企業の不正行為を調査するための「身近な手段」を利用するよう促してきた。そのためデラウェア州企業は、当該企業にとってネガティブなニュースが出た場合には株主から帳簿書類の開示請求を受けるであろうということを予期するようになり、また株主原告は開示を求めることのできる記録の範囲を拡大しようとする傾向が強まっている。

第220条の改正は、株主がその開示を請求することのできる「帳簿および記録」を定義することで、これらの動きに対応するものである。
(1) コーポレート・ガバナンスに関する文書(定款、細則)
(2) 株主総会の議事録、同意書および通信記録
(3) 取締役会および委員会の議事録ならびに資料
(4) 年次財務諸表
(5) 第122条(18)に基づいて締結された株主契約
(6) 取締役および役員の独立性に関する調査票

この定義で最も重要な点は、役員レベルの文書や、正式な取締役会資料ではない電子メールなどによる取締役レベルのコミュニケーションがそこには含まれないという点である。そして、これらの記録やその他の記録を取得するためには、株主は次のことを証明する必要がある。
(1) 会社が上記の記録のうち特定のものを欠いており、機能的に同等のものが株主の目的にとって必要かつ不可欠であること、または、
(2) 株主が「切実な必要性」を証明し、特定の記録がその適切な目的を推進するために「必要かつ不可欠」であるという「明確かつ説得力のある証拠」を提出すること。

上院法案21はまた、企業が帳簿や記録の提出に合理的な守秘義務制限を課すことを認めるなど、現行法のいくつかの要素を維持するものでもある。さらに、帳簿や記録の開示によって得られた情報は、株主によって、あるいは株主の指示によって提出されたその後の訴状に、参照という形で組み込まれたものとみなされることを成文化した。これは言うまでもなく、訴状によってこれらの帳簿や記録のいいとこ取りをしたり、虚偽の事実を主張することを防ぐためである。


ニュース一覧へもどる
Page top
Copyright (C) 2025 quinn emanuel urquhart & sullivan,llp. All Rights Reserved.