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クラスアクション訴訟 虚偽広告主張に対する防御 (13/03/01)
もしあなたが、猫が他の製品ではなく特定のブランドのペット用吸湿剤を「好き」又は「選ぶ」という広告に基づいて虚偽広告の訴訟を起こすことがやりすぎだと思ったとしても、それは珍しいことではない。カリフォルニア北地区地方裁判所のSamuel Conti裁判官は、合理的な消費者は、猫が他の製品よりも特定のペット用吸湿剤を「選ぶ」というような表現に騙されることはないし、このような表現は誇張に過ぎないというごく当然のことを述べて、Cloroxに対するこのような観点からのクラスアクションを却下した。In re Clorox Consumer Litigation, 12-00280, 2012 WL 3642263 (N. D. Cal. Aug. 24, 2012)参照。人間のような仕草を行う友人のようなペットについて、それを文字通り捉える第三者から訴訟提起されるおそれなく、表現することができるのである。
他の請求に移行したClorox事件は、クラスアクションの世界で話題となっている新しい種類の虚偽広告訴訟のひとつの結果である。表現が詩的に許容されるものであることがいかに明白であっても、すべてのラベル、印刷物、インターネット、テレビの広告は、100パーセントの正確性からの逸脱がないように綿密にチェックされている。たとえ、原告が商品の原材料レベルを認め、栄養価をラベルに正確に開示している場合でも、クラスアクションは提起され、消費者に自己の利益のためにラベルを読むことを期待するべきではないという主張によって、訴答手続を通過する。実際に、消費者保護の請求は広範囲に及び、違反の有無は事実が争点となることから、一見して根拠薄弱な事件であっても、それを早期の申立てで却下することは難しい。しかし、適切な事件において、多少成功や価値がある防御方法が存在する。
第一に、請求が連邦裁判所の訴状において一般的な形で主張された場合、連邦民事訴訟規則9条(b)に基づく、詐害的な請求であると主張し、原告に対して、主張事実について、誰が、何を、いつ、どこで、どうやってやったのかを特定するように求めることが可能かもしれない。連邦裁判所は、州法に基づく消費者請求について、特定性をもって主張するように求めている。その中には、よく主張される、カリフォルニア不正競争法(Unfair Competition Law、UCL)、消費者法的救済法(Consumer Legal Remedies Act、CLRA)、虚偽広告法(False Advertising Law、FAL)が含まれる。Yumul v. Smart Balance, Inc., 733 F. Supp. 2d 1117, 1122 (C.D. Cal. 2010)参照。このルールは、ほとんどの場合、棄却という結論を導かないが、訴訟の最初から、原告がどのような特定の事実をもって自己の主張が成り立つと考えているのかを知ることは常に価値のあることである。
第二の方法であり、より効果的である可能性のあるものは、特に、連邦法で規制されたラベルに関連する請求に対する連邦法の専占に基づく防御である。これには、FDAによって規制された食品やノンアルコール飲料のパッケージやUSDAによって規制された肉や卵製品のラベルが含まれる。例として、Chacanaca v. Quaker Oats Co., 752 F. Supp. 2d 1111, 1116 (N.D. Cal. 2010)参照。たとえば、2012年栄養価表示及び教育法(Nutrition Labeling and Educational Act、NLEA。104 Stat. 2353, 21 U.S.C. §§ 341, et. seq. (2012))は、特定の栄養や原材料に関する情報が、ほとんどすべてのFDAによって規制された食品のラベルに表示されなければならないことを規定している。Peviani v. Hostess Brands, Inc., 750 F. Supp. 2d 1111, 1118 (C.D. Cal. 2010)。同法は、343条(r)(l)に基づく請求について、食品のラベルになされた、343条(r)と同一でない、いかなる規制も州が行うことを禁止している。21 U.S.C. §§ 343-1(a)。Yumul v. Smart Balance, Inc., No. 10-00927, 2011 WL 1045555 (C.D. Cal. Mar. 14, 2011)参照(カリフォルニア州法で要求されているより制限的な「ノンコレステロール」ラベルに関する規制について、NLEAによる専占を認定した。)。Chacanaca, 752 F. Supp. 2d at 1116-17 (「トランス脂肪酸0グラム」のラベルの禁止を求める消費者訴訟をNLEAによって専占されていると認定した。)。
カリフォルニア州においては、特に、食品や飲料製造業者に対する多くのUCL/FAL/CLRA関連の請求は、原告が、NLEAの要求と異なる負担を求めた場合、連邦のNLEAに基づく規制に専占されていると判示される。Charles Hairston v. South Beach Beverage Co., Inc., No. 12-1429, 2012 WL 1893818 (C.D. Cal. May 18, 2012)参照(飲料が実際に果実や果汁を含んでいない場合に、果実の香りと述べるのは不適当であるという主張について、専占を認定した。)。
NLEA又はFDAの特定の条項を特定することは、専占による防御が成功する確率を上昇させるだろう。たとえば、Lam v. General Mills, Inc., No. 11-5056, 2012 WL 1656731 (N.D. Cal. May 10, 2012)において、原告は、Fruit Roll-Ups(ロール状の菓子)のパッケージは、同商品が健康的であるかのように消費者を誤解させていると主張した。パッケージは、側面に実際の原材料の表示があるものの、「果実の香りがする菓子」、「イチゴの自然な香り」といった内容を含んでいた。被告は、仮に商品にイチゴを含んでいなくとも、「イチゴの自然な香り」というラベルを商品に行うことを許容する特定のルールを示した。連邦地方裁判所は、請求は専占により無効であると判示した。また、Carrea v. Dreyer’s Grand Ice Cream, Inc.¸ 475 F. App’x 113 (9th Cir. Apr. 5, 2012)参照(ドラムスティック(アイスクリームの商品)のパッケージ上の「トランス脂肪酸0グラム」という説明は、Dreyerのアイスクリームは健康によいという誤解を消費者に招くという主張について、栄養価表示に関するNELAルールによる専占を認定した。)。
これらの事件にもかかわらず、この商品は「すべて天然」であると宣伝した者に対する請求については、有効な手段がほとんどない。FDAは、何が「天然」であるかについて定義を行っておらず、結果、この請求は、専占により無効とはされない。たとえば、Wright v. Gen. Mills, Inc., No. 08-cv-1532, 2009 WL 3247148 (S.D. Cal. Sept. 30, 2009) (果糖コーンシロップを多く含むグラノーラバー(シリアルバー)について「すべて天然」という誤解を招く表示がなされているという主張について、専占の防御を否定した。)、及びAstiana v. Ben & Jerry’s Homemade, Inc., No. 10-4387, 2011 WL 2111796 (N.D. Cal. May 26, 2011) (アルカリ化したココアを含むアイス製品について、「すべて天然」という誤解を招く表示がなされているという主張について、専占を否定した。)参照。
訴答段階の防御が失敗し、クラス認定がされた場合、ほとんどの消費者保護の法律に基づいて、広告に対する請求は、「合理的な消費者」の観点から判断される。たとえ、この基準に基づいて常識から判断して誤解を招くものではないとされたとしても、クラスアクションにおいてこの結果を得るために必要となる訴訟費用は、莫大なものになる。Cloroxの裁判所のように、裁判所が、常識を欠いた訴訟を訴答段階で退けることに積極的になるかどうかは不透明のままである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com