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1) 連邦巡回裁判所は新たに制限付きの特許代理人の秘匿特権付き情報を認知 (16/06/15)
はじめに
特許代理人は アメリカ合衆国特許商標庁(USPTO)に対する実務、また訴訟手続においてもUSPTOに対する実務を特許弁護士同様に行うライセンスを保持しており、これには特許申請書の準備・遂行や特定の発明における特許可能性の見解も含まれている。Paul R. Rice, et. al., 米国における弁護士・依頼者間の秘匿特権§ 3:19 (2015 ed.)。但し、法曹に加盟していない特許代理人は弁護士として認められない。Robert A. Matthews, Jr., 注釈付特許ダイジェスト§ 42:24 (2016)。特許代理人とのコミュニケーションが弁護士・依頼者間の秘匿特権で保護されるべきか、裁判所においては最近まで長らく未決の問題となっていた。
2016年3月、初判例事件において連邦巡回裁判所はUSPTOに対する承認済みの実務時での非弁護士である特許代理人及びそのクライアント間のコミュニケーションを保護する“特許代理人の特権”を認知した。キングストン、クイーンズ大学事件に関して2016 WL 860311, —F.3d— (Fed. Cir. Mar. 7, 2016) における連邦裁判所の判決前に、地区裁判所は特許代理人へのコミュニケーション特権は与えられるか、二手に意見が分かれることとなった。
特許代理人の任務:Sperry v. State of Fla. ex. rel. Fla. Bar, 373 U.S. 379 (1963)
事件に学ぶ
特許代理人によるクライアントコミュニケーションが特許代理人特有の任務として特権的な起因となるべきである。弁護士の資格が無くとも、特許代理人はUSPTO下において法律の実務を遂行している。特許代理人の任務を定義したSperry v. State of Fla. ex. rel. Fla. Bar, 373 U.S. 379, 381 (1963)事件では、フロリダ州が “無許可の”法実務が含まれていた為、非弁護士の特許代理人としての活動しか行えないと反論。
米国最高裁はこれに反対した。裁判所は 特許代理人の“法実務を含む”業務を認識するところから分析を始めた。Id. at 383 (引用は除外)。裁判所曰く、特許申請書の準備・遂行には特許代理人が適切な法廷要件下における発明の特許権に関してクライアントに助言し、特許請求や明細書及びその他事項を含む起草に参加する必要性が求められている。Id。
また裁判所はフロリダ州が 非弁護士の特許代理人が州内で法実務を行うことを適切に禁止できる可能性はあるものの、USPTO下において非弁護士の特許代理人が法実務を行う権利を連邦法によって与えられている為、結果フロリダ州はそのような活動を規制あるいは禁止を命じることはできないと判断している。Id. at 385。裁判所の説明にあるように、議会は“局長が明白な権限を与えた場合に、非弁護士が特許局の前に実務を行う”権限を与えた。Id. at 385。
従って、“優越条項に則って、フロリダ州は 連邦当局の範囲内における役割を果たす権利に必要とされる条件を満たさない対象を拒否できない”Id。裁判所は特許局及び行政手続法の立法経緯に注意した際、非弁護士が特許局の認可及び議会が知る限り設立当初から”特許局下において実務を行っていたことが判明した。Id. at 388。
Sperry事件では非弁護士の特許代理人がUSPTO下において法実務を行う権利を認知したものの、特許代理人とクライアント間のコミュニケーションにおける特権が存在するか否かは議論していない。
判例法の分裂
最高裁による明白な手引きなく、連邦巡回裁判所は 特許代理人によるコミュニケーションが弁護士・クライアント間のコミュニケーション時同様の保護の有無について分裂した。裁判所の中には、非弁護士である特許代理人とのコミュニケーションが弁護士・クライアント間の特権外であると判断。
一例としてRivastigmine特許訴訟事件、237 F.R.D. 69, 102 (S.D.N.Y. 2006)では、裁判所がSperry事件は特許弁護士及び特許代理人を平等に扱うつもりは全くなかったと判断している。Id。(“代理人が、定義された法実務の領域に携わる許可を得ているからといって、その活動がすなわち弁護士同等とはならない。”)。Joh A. Benckiser G. m. b. H., Chemische Fabrik v. Hygrade Prods. Corp., 253 F. Supp. 999, 1001 (D.N.J. 1966) (“特許法では、その他分野同様、クライアント及び非弁護士である代理人間のコミュニケーションという特権は与えられない。”)も参照のこと。
反面、アンピシリン反トラスト訴訟事件上において、スペリー事件での裁判所が特許弁護士または特許代理人のどちらかがUSPTO下において 前にクライアントを代表するかを選択できる自由を保護する試みを行った事が判明している。
この選択の自由は“弁護士・クライアント間の特権が特許弁護士は含むが、特許代理人を含まない場合において同様の基本的な保護としては実質上の障害が生じる。” 81 F.R.D. at 393。従って裁判所は登録している特許代理人とのコミュニケーションは弁護士・クライアントの特権によって保護されるとしている。
Id。Buyer’s Direct Inc. v. Belk, Inc., 2012 WL 1416639(未登録)(C.D. Cal. April 24, 2012)(弁護士・クライアント間の特権は、USPTO下における出願の提示及び遂行に関わるコミュニケーション同様、登録済みの特許代理人・クライアント間にもあてはまる)も参照。
その他の裁判所ではいわばハイブリッド型の規則を適用し、弁護士・クライアント間の特権は特許代理人によるコミュニケーションにも適用はするが、
特許代理人が弁護士の監視下において業務を行う場合にのみ可能となる。
Golden Trade, S.r.L. v. Lee Apparel Co., 143 F.R.D., 514, 519 (S.D.N.Y. 1992)(特許代理人によるコミュニケーションは弁護士の指示により保護される); Cuno, Inc. v. Pall Corp., 121 F.R.D.
198, (E.D.N.Y. 1988)(“いかなる場合において、特許代理人との秘匿コミュニケーションの特権は弁護士の監視下及び管理下であれば適用される”)(引用は省く)。
しかし、弁護士・クライアント間の特権が弁護士代理人及びクライアント間のコミュニケーションを保護する為、裁判所はこの弁護士・クライアント間の特権を与える代わりに、特許代理人をその他の非弁護士同様の扱いをした。
特許代理人の特権を制定:Queen’s University at Kingston事件に関して
Queen’s University at Kingston事件で連邦第三巡回裁判所は地区裁判所間で分割された特権に関する認識を、限定特権の発案により解決した。この事件では原告Queen’s University及びPARTEQ(共に合わせて“Queen’s University”とする)が特定の資料が自身の社員及び特許代理人間のコミュニケーションにおいて秘匿特権を発すると判断し、資料の開示を差し控えた;2016 WL 860311, at *1。
行政長官は被告の書類要求申立てを許可し、“Queen’s Universityの社員及び彼らの非弁護士特許代理人は弁護士・クライアント間の特権対象外であり、また特許代理人特権は別に存在しないと判断した。”id。(Roy S. Payne補助裁判官によるQueen’s訴訟手続の議事録を引証、 (E.D. Tex. June 17, 2015), ECF No. 149)。地区裁判所はQueen’s Universityの異議申し立てを却下したが、連邦巡回裁判所による再審を待って判決を保留した。Id。
連邦巡回裁判所は特許代理人によるコミュニケーションが特権として与えられたものであるか否かは該当の裁判所において先例のない状況であり、新たな特権を定義する権限を保持していたものの、そのような新定義を行うにあたっては一般的な仮定を考慮しなければならない。Id. at *5(無論、最高裁は秘匿特権は‘軽々しく制定または発展的な解釈によって真実への追求から逸脱するするものではない。’”)(United States v. Nixon, 418 U.S. 683, 710 (1974)から引用)。
連邦巡回裁判所はその他裁判所がクライアント及び税理士や刑務所内法律家などその他非弁護士のクライアント代弁者とのコミュニケーションにおける特権の保護を一貫的に拒否していた事実を認知し、特権に関する分析を開始。Id. at *6. (引用は省く)。
しかし、裁判所は“特許代理人特有の任務”である法実務を含む活動を行う権限と“特許訴訟における現状”が特許代理人によるコミュニケーションをその他非弁護士代理人のコミュニケーションから区別されており、新たな非弁護士代理人の特権制定に有利となった。Id。
(“従って、ある限度において、従来の弁護士・クライアントの特権は、特許遂行に関するクライアントと自身の法専門家間の公平無私の必要性に基づいて正当化され、またその判断は特許代理人に平等に適用される。”)(Id. at *7.)
Queen’s University事件の裁判所はSperry事件の裁判所による特許局創設背景にある立法経緯の検証に関心を向け、議会が “議会によって特許代理人に与えられた権利と同一の特許代理人特権を認知せざるを得ない理由と経験を持って特許局下において法実務への携わる”という特許代理人の権利を与えた。Id. at *9。
裁判所はまた、特許代理人特権はクライアントによる特許申請書の準備及び遂行に関わるコミュニケーションの特権は保持されるという妥当な推定を保つに必要であると説明。“そうしたコミュニケーションが直接弁護士に、あるいはクライアントの法的に同等とされる特許代理人に向けられていたかどうかは重要でない。”Id。
潜在的な落とし穴-特権の範囲について
新たに制定された特許代理人特権範囲の断定は将来の訴訟における主題となるだろう。どのコミュニケーションが特権内にあるか判断する負担は“特権を主張する側に向けられている。” Id. at *11。この特権範囲の断定を試みるにあたって、連邦巡回裁判所はUSPTO下における特許代理人の実務遂行能力を明らかにする規則を見直した。Id。
特に、37 C.F.R. § 11.5(b)(1)は USPTO下における実務として:特許申請書の準備及び遂行、USPTO下における特許書類またはその他資料の申請におけるコンサルティングまたはアドバイス、(陳述または法的要求を含む)特許申請書の起草及び改正、更にUSPTOに関する特許申請または関連書類の照会が含まれている。連邦巡回裁判所によれば、条項11.5(b)(1)に明記のタスク推進として挙げられるクライアント及び非弁護士特許代理人間のコミュニケーションは保護されている。Id。また同様に保護されている“合理的にひつようであり、特許申請書の準備及び遂行または 実行者に参加権限のある特許申請または特許に関わるその他当局での手続きに付属する”コミュニケーションも保護対象となる。[引用は省く]. Id. at *12。
しかし、C.F.R. § 11.5(b)(1) に記載されていないタスクは“合理的に不必要であり、特許局下における特許遂行に付属する為、特許代理人特権の範囲外となる。”Id。従って、第三者特許の日侵害などの訴訟事件における特許代理人・クライアント間のコミュニケーションは特許代理人特権の範囲に収まらない。
同じく、ライセンシング及びその他に関連する特許代理人によるコミュニケーション同様の取引は新たに制定された特権の範囲に含まれない。
Queen’s University事件では新たに制定された特権は難解で不確かであると異議を唱えている。例えば、大多数によれば、または特許の売買あるいは侵害の関連性を期待して他方の特許の効力に対する見解を述べる特許代理人とのコミュニケーションには特権は与えらえない。Id. at *16
しかし、連邦巡回裁判所はまた、特定の状況において該当のコミュニケーションは特許代理人の実務範囲内に含まれるとし、特許代理人の意見を求めるクライアントの意図に従って間違いなく特権を与えられるものとなる。Id。
また、先述の異議申し立てでは特許申請の保留中に譲渡用の契約書を起草する等のグレーゾーンについても言及しており、状況によってはそのような行為が(特権内での)特許代理人の認可業務となるかは特許代理人が実務を行う州の法律に一存するのである。Id. at *17。
更に特許代理人特権の範囲に関してクライアントに助言する行為はUSPTO下において特許代理人に認可された範囲内に含まれず、従って新たな特許代理人特権の適用を断定する為、クライアントは弁護士を雇う必要性が生じる。Id。
要するに、クライアントは特許代理人特権が提供する保護に幾らかの安堵を覚えるだろうが、この特権は絶対的ではない。特許代理人がUSPTO下において認可された実務に関連するコミュニケーションのみが特権範囲内となる。訴訟事案を含むその他コミュニケーションは開示可能のままである。
2) 反トラスト訴訟についての更新
司法省反トラスト局年次更新。2016年4月8日、米国司法省反トラスト局が2016年度春期更新を発行。この更新では最近の法執行における展開や傾向を強調しており、当局が訴訟及び審理等を通じてより活動的な執行方法に臨む様子が見られる。
法執行の統計
当局は法執行の統計を公表している。2015年の会計年度に60件の刑事事件を登録し、個人66名及び企業20社を刑事告発し、刑事罰・罰金合わせて36億ドルを得た。この統計によると刑事事件では33%の増加、そして個人の刑事告発では前会計年度と比較し50%の増加を反映している。また、刑事罰・罰金の総額も新記録である。この取締り活動の増加は2015年9月9日にSally Yates副司法長官による定款に従って個人に焦点を当てた執行増加と平行している。
審理活動。
当局は Apple社の電子書籍の増価格を狙って大手出版社の内5社の不当な陰謀の組織化に対する訴訟における良い成果を強調した。2015年6月に第二巡回裁判所はApple社に対する当局の審理勝訴を支持し、2016年3月には最高裁がApple社の裁量上訴を却下。Apple社による請願の却下は司法長官及び民間の原告との和解下における消費者に対する4億ドルの支払い義務を生じさせる引き金となった。出版社は審理前に1.66億ドルでの和解を選択したが、Apple社は単独で続行した。この結果は当局の審理及び上訴を通じた執行活動を快く遂行する技量を証明している。
また、当局は General Electric社及びElectrolux社の電気製品事業合併を防ぐ審理を通じた成果も強調。2015年7月、当局は合併阻止の訴訟を起こし、審理開始4週間後、証拠提供終了1日前の2015年12月にGeneral Electric社は合併放棄及び解約金1.75億ドルの支払いに同意した。この勝訴は当局によるComcast社及びTime Warner社、Applied Materials社及びTokyo Electron社、そしてChicken of the Sea及びBumble Bee社含むその他重要な合併を阻止する成果につながった。
訴訟活動について。
当局はその他の成功訴訟案件についても明記している。2016年3月16日、Los Angeles Timesの出版元であるTribune Publishing社が破産裁判所による競売でOrange County Register及びRiverside Press-Enterpriseの出版元であるFreedom Communications社を落札した。この取引は3月21日付で破産裁判所により承認される予定だった。3月17日に当局は告訴し、詳細概要付きの翌日保全申立て(“ TRO”)要求を通じて買収を阻止。要求は当日夜に授与された。3月19日、Freedom Communications社は代わりの購入者を推薦し、3月21日に破産裁判所は当該新購入者に売却を許可した。この結果はTRO遂行を目的とした当局による素早い資料の結集・整理能力を証明している。加えて2015年11月15日に当局はUnited Airline社のNewark Liberty国際空港でのDelta Air Line社が保有する24箇所の離着陸場所の取得を阻止する告訴を申立てた。訴訟から数ヶ月後の2016年4月、United Airlines社は取得を放棄した。
カルテルの取締り。
当局は世界中の国際機関と協力し、カルテルの取締り活動を遂行してきた。2015年、当局は海上輸送業界における非合法な入札談合や価格操作疑惑に関する操作を継続。その過程で個人7名及び企業3社を刑事告発し、罰金1.36億ドルを徴収した。オーストラリア、ブラジル、スイス、英国を含む10以上もの合意管轄下の執行機関と提携し、当局は外国為替換算スポット市場の操作を対象とした非合法な共同行為に関する操作を継続。大手金融機関の内4社が親会社レベルでの重罪な価格操作における有罪答弁、及びシャーマン法違反に該当する3つの高額罰金約25億ドルの支払いに同意した。
終わりに。
2016年度春季更新で明記されているように、当局は自身に対する訴訟及び審理に繋がる結果となったより活動的な取締りを継続してきた。この手法は捜査や国際・国内執行機関の活動の増加をももたらしている。また、当局の捜査を追って私的原告が集団・直接訴訟を起こす結果にも繋がり、当局が遂行する救済手段の更なる請求の提供が予想される。
この活動的な取締りは潜在的な反トラスト違反時において訴訟・審理、及び捜査の経験がある顧問の確保における必要性を断定させる。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com