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クラスアクション:なぜ日本企業は有利なのか (17/01/20)
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
米国市場において、ビジネスを展開しているとクラスアクション(集団訴訟)に巻き込まれることがある。クラスアクションの対象は多岐にわたり、医薬品、機械部品、デバイス機器等多くの製品がその対象となる。また、製品の欠陥から虚偽、誇大広告表示等様々なテーマが問題とされている。ここ数年、日本企業が訴えられるケースも目立ったことから他人事ではないと気を引き締めている企業も多いだろう。訴訟を起こされることをむやみに恐れないために、次のポイントを把握して欲しい。
クラスアクションの大きなのポイントは「被害者の一部が全体を代表して訴訟を起こす」という点。日本の集団訴訟とは考え方が異なる。被害者の立場に置かれている消費者は「訴訟に参加しない」と意思表示をしない限り、自動的に訴訟に加わる。また、クラスアクションは、裁判所から「クラスの認定」受ける必要があることから、この段階で被告側が原告を「クラス」と呼ぶに値しないと立証できれば、クラスアクションを回避することも出来る。
「クラスの認定」は、主に次の4つのポイントで判定されている。
(1)そのクラスの構成員が十分に多数であるか(多数性)
(2)クラスの構成員が共通の争点を有しているか(共通性)
(3)クラスの代表者が、そのクラスにとって典型的な請求をしているか(典型性)
(4)クラスの代表者が適切にクラスを代表できているか(適切性)
この段階で、クラスアクションに詳しい弁護士が、「該当商品の使用方法」「原告それぞれの経験」「原告ごとのクレームの内容」などを綿密に調査すれば、「クラス」に該当しないことを立証することは可能だ。 重要なのは、クラスアクションが提起されたら、問題を社内で抱え込まず、専門性のある弁護士にできるだけ早く相談すること。しかるべき対処をとれば、クラスアクションを未然に防ぐこともできる。
また、クラスアクションは、被告である日本企業にとって有利な側面もある。
「言葉の壁」を逆手に取ることだ。
たとえば、日本企業の製品の欠陥についてクラスアクションを提起した場合、証拠開示手続きにより、日本企業が提出する証拠の多くは「日本語」で書かれたものになると推測される。
証拠の内容を把握するために、英語への翻訳が必要となれば、翻訳費用は膨大なものになる。
さらに、証言録取においては、日本企業が被告となれば、在日米国大使館にて執り行うことができるため、米国ではなく、日本で行うことになれば、渡航費用の負担も大きくなる。この状況を逆手にとって、証人を減らす交渉もできる。
この報告を読みながら、時差ぼけで重要な司法プロセスに挑む相手側弁護団を想像してみてほしい。これらは事務的な問題で、ささいな問題のように思われるかもしれないが、原告にとっては戦う意欲を萎えさせる一因となる可能性がある。しかるべき対応をすれば、無用なクラスアクションを回避することはできる。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com