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反トラスト及び競争法
司法省がリニエンシー制度に関する「FAQ」の見直しを実施 (17/07/27)
司法省(DOJ)は反トラスト局リニエンシー制度に関するよくある質問への回答を見直した。米国司法省のリニエンシー制度は企業や個人が反トラスト局の捜査に対し自己申告や協力を行うことで刑事上の有罪判決や罰金、実刑を免れる機会を与える制度である。
2008年に発行された”反トラスト局リニエンシー制度及びリニエンシー文案に関するよくある質問”(“FAQs”)では、リニエンシーの申請や企業及び個人制度の両方におけるリニエンシーの基準、条件付き及び無条件のリニエンシー文書、最終リニエンシー文書、そして機密性を含む幾つかの重要なアプローチについて説明していたが、本年1月にそれらFAQsを見直し、最新情報を発行した。
リニエンシー制度及びリニエンシー文案に関するよくある質問(2017年1月26日)
https://www.justice.gov/atr/page/file/926521/download
最新のFAQsはリニエンシー制度に関する局の手法における重要な変更を注記しており、申請者は自身の参加により受け取ることのできる免除について学ぶことができる。
非・反トラスト犯罪について
非・反トラスト犯罪に関する制度の注目すべき適用性についてもFAQs内で説明されている。これら基準は企業及び個人のリニエンシー共に適用される。
どちらのFAQsでもリニエンシー制度は反トラスト局のみを拘束しているが、最新のFAQsでは異なる基準について述べられている。
2008年にFAQsは:“条件付きリニエンシーの許諾は大抵条件付きリニエンシー文書の日付前に行われた反トラスト犯罪行為に関連して行われた申請者による活動を保護するものとなる”と提言している。2008 FAQs at 13 (強調追加)
反面、最新のFAQsでは:“条件付きリニエンシーの許諾は大抵条件付きリニエンシー文書の日付前に行われた反トラスト犯罪行為を推進するために行われた申請者による活動を保護するものとなる”と提言している。2017 FAQs at 13 (強調追加)
別の対象として、2008年のFAQsは局によるリニエンシーの許諾は“反トラスト犯罪行為のみならず、反トラスト法違反に関連するその他の犯罪に対しても”なされると記述している。 2008 FAQs at 7 (強調追加)
最新のFAQでは基準が高められている:“反トラスト局は反トラスト法違反や該当する違反や行為に不可欠である犯罪を報告したリニエンシーの資格を持つ申請者の不起訴を誓約しています。” 2017 FAQs at 7 (強調追加).
これら変更は保護された活動のより狭い領域を記述しており、申請者が制度を通じて非・反トラスト犯罪を開示する際のリスクの可能性を示唆している。
その他機関による執行に関して、両FAQs共に多少の再保証を提供している。2008年のFAQsでは“現在まで…異なる起訴機関がリニエンシー申請者による[反トラスト法違反に一般的に不可欠である行為]の起訴に選出された例はない”と述べている。 2008 FAQs at 7.
最新のFAQsでは“反トラスト局の経験上、その他起訴機関が異なる犯罪法を用いてリニエンシーを回避する手法をとることはない”としている。2017 FAQs at 7.
しかし、新しいFAQsでは更に“申請者は非・反トラスト犯罪の責任義務を免れるためにリニエンシー制度を使用できると期待すべきではない”と警告している。Id.
協力活動について
最新FAQsでは捜査における全面協力を強調している。
2017年の最新版では捜査対象にある企業は捜査への全面協力に失敗あるいはいかなる場合でも協力を停止した場合、リニエンシー文書の範囲から除外され得る事態についてより詳細が綴られている。2017 FAQs at 20.
2017年のFAQでは更に企業がタイプBリニエンシーに申請している個人の免責を判断する当局の裁量についてより強固な主張が含まれており、企業が特定の条件を満たしている場合、当局がその企業の違法な反トラスト行為に関する情報を受け取った後でも与えられる可能性がある。
最新版では“当局はタイプBリニエンシー申請者の職員に関してより大きな裁量を持っている”と強調した。Id.
2008年のFAQsでは“実際には…当局はタイプA申請者同様、タイプB申請者の資格を有する現被雇用者にもリニエンシーを提供している。” 2008 FAQs at 20.
新しいFAQsでは当局が“度々タイプBリニエンシー申請者の現管理者、役員、そして被雇用者を保護下に含めることがある”のみに留め、特に当局が“非常に過失性の高い”とする管理者、役員、及び被雇用者を除外する可能性を注記している。2017 FAQs at 20–21.
2017年のFAQsは更に保護の範囲内に企業代表者を含めることに対し厳しい手段を取っている:“前管理者、役員、及び非公用車は企業リニエンシーのいかなる許諾からも除外されると仮定する。” 2017 FAQs at 22.
2008年のFAQsは当局が“度々、前代表者へのリニエンシー許諾の合意に至る”と記述しているが、2008 FAQs at 18、最新のFAQsでは“そのような保護は特定の前管理者、役員、及び被雇用者が十分で非累積的な協力を提供した場合…または彼らの協力がリニエンシー申請者による条件付きリニエンシーの条件を満たすに値する反トラスト犯罪行為の自供につなげるために必要である場合にのみ提供される”2017 FAQs at 22.
幾つかの変更は申請候補者を躊躇させる可能性もあるが、2017年のFAQs及び当局の活動は申請者の全面協力に見合う数々のインセンティブを用意している。
008年の”アムネスティ・プラス”制度は現行捜査における対象が別の反トラスト共謀への関与の報告を推奨する“リニエンシープラス”として知られている。2017 FAQs at 9; 2008 FAQs at 8.
この制度下における協力の信用は両FAQsともに同様に計算される。2017 FAQs at 10; 2008 FAQs at 9.
最新のFAQsは“ペナルティ・プラス”という反トラスト違反において企業が有罪を認めたものの、自身が関与した追加の反トラスト犯罪の報告を怠るなどといった状況を管理する制度に関する現在の手法について新たな質問を提示、説明している。2017 FAQs at 11.
ペナルティ・プラス下では別の反トラスト共謀の関与を報告しなかった企業がリニエンシー・プラス下における免除見送りのみならず、追加犯罪に関するより厳しい制裁が与えられることとなる。
終わりに
全ての企業はリニエンシー制度や2017年FAQs、及び当局の活動についてしっかりと把握するように努めることを勧める。2017年の変更は、企業や個人が、改訂前に予定していたものとは異なる判断を下す必要性が生じる可能性がある。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com