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特許訴訟アップデート (17/10/20)
Oil States事件のリスクはどのようなものか?最高裁判所が特許庁におけるIPR手続の憲法適合性を検証するため裁量上告を受理。
この期間、最高裁判所は、Oil States Energy Services LLC対Greene’s Energy Group, LLC事件における、当事者系レビュー(IPR)の合憲性への挑戦を受けるだろう。Oil Statesは、2015年に連邦巡回控訴裁判所によって最後に拒絶された議論を復活させた。それは、特許有効性の行政機関による裁定は、陪審裁判についての憲法第3条と修正第7条の権利に違反しているとの議論である。MCM Portfolio, LLC v. Hewlett-Packard Co., 812 F.3d 1284 (Fed. Cir. 2015)参照。
2011年に、米国特許改正法(AIA)の成立に伴って創設されたIPR制度は、「費用がかかり、長引くことが多い、地方裁判所における訴訟に対する、効果的で効率的な代案」としての行政審査手続を創設する議会の努力の中でも、最も最近のものである。H.R. Rep. No. 112–98, 2011 U.S.C.C.A.N. 67, 75, at 45。IPRは、当事者、特に特許侵害者であると疑われた当事者が、特許商標庁(PTO)に対して、先行技術または明白性により予見されていた、との理由で、特許を取り消すよう申し立てることを許容する。35 U.S.C. § 311(b)。訴訟を提起すると思われる当事者は、すぐにこの新しい選択肢を利用し、2016年までには、特許庁審判部(PATB)が、テキサス州東部地区地方裁判所における、いわゆる「ロケットドケット」すらも凌駕して、全国で最も人気のある特許審査の裁判籍となった。2016 Annual Patent Disputes Report, Unified Patents, https://www.unifiedpatents.com/news/2016/12/28/2016-annual-patent-dispute-report
しかし、IPR申立てが、第三者たる挑戦者に好まれると判明した一方、Oil Statesを含む特許所有者は、「陪審の手から特許侵害訴訟を取り上げ、それを官僚に委ねるものである」と主張し、当該手続を顕著に嫌っている。Oil States’ Cert Petition at 13。特許権者は唯一の批判者ではない。著名な声明では、元連邦巡回控訴裁判所裁判長のRandall R. Rader は、AIA手続を「死刑囚、財産権を殺す」と述べている。“Rader Regrets CLS Bank Impasse, Comments on Latest Patent Reform Bill,” Bloomberg BNA, October 29, 2013, https://www.bna.com/rader-regrets-cls-n17179879684/
2016年12月現在、IPR手続においては、1000件以上の特許が「殺されて」いる。“Patent Trial and Appeal Board Statistics 12/31/2016,” United States Patent and Trademark Office, https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/2016-2-29%20PTAB.pdf
しかし、Rader判事はその特許取消判断を超法規的なものとみなすかもしれないが、彼の同僚は、特許が特許所有者に対して、憲法第3条に定める裁判所における陪審審理への参加を保証される資格を与えている、という議論に対しては懐疑的である。一方的再審査やIPRなどの行政審査への複数の挑戦に直面し、連邦巡回控訴裁判所は、特許紛争が私的当事者間で起こる一方、特許自体は複雑な規制体系に従ってそれらを管理する責任主体によって審査され、消滅する可能性のある公的権利である、と明確に判断した。言い換えれば、PTOが与え、PTOが奪うものである。最高裁判所は、2015年のMCM Portfolio事件判決(連邦巡回控訴裁判所がIPR手続を合憲であるとして支持した)の見直しを棄却した後、特許権者に対し、彼らの排除権を守る憲法第3条の裁判管轄を保証する可能性を、新たな希望として与えた。しかし、最高裁判所によるIPR手続を違憲とする判決は、地方裁判所における特許訴訟の潜在的な門を開くだろうか。結局のところ、特許訴訟は、過去2年間で減少している。2015年の棄却判決後、地方裁判所に提起された特許訴訟の件数は、2015年の5823件から、2016年の4520件へと、大幅に減少した。“2016 Fourth Quarter Litigation Update,” Lex Machina, January 12, 2017, https://lexmachina.com/q4-litigation-update/。外見上、一部の特許紛争は、IPR審査のための特許庁審判部へと提訴先が変更されている。IPRは、伝統的な特許訴訟に取って代わるものではないものの、申立件数は、過去2年間それぞれにおいて1600件以上にものぼり、裁判所に大きな影響を与えている。AIA Trial Statistics, United States Patent and Trademark Office, https://www.uspto.gov/patents-application-process/appealing-patent-decisions/statistics/aia-trial-statistics
これはもちろん、挑戦者が、司法手続を通じて彼らの請求を追求することを前提にしている。しかし、挑戦者は、訴訟費用や、憲法第3条の当事者適格要件を含む、地方裁判所におけるより高い障壁に直面し、これらは、実際に彼らの請求を追求することを妨げる可能性がある。IPRによって特許を無効とされた元の特許権者も、遡及適用措置の問題を提起し、審理を再開するよう裁判所に対して申立てを開始する可能性がある。最後に、Oil Statesに有利な判決は、特許庁審判部とその審理機関としての独立性の将来について、より広範な問題を提起する。最高裁判所が連邦巡回控訴裁判所の判断を覆した場合、この事件は、特許訴訟の新時代を導く可能性が高い。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com