お客様にとってもっとも関心のある知財や独禁法・金融・労使関係などの最新の話題をお届けします。
御社の法務・経営戦略にお役立てください。
-
ドローンはレクリエーション及び商業的使用の両方において益々人気が出てきている (19/01/24)
ここ数年において、小さな無人航空機(より一般的にはドローン)の使用及び売上の成長は著しい。改良された技術、低下したコスト及びその広汎性は、レクリエーションにおける売上げと同様に、数々の商業的及び工業的な使用可能性という面において、ドローンにブームを巻き起こした。アメリカだけでも、2016年には嗜好品としてのドローンが24万機も売れた。これは2015年の売上見積もりの11万機の倍以上の数字である。今日のアメリカにおけるドローンの数は何百万にも上り、2020年までに全世界のドローンのマーケットは110億機を超えると予測されている。予期されたブームは愛好家やレクリエーション目的の使用者だけにとどまらない。商業目的のドローンの売上げ(政府による使用を除く)は、2016年に売れた10万機程度と比べて、2021年までに80万機に届くと予想されている。ドローンは比較的お手頃に入手でき、移動が簡単で、一般的には安全に操作できるという、ドローンを巨大市場に導く要素が詰まっている。
しかしながら、何千もの小さな航空機があまり訓練されていない個人によって操縦され、アメリカの領空を昼夜問わず飛ぶことにはリスクも存在する。実際に、他人の財産に損害を与えた事故や、空中での衝突を含む空中交通への妨害も報告されている。2015年12月の連邦航空局の主任顧問によるレポートによると、「小さな、遠隔操作された航空機の不正使用や危険使用が伴う事故は飛躍的に増加している」とのことである。2017年9月には、無人のドローンがニューヨークの領海を飛行している軍のBlack Hawkヘリコプターに衝突した。翌月には、ドローンがカナダに着陸しようとする旅客機の羽に衝突した。これは北米における商業飛行とドローンの初めての衝突事例として知られている。両方の事故において、有人の航空機は安全に着陸し、傷害に関する報告はなされていない。驚くことに、ドローンの操縦者は特定されず、逮捕されず、いかなる罪にも問われていない。このような事故は、その後の法的課題や、数々の場面での使用においてドローンが有している潜在的な利益だけでなく、より重要なものとして、空中及び地上の双方において全ての個人の安全(及びプライバシー)を確保するという観点についても認識する規制スキームの必要性を強調している。
領空規制は伝統的に連邦政府の領域であったが、ドローンはその既存の規制スキームに対して課題を呈している
アメリカの立法者や規制者は、レクリエーション及び商業目的でのドローンの使用に関する昨今の急激な成長に追い付いていない。アメリカの航空規制は、無人の低空飛行機であるドローンよりも伝統的な有人の航空機を規制することを主眼としていた。そのため、既存の規制はドローン飛行とその操縦者に対して厳密に適用することができない。これはドローンの潜在的な問題を取り込もうと努める人々に対して課題を提起している。
アメリカにいるレクリエーション目的又は商業目的のドローン運営者は、従うことが必要とされる連邦規制と地域規制のパッチワークに直面しており、これらの規制は革新的な環境下で一貫して存続するために迅速に変化している。伝統的には、連邦政府はアメリカの領空に関して、1926年の航空通商法に基づき独占的な主権を持っていた。
「議会は、航空通商を規制する国家的な責任を認識している。連邦のコントロールは集中的で独占的である。飛行機は放浪する雲のように空を彷徨うことはない。それらは複雑な連邦命令システムの下で、連邦によって認可された担当者の手による、連邦の許可によってのみ動き、連邦の検査の対象となる。飛行機が滑走路を動く瞬間は複雑で詳細なコントロールシステムによって規制される。飛行機は管制塔からの指示によってのみ離陸し、定められた信号電波に従って飛行し、信号や命令に従うことになる。輸送に関連する限り、その特権、権利や保護は他の州政府ではなく連邦政府のみが責任を負っている。」最高裁は、アメリカの領空を「公共の幹線道路」と称し、伝統的なコモンローにおける地上の土地の所有権はかつて宇宙周辺まで垂直的に拡張されていたにもかかわらず、最高裁はそのような考えを否定した。裁判所は、伝統的なコモンローの原則は、航空旅行やその他の州際通商における日常生活の一部としての領空の使用を含む現代社会においては適用の余地がないと判断した。さらに、「それが真実でなければ、全ての大陸横断飛行は運営者にとって数えきれない不法侵入訴訟にさらすことになるだろう。一般常識がそのような考えを受け入れない。」
アメリカの航空規制の基本的な枠組みは20世紀の前半に確立された。それは立法者又は裁判官が、静かに低空飛行し、国中を縦横に飛ぶ無人航空機の到来を想像できるようになるよりだいぶ前のことである。Causby事件において最高裁は(人が自らの土地の上空のどの範囲まで所有できるかを検討したとき)、その決定において、航空機の騒音と光が空港の近くに位置する養鶏場にもたらす妨害のインパクトを大いに考慮した。裁判所は、「もし土地所有者がその土地の完全な恩恵を持つようであれば、彼はその周囲を取り囲む直近の空間について排他的な支配権を有しているはずである。そうでなければ、建物は立てられず、木も植えられないし、フェンスさえ設けることができなくなる。」と認定した。したがって、Causby氏の養鶏場のケースを検討するにあたって、最高裁は「土地の直近上空のエリアとは離れた空域は公有に属する部分である」と判断したが、一方で、土地所有者はその土地の直近の空間についてはある程度の範囲でコントロールすることができるとも判断した。この決定の結果として、連邦政府は歴史的に国の大部分の空域を州際通商の手段として取り扱った。そのような連邦によって規制された領空における全ての航空機の運営は、認証されかつ登録された航空機、ライセンスを有するパイロット、及び運営に関する承認を必要とした。これらの要件は最近まで、そのサイズやドローンの高度に関係なく、有人及び無人の航空機(ドローン)に等しく適用されていた。
ドローンは当然ながら伝統的な航空機とは全く異なる動きをする。つまり、比較的静かに飛行し、小さく、存在を知らない人たちにとっては地上からほとんど見ることができない。言い換えれば、ドローンは商業用の航空機がするのと同じような方法でCausby氏の養鶏場を妨害することはない。2012年2月に、オバマ大統領はこの新しいクラスの航空機(ドローン)を既存の法律に取り込むためにFAA Modernization and Reform Act(FAA Act)に署名した。この法律はドローン操縦者に対して他の航空機のパイロットとは異なる取り扱いを提供した。レクリエーション目的のドローン操縦者に関して、FAA Actの336条は「連邦航空局は、模型航空機又は模型飛行機として開発されている航空機に関するルールや規制については、その航空機が厳密に趣味またはレクリエーションでの使用のために飛行している限りは適用されない」と規定した。他方で、商業用のドローンの操縦者はFAA Actの下で複雑な公認要件が適用され、連邦航空局は何が「商業飛行」に該当するかについて大局的な見方をしていた。あるドローンの操縦者は、おそらく連邦航空局がFAA Actの下で制裁を課すためにその権限を行使しないだろうという仮定のもとに、単純にこれらの新しい要件を無視していたことは知られている。この戦略は確かに多くの操縦者にとって成功したが、中には適切な権限なしに60飛行以上を飛ばして、潜在的に190万ドルの罰金に科された(最終的には20万ドルで解決されたが)航空写真業者のように、FAA Actの規制に巻き込まれる者もいた。
2016年8月、連邦航空局は小型ドローンの商業的使用に関連する追加の規制を公布した。これらの規制は「離陸時に、搭載又はその他航空機に添付された全ての物を含め、55パウンド以下の重量の無人航空機」に適用される。規制の107条は、2012年のFAA Actにおいて定められた以前のものより複雑ではないドローンの商業的使用に関する枠組みを提供している。107条において、商業目的でドローンを操縦する権限を与えられた「遠隔パイロット」として知られる新しいタイプの「パイロット」が設定され、そのパイロットは連邦航空局によって義務付けられた認証要件をクリアしなければならない。認証された遠隔パイロットは、例えば時間帯、通視線、及び気候条件など107条によって規定された要件に従って商業目的でドローンを操縦することが許されている。重要なのは、107条は連邦航空局に対して、これらの要件のいくつかについて連邦航空局に対する申請に応じて、放棄の権限を与えていることである。そのような放棄を取得した後は、遠隔パイロットは、例えば夜にドローンを飛ばしたり、自分の視線が及び範囲を超えて飛行させたりすることができるようになる。現在までに連邦航空局は、これら107条の放棄について2000件の申請を認可している。
注目すべきことに、2016年の連邦航空局規制は、商業目的及びレクリエーション目的のドローン使用者に対して、ドローンの全国的な登録を要求していた。連邦航空局は、連邦政府が無人航空機に関する登録及び規制に関して独占的な権限を有するという自らの見解を明確に述べた。「州又は地元のUAS登録法は、UASの所有者又は操縦者に対して、連邦UASの登録要件に従うことから解放してはならない。連邦の登録制度は、航行可能な領空において航空機を操縦することを目的とした、UASを登録するための独占的な方法であるから、州又は地元政府は、航行可能な領空におけるUASの運営に関して、連邦航空局の事前の許可を得ることなしに、追加の登録要件を課してはならない。」連邦裁判所はのちに登録要件を無効と宣言したが、2018年の国防授権法によってそれは復活した。法律は現在有効であるため、全てのドローンは連邦航空局に登録されなければならない。
ドローンに関する連邦法が登場しつづけており、ある立法者はドローンの利益よりもドローンの潜在的な危険性に注目しているようである。今年の6月に、国土安全保障省が無人航空機による新たな脅威を防止することをサポートするために、「Preventing Emerging Threats Act」が上院で紹介された。この法案がもし通れば、それは国土安全保障省(DHS)及び司法省(DOJ)に、様々な手段を用いたドローンの監視、及び「無人航空システム又は無人航空機を、事前の同意なしに、通信傍受やそれらをコントロールするために使われる有線通信、口頭通信又は電気通信その他にアクセスすることによって発見、特定、監視及び追跡する」権限を与えることになる。DHSとDOJはまた、いかなる無人航空機について差押え、没収又はその他のコントロールを及ぼすことができる。DHSの部長代理によれば、この法案はドローンによる安全に対する脅威の認識に基づいている。「一般的に、UAS関連の脅威の例には、重要なインフラの近くでの無謀な飛行、意図的な監視や法執行の監視に対するカウンター、禁制品の密輸、又は静的もしくは動的及び重要性の高いターゲットに対する攻撃を促進することを含んでいる。我々は既に伝統的な犯罪者が国境を越えて薬物を動かすためにUAS技術を取り入れていることを目の当たりにしている。海外のテロリスト集団は戦場での攻撃を行うためにドローンを使ったり、その他の場所でテロ行為を行うためにドローンを使用することを企てている。これは我々が現在対応する準備のできていない、とても深刻な差し迫った脅威である。」
これとは対照的に、連邦政府のその他の者は、ドローンの規制は州及び地元政府に任せるべきだと考えている。この見解は、「無人航空機に関する州、地元及び部族の権限と私的な所有権を保護するために」上院議員であるFeinstein, Lee, Cotton及びBlumenthalによって紹介された2017年の「Drone Federalism Act」によって反映されている。この法案は、地元政府に対して土地の上空200フィート以内におけるドローンの活動を規制する権限を与えており、それよりも高い高度における規制権限は連邦航空局が依然として保持することになる。既存の法律の下でさえ、連邦航空局の主任顧問は、地元政府のドローン規制は、その法律が土地使用、地区制、プライバシー、土地侵入及び法執行の運営を含む伝統的な州及び地元の警察権に関連している領域をカバーしている範囲内で、連邦の専制を避けることができると指摘している。例えば、火器又はその他の武器をドローンに付けることを禁止する地元の法律は連邦の専占の範囲外になることになる。多数の連邦法を現在考慮しなければならないことからすると(その全てが必ずしも一貫しているわけではない)、ドローン運営者は自らが従うべき正確な連邦法について明快に把握しているわけではないだろう。
州及び地元政府はまた全国の法律のパッチワークを作ることでドローン規制に踏み込んでいる
これまでの連邦政府のドローン規制は連邦の領空に侵入したドローンに関する安全性の懸念に焦点を当てていたが、州及び地元政府は今は私的な争い、特にドローンが及ぼす個人のプライバシーに対する脅威に関連した紛争にまで踏み込もうとしている。ほとんどのドローンは、私的な土地にいる個人又は自分が記録されていることに完全に気付いていない個人について、高解像度のビデオを記録する機能を持つカメラを搭載している。既製品のドローンを購入した人は、隣人の庭の上でそれを簡単に低空飛行させたり、高層ビルの窓を透かして見ることができる。主としてそのようなプライバシーの懸念に対応するために、少なくとも41の州が、個人をプライバシー侵害から守るために、無人ドローンの操作や飛行について規制する法律を制定している。
ロサンゼルスやシカゴのいくつかの主要都市は、それぞれ独自の法律を実施している。それらの法律の過半数は個人の同意や認識なしにドローンで撮影することに対して民事罰を課している。
例えば、フロリダ州は、プライバシーに対する合理的な期待が存在する場合に、事前の同意なしに、ドローンを使用して私的領域にいる他人の画像をとった者を訴えることを可能にする法律を制定した。この法律の下では、「立ち入ることが法的に許されている場所にいる個人によって識別できない場合は、ドローンを使用して空から識別できるか否かを問わず、その個人は自ら私的に所有する不動産についてプライバシーの合理的期待を持つと推定される。」カリフォルニア州の法律は、「私的、個人的又は家族行事に従事している他人の画像、録音、又はその他の物理的な痕跡を取得するために、個人が他人の同意なしに意図的に他人の土地に侵入若しくはその土地の上空に侵入し、又はその他の不法な土地侵入を犯し、その侵入が合理的な人間にとって不快な方法でなされた」ときに起こる「プライバシーの侵害」を禁止している。2015年10月に施工されたネバダ州の法律は、「この州において不動産を自ら所有し又は適法に占有する者は、特定の列挙された状況下において、その土地の250フィート以下の高度で飛行する無人航空機の所有者又は操縦者に対して、土地の不法侵入を根拠に訴えることができる。」と規定している。
これらの新しい州及び地元の法律は、伝統的な不法行為法がドローンやそのプライバシー権侵害の潜在的な可能性に対して必ずしも適切に対応しているわけではないことから必要とされている。アメリカのどの管轄も土地侵入に関する不法行為を規定しており、それは「人が意図的に、(a)他人が占有する土地に自ら侵入若しくは物や第三者をして侵入させる、(b)土地に居座る、(c)除去義務を負う物を土地から除去することを怠る」場合に問題となる。しかし、航空機、特にドローンが絡むときは、ドローンは他人の土地に触れるわけではなく、土地の直近の上空を飛行することから、土地侵入の問題が曖昧になる。妨害の不法行為は、土地侵入だけでなく、他人の土地使用を妨げるいかなる行為も含んでいる。妨害に関する請求は、被告が隣接する土地に直接のインパクトを与える何かをしたとき、例えば、悪臭、騒音、振動を作り出したりしたときにしばしば問題となる。一方で、ドローンは飛行することができ、居住者がドローンが近くにあることを知らないときでさえ、土地にいる人々を潜在的に記録することができる。これを踏まえると妨害に基づく請求は、近くに存在するドローンに対しては適していないかもしれない。
ドローン運営者において前進を期待できること
ドローン規制の正確な外形つくりは、連邦政府が少しずつ動き、州及び地元政府がギャップを埋める形で、現在進められている。この規制の曖昧さは、領空規制がこの新しい技術に対応するように修正されるまで少なくともあと数年は続くだろう。究極的には連邦規制が地元のドローン規制に優先することになる可能性は高い。連邦裁判所は既にアメリカ政府の規制を犯す州法を無効にすることを始めている。2016年に、マサチューセッツ州のニュートン市は、とりわけ全てのドローン所有者に対してそのドローンを市に登録することを要求する法律を制定した。この法令は、連邦航空局認定の無人航空機のパイロットで、ニュートン市において多くのドローンを所有し運営していたニュートン市民によって、その有効性が争われた。彼は、ニュートン市のこの法令は連邦法によって独占的に規制される飛行分野について規制しようとしていることから、連邦法によって排除されると主張した。連邦地裁はこれに同意し、「この法律は、連邦航空局が既に制定している法律の範囲を超えて、ドローンを操縦する方法を制限している。連邦航空局による注意深い航空機安全に関する規制を妨害することは許されない。」という判断を示した。ドローン操縦者にとっては、連邦規制者による進歩のペースが苛立たしいほど遅いかもしれないが、首尾一貫した規制スキームの構築を進めることの利益は、様々な州や地元に主導権をとらせ、それにより州際通商の運営者にとって遵守することが厄介な変動的で一貫しないルールが作られることのリスクを上回ることになるだろう。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com