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クラス仲裁で要求される明示的な同意 (19/09/10)
Express Consent Required for Class Arbitration
クラス仲裁で要求される明示的な同意
最近の最高裁決定はほとんどにおいて―クラス仲裁手続の終焉の兆しを見せている。Lamps Plus, Inc. v. Varela, 139 S. Ct. 1407 (2019)において、最高裁判所は、クラスワイド仲裁は仲裁合意が明示的にこれを認めている場合にのみ強制されうると判示した。同上at 1419。この判例は過去10年にわたり単独仲裁を好んできた一連の最高裁決定を支持するものである。Epic Sys. Corp. v. Lewis, 138 S. Ct. 1612 (2018) (全国労働関係法(NLRA)との抵触にかかわらずクラス仲裁の権利放棄を有効と認めた);Am. Exp. Co. v. Italian Colors Rest., 570 U.S. 228 (2013)(いずれかの当事者に課したコストに関係なくクラス仲裁の権利放棄を有効と認めた);AT&T Mobility LLC v. Concepcion, 563 U.S. 333 (2011)(連邦仲裁法(FAA)がクラス仲裁を禁止している州法に専占すると判示した);Stolt-Nielsen S.A. v. AnimalFeeds Int’l Corp., 559 U.S. 662 (2010)(仲裁合意で言及していない以上はクラスワイド仲裁を強制できないと判示した)を参照。5対4で決定したRoberts裁判長によって書かれた判決では、裁判所は仲裁が「厳格な同意の事柄」であることを明らかにした。Lamps Plus, 139 S. Ct. at 1415。
Background and Procedural History.
背景と手続の歴史
2016年、Lamps Plusはハッキング被害にあった。同上 at 1407。Lamps Plusは1300の会社従業員の税に関する情報を誤って開示してしまったのである。同上。従業員Frank Varelaの名前で不正な税の還付が申請された後、彼は開示された当該情報の保有者である従業員を代表して、Lamps Plusに対する推定的なクラスアクションを連邦地方裁判所に申し立てた。同上。Lamps Plusは、従業員との仲裁合意によれば、請求の棄却と単独仲裁の強制を求めた。同上。裁判所は請求を棄却したが、Valeraにクラス仲裁を遂行する資格を認めた。同上。
控訴においてLamps Plusは、地方裁判所がクラス仲裁を強制したのは誤判であると主張したが、第9巡回区控訴裁判所は原判決を維持した。同上。第9巡回区控訴裁判所は、当該合意はクラス仲裁の問題について不明瞭であると結論付けた。同上 at 1413。裁判所はこの不明瞭さを、契約上の不明瞭な点は起草者(Lamps Plus)に不利に解釈されるという作成者不利の原則(contra proferentem doctrine)を適用することで解決した。同上。
The Supreme Court’s Reversal.
最高裁判所による取消し
最高裁判所は「(連邦仲裁法)と矛盾せずに、不明瞭な合意はクラス仲裁を強制するために必要な『契約上の基準』を与えることができるか否か」という問題に直面した。同上 at 1415。多数派は、それは「できない」と判示した。同上。
連邦仲裁法には基本法理がある―仲裁とは「強制でなく合意」の産物である。同上。仲裁人は与えられた権限のみを行使するので、連邦仲裁法上、同意は本質的なものである。つまり、仲裁人は法的手続を差し控え、紛争を私的紛争解決手段に付するという当事者とした合意によって自身の権限を基礎づけられている。同上。ここでの問題は、合意の不明瞭さを判断するために適用された連邦仲裁法の基本法理と作成者不利の原則の間の相互作用であった。同上 at 1415。連邦仲裁法のもとでは、州の契約法は仲裁合意の当事者の意思を解釈するために―連邦仲裁法に抵触しない程度に―適用される。同上 at 1415。しかしここで多数派は、合意への作成者不利の原則の適用は連邦仲裁法に専占すると判決した。最高裁判所は、第9巡回裁判所によって適用された作成者不利の原則は苦肉の策の法理であり、これは当事者の意思を判読することができないときにのみ使われる、と説明した。同上 at 1417。しかしもし当事者の意思が判読不能ならば、当事者はきっと連邦仲裁法の同意の基本法理を確認できないだろう―論理的障壁が法廷意見の核心なのである。最高裁判所は、第9巡回区控訴裁判所の判決が連邦仲裁法に整合した単独仲裁に「作り変える」ための努力であったことがわかった。同上 at 1418。
Roberts裁判長は「連邦仲裁法が予定しているクラス仲裁と単独型の仲裁の『本質的な』違いを認める」ことによって同意の重要性を強調した。同上 at 1416。クラス仲裁は、形式ばらない、コストが低い、効率性が高いという伝統的な利点を犠牲にしている。同上。それよりも、集合する過程は「取って代わることを予定された訴訟」に見える。同上。さらに、違憲審査が限定的であることに鑑みれば、「これはまた、欠席した原告のクラスメンバーの権利を判断することによって、適正手続の深刻な懸念を生じさせる」。同上。
Client Impact
クライアントへの影響
Lamps Plus事件は、企業側が勝訴した主要な判決である。裁判所の判断は瞬く間に反響し、たった1日後にはHerrington v. Waterstone Mortg. Corp., No. 11-CV-779-BBC, 2019 WL 1866314 (W.D. Wis. Apr. 25, 2019) 判決に影響した。この事案では、クラス仲裁の権利放棄が、当該合意に組み込まれたアメリカ仲裁協会(American Arbitration Association、”AAA”)規則―クラス仲裁を認めている―と抵触していることを理由に、1000万ドルの請求を認容したクラス仲裁判断が無効となった。同上 at *1。裁判所は、Lamps Plus判決はクラス仲裁が不当であることを確認しているから、仮に、抵触したからといってクラス仲裁が認められるか否かは不明瞭であるにとどまるとの結論に至ったとしても、当該仲裁判断は結局無効であるだろうと判決した。同上 at *5。
クラスワイド仲裁を避けたい企業は、それでもなお仲裁合意において明示的な権利放棄の条項を設けるべきである。しかしながら、Lamps Plus判決は動き出しの遅い雇用者及び権利放棄しなかったために昔の契約について訴訟を提起された人たちのためにさらなるクラス仲裁からの保護策を提供するだろう。現状では―クラス仲裁について規定しない、不明瞭である、明示的に放棄している、のいずれも、クラス仲裁に対する抗弁としては有効である。
企業は、裁判所が何を判断しなかったか、ということについても認識すべきである―「仲裁可能性」の問題である。Lamps Plus, 139 S. Ct. at 1417 n.4。仲裁合意の文言が正確でない場合は、クラスワイド仲裁の決定は裁判所でなく仲裁人に委ねられうる。仲裁合意によっては、仲裁人はクラス仲裁を認めることができる;裁判所は「たとえ良くとも、悪くとも、見苦しくとも」尊重しなければならないという判決である。Oxford Health Plans LLC v. Sutter, 569 U.S. 564, 573 (2013)
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
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