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2019年の米連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)の企業実施ポリシーの主要な改定とホスキンズ後の「エージェンシー」摘発の潜在性の査定 (20/03/24)
2016年に試験的なプログラムとして開始し、2017年11月の形式化以来、米国司法省の米連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)の企業実施ポリシー(通称「ポリシー」)は企業らにFCPA下での自身の犯罪摘発を軽減するインセンティブを提供した一方で、米国司法省の犯罪的違反行為の責任を負う個人を成功裏に起訴する能力を強化した。参照Law360.com米国司法省がFCPA協力インセンティブを始動(2016年4月5日)(Law360.com, Justice Dept. Launches FCPA Cooperation Initiative (Apr. 5, 2016).)それから2年間で米国司法省はポリシーへのいくつかの重要な変更を成文化した。2019年3月に米国司法省はポリシーを以下のようにして改定した。(1)一過性の会話と会話のプラットホームへの禁止を緩和する (2)潜在的摘発を軽減するポリシーに合併もしくは買収のプロセスにある会社らが頼ることができるとのはっきりとした保証を与え、M&Aに対しよりリラックスしてビジネスフレンドリーな姿勢を提供 (3)米国司法省は企業に対して衝突回避の目的で具体的な行動をとらないよう要請することができるにもかかわらず、米国司法省が会社の内部調査努力を肯定的に指導することはしないということを明確にしたことと、(4)会社の不正に「関与した」すべての従業員に関する情報を提出しなくてはならないという要件を、不正行為に「実質的な関与のあった」もしくは「責任のある」個人に関する情報を開示することでよいと要件を緩めた。クインエマニュエル法律事務所の備忘録、米司法省の腐敗防止FCPAの企業実施ポリシーのひっそりとした改定が企業調査へ重大な影響を及ぼしうるであろうこと。(2019年3月)参照そして2019年11月に米司法省はポリシーへのさらに2つの最新の改定を発表した (1)予備調査に基づく自身による開示を許可することと(2)完全な協力による利益を得るために企業は自らが保持していない関係のある証拠についてはその存在に「気が付いている」ものを米国司法省へと識別することだけが必要とされていることを明確にした。参照 JM §§ 9-47.120(3) (a), 9-47.120(3)(a),n1と3(b)、腐敗防止FCPA企業実施ポリシー(JM §§ 9-47.120(3) (a), 9-47.120(3)(a),n1, and 3(b), FCPA Corporate Enforcement Policy.)
しかし、政府は企業の担い手へも鼻先にニンジンをぶらさげているのを拡張しているのと同時に、雇い主への代理的な法的責任へと法律上の結果としてのしかかることになる行為である個人への執行を着実に著しく強化させた。 注目を浴びたアメリカVS ホスキンズ訴訟(U.S. v. Hoskins case)での米国司法省の最近の勝利では、政府が外国の幹部社員であっても法的責任の「エージェンシー」理論に例外はなく、個人への積極的な執行措置の連続の前兆となるということを示した。参照 アメリカVS ローレンス・ホスキンズ 訴訟No. 3:12-cr-238, Dkt. 538 (D. Conn., 2019年11月8日).(U.S. v. Lawrence Hoskins, Case No. 3:12-cr-238, Dkt. 538 (D. Conn., Nov. 8, 2019). I. )
Ⅰ ローレンス・ホスキンズ訴訟
2013年7月米国司法省はフランスの電力・通運会社アルストムS.A(通称「アルストム」)の元シニア・バイス・プレジデントであったローレンス・ホスキンズをFCPA(連邦海外腐敗行為防止法)違反、マネーロンダリングとその他多くのFCPAとマネーロンダリング違反疑惑による起訴を発表した。司法省、フランスの電力会社の元上級経営幹部が外国賄賂スキームに関して罪に問われた(2013年7月30日)起訴状によるとホスキンズは、アルストムの子会社であるコネチカット州アルストム電力会社(「アルストムCT」)とそのコンソーシアム・パートナーがインドネシアに発電所を作るために結ぼうとした1.18億ドルの契約(いわゆる「タラハン計画」)締結を手助けすることと引き換えにインドネシアの政府関係者らに賄賂を贈ろうとした陰謀に携わったとのこと。
上記に関して、ホスキンズはアメリカ市民ではなく、アメリカの会社に雇用されてもおらず、さらにどうやらアルストムで働いている間に一度もアメリカに足を踏み入れたことはないようだ。連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)の陰謀/共謀理論だけで訴訟を進行することは禁止されているものの(参照:アメリカVSホスキンズ, 902 F.3d 69, 97 (2018年第巡回裁判所))(United States v. Hoskins, 902 F.3d 69, 97 (2d Cir. 2018))、政府はそれにもかかわらず2019年にホスキンズを彼がアルストムCTのエージェントとして行動したという理屈で訴えた。そして彼が、組織の「どんな役人、取締役、従業員、エージェント」にもFCPAの発行人への禁止と国内の懸念は適用されるために刑事責任に問われうるとした。参照 15 U.S.C. §§ 78dd–1(a), 78dd–2(a); こちらもホスキンズ, 902 F.3d at 98(2018年第二巡回裁判所)(追加強調)( 15 U.S.C. §§ 78dd–1(a), 78dd–2(a); see also Hoskins, 902 F.3d at 98 (2d Cir. 2018)(emphasis added). 政府によると、ホスキンズと彼の共謀陰謀者らは、2人のコンサルタントを表向きはアルストムCTのためにタラハン計画に関連した合法なコンサルティングサービスを提供するために雇っておいたが、しかし実際はインドネシアの政府関係者らへの賄賂を隠すために彼らは使われていたという。参照 米国司法省、アルストムの元上級経営幹部が連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)違反、マネーロンダリングと陰謀の罪により裁判で有罪判決をうける。(2019年11月8日)さらに政府はホスキンズと彼の共謀加担者らは二人目のコンサルタントを政府官吏らを「より効率的に買収する」ために雇い、そしてアルストムCTとそのコンソーシアム・パートナーらがタラハン計画の締結を確保したその後に政府官吏らにコンサルタントを通じて支払いを行ったと 主張した。
Ⅱ ホスキンズ訴訟での「エージェンシー」理論の適用
アルストムCTのエージェントとしてホスキンズが行動したことを証明するために米国地方裁判所の判事のジャネット・アザートンは政府が以下のことを示すよう要求した。 (1)依頼人によるエージェントがそのために活動することの表明 (2) エージェントが依頼人のための「行為やサービス」である「仕事を引き受けること」を了承することと (3)それらの行為やサービスのは依頼人が抑制することの認識。さらに、アザートン裁判官は「当事者があるビジネス目的のためにエージェントであり、また別のもの目的ではそうでないことがある。」ということを明らかにしたうえで、このケースではエージェントであるか否かは「タラハン計画として知られている契約に関連する具体的な事象らと関係する」必要があるということを明確にした。
上記で述べた通り、ホスキンズの陪審員への繰り返された標語は、FCPAの目的でアメリカにおいてまったく意味のある接触をもたない彼の外国人として地位であった。その説明へと反論するために、エージェンシーを確証しようとして、政府はタラハン計画を担当していたアルストムCTの元上級経営幹部に一部頼り、そして政府によるとアルストムCTが事実、取引の「戦略とアプローチをコントロール」し「引き金をひいた」ということを彼が確証する手助けをしたという。政府はさらに元アルストムの幹部社員の証言にも頼った。幹部社員は、ホスキンズが申し立てられている行為を「彼のパリのオフィスとインドネシアの諸所のホテル」から行ったという事実にもかかわらず、コンサルタントたちへの支払いに関する諸条件にアルストムCTが同意しなかった場合、ホスキンズがアルストムCTの代わりにコンサルタントたちと再交渉する担当であったと陪審員に話した。たった一日超の審議を含む2週間の裁判の後、陪審員は判事アザートンの指示の下、ホスキンズがアルストムCTのエージェントとして行動したとの結論を下し、FCPA違反として6つの件において有罪とし、マネーロンダリング罪として3つの件で有罪、陰謀の罪で2件有罪とした。参照 アメリカVSローレンス・ホスキンズ 訴訟番号. 3:12-cr-238, Dkt. 538(D.コン 2019年11月8日)(U.S. v. Lawrence Hoskins, Case No. 3:12-cr-238, Dkt. 538 (D. Conn. Nov. 8, 2019).)
Ⅲ エージェンシー責任に関してホスキンズ訴訟が暗示しうること
ホスキンズ評決の後、FCPAの文脈における「エージェンシー」という言葉の潜在的に広範な定義への懸念が生じた。しかし、比較的迅速に米国司法省の刑事局の司法次官補のブライアン・ベンチコフスキーは連邦検事らはホスキンズ評決を「エージェント理論を認識不能なほどの拡大解釈をしたり、FCPA規則を外縁のほうへと押し出すことをも」する機会として見てはいないとした。参照 司法次官補のブライアン・ベンチコフスキー、米国カンファレンス協会のFCPAに関する第36回国際カンファレンス(2019年12月4日)しかし、ベンチコフスキーは企業構造を使って親会社を刑事的責任から守ろうとしたことや、上位の幹部社員を責任から保護しようとかくまうためにエージェントを用いたことの証拠を局が見つけた場合には局はその時には起訴をすることの強力な支持者であると忠告した。(同上)
ホスキンズ判決がどのように米国司法省がFCPAの執行措置をアメリカと最小限のかかわりしかもたない組織と関係する非アメリカ市民に対してももたらそうとする傾向にいかにして影響をもたらすかはまだまだ時間のたたないとわからないことであるが、その方向への否定できない動向があることは確かである。積極的な個人への執行に対して取締役会や特別委員会のメンバー、企業の幹部社員らは皆同様にホスキンズ判断がFCPAの執行に関して広範な適用がされる可能性に照らして、今責任のエージェンシー理論の下での潜在的な企業摘発について広く考える必要がある。必要であれば潜在的な企業摘発の可能性のある個人は、経験のある弁護士と適当な状況下での開示のコストと利益をはかり、先を見越してすべての潜在的問題に対処し、軽減するために連携するべきである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
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