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セクシャルハラスメント訴訟における裁判官選定に
影響を与えていること (20/07/31)
職場での性差別とハラスメントを受けたとの主張は#ME TOOのこの時代にさらなる課題を掲示している。メインストリームのメディアで広範囲にこの話題が報道されていることを鑑みると、裁判で証拠を鑑定するために選ばれた陪審員らが証拠を新鮮な目で見ることは考えにくい。 #MeToo ムーブメントにより多くの問題事例が公に知られ、そのような非行の申し立てに対して適切に反応し、調査することに失敗しているいくらかの機関はもちろん、そのような非行がすべてのあらゆる業界、会社のあらゆる段階においても横行しているという、その規模の範囲をもが協調されることとなった。
ある研究はほとんどの人々は個人的に差別、ハラスメント、もしくは性非行を自ら経験したことがある、もしくはそのような経験をしたことがある人を知っているとの結果を示した。一般的に、セクシャルハラスメントや差別を受けたとの主張をする原告らは似たような経験をしたことがある陪審員に当たると恩恵を受ける傾向がある。なぜならその陪審員らはその申し立て、証拠の種類と質に対してだけでなく、あやふやさで問題のある記憶との報告のうえ作られた証拠のもつ課題に対しても共感的である可能性が高い。他方では、そのような陪審員が個人的により酷いと思えること(彼らは代償をうけていない)に耐えたことがあるために原告に対して共感的な態度を示さない可能性もある。
したがって、予備尋問は陪審員候補者らからの陪審員を選定するカギである。まず最初のステップとして、原告の弁護人はハラスメントや差別を受けたとの申立てが信用できる確かなものであると推定する可能性の高い陪審員を探すことが賢い判断だろう。ドアー研究所によりなされた研究結果はより若い、さらに女性の陪審員らが他のより年をとった男性の陪審員らと対比してそのような推定をする傾向が高いことを示した。さらに、これらのグループは性別に基づいた差別やハラスメントは一般に行われていることであると信じている可能性がより高い。ドアーの研究結果はさらに性別やその他いかなるアイデンティティに基づいたハラスメントが一般的に行われていると信じることと若さの間には相関関係があることを示した。参考:エレン・ブリックマンとチャド・ラクリーのドアー研究所「# MeToo Worldにおける差別とハラスメントの認識」(2018年)9項。( Ellen Brickman and Chad Lackey, The Doar Research Center, “Perceptions of Discrimination And Harassment in a # MeToo World” (2018), at 9. )
セクシャルハラスメントや差別に関する裁判における陪審員選定では他のどんな場合とも同様、裁判所が「正当な理由」をもって陪審員らを除名することと当事者らが、 陪審員が証拠を公平に考察できない、もしくは裁判所の指示に従えない場合に彼らをその立場から退かせる専断的忌避を用いることを含む。予備尋問は陪審員らの多くがあまり共有したがらないの個人的であるものの、訴訟に関係する妥当な経験や意見を陪審員から率直に引き出すことを要求する。偏見を審査するために必要な高度に個人的な質問をする際には敬意と辛抱強さが求められる。判事が質問に答えない、もしくはネガティブな回答をすることを避けるために共感は特に公の淡々とした環境下ではっきりと、かつ繰り返し表示する必要がある。参考:クレア・C・ケイツの「公明正大な陪審員を守る:質疑応答での解決策(Claire C. Kates, Protecting the Impartial Jury: A Solution of Questions, 35 St. Louis U. Pub. L. Rev. 415, 432–34 (2016)(アリゾナで1997年から2000年の間に行われたアンケート調査では「陪審員候補者らは弁護士らが話を聞かないようだという事実について憂慮していると述べた。弁護士らは彼らが好まない陪審員らをいびり、見くびる人々、として見られており、弁護士らによってなされる質問は陪審員候補者らのプライバシーを侵害するものであると。」)
各々の陪審員のプライバシーの確保と陪審員がお互いの回答を聞くことができるようにすることの間に弁護人は可能な場合にはバランスを見出すべきである。プライバシーの保障は陪審員に安心感を与え、結果として開放性と率直性を促進する。さらに、陪審員のトラウマ的な経験について尋ねる際にプライバシーは特に重要だ。なぜならそのような会話は陪審員にとってさらなるトラウマを与える可能性もあるからだ。同時に陪審員らが 予備尋問でのお互いの反応を聞けることは大切なことかもしれない。 陪審員らがお互いの回答を聞くことができるとよりグループ内の会話を開放的にし、 よりオープンなオープンな会話を促進することになるかもしれない。たいてい最初に心を開く陪審員候補が他の陪審員たちにも率直になるよう感化する。このことは最も率直そうな陪審員候補のものから会話を始めることの示唆かもしれない。最後に弁護士の中にはポスト#ME TOO時代において、陪審員が「予備尋問でのセクシャルハラスメントや暴行に関する質問に対してより率直でよく表現する」との報告をしたものもいる。参考 ローラ・L・コミニック 「#ME TOO時代の陪審員の選定」(Laura L. Cominic, Theodore O. Prosise, “Jury Selection in the #MeToo Era,” Tsongas The Advantage Blog (Sept. 7, 2019). )
予備尋問を公開しないことやある範囲の会話を完全にプライベートなものにすることを許すことの裁量は裁判所により異なり、公の合衆国憲法修正第一条に規定のある知る権利により拘束されているということは忘れるべきではない。参考 アメリカVSロエラ 2018年(United States v. Loera, 2018 WL 5624143, at *1 (E.D.N.Y. Oct. 30, 2018)「公開の予備尋問手続きは「非公開がより高位な価値の保全のために必要不可欠であり、その目的の達成のためだけになされるとの 調査結果のもと、その利益がより優位に立つと判断された場合には非公開とできる。」(プレスエンタープライズVSカルフォルニア最高裁判所 464 U.S. 501, 510 (1984)からの引用)より非公式なサイドバーな会話は陪審員の保護と率直性の助長に十分なものとなるかもしれない。 参考:ローレン プライバシーと陪審員の選定「憲法は陪審員候補者らを個人的なことに立ち入る予備尋問での質問から守るのか?」(3 Rutgers J. L. & Urb. Pol’y 287 (2006)(陪審員がセンシティブな質問に対しては「プライバシーに関する憂慮」により自身とその事象について注目を集めたくないがために嘘をつくほうが楽である」ことを説明している。)
それぞれの裁判所は予備尋問を行う際の規則と手続きを各々もっている。裁判官や法務書記官が当事者らから情報提供を受けて尋問を行う裁判所もある。そのほかの裁判所では両当事者の弁護士らが陪審員候補者のグループに対して直接尋問を行うことが許される。訴訟当事者らが尋問を行うことを許されている場合、予備尋問では相反する目的がかかわってくる。それは陪審員の選定はもちろんのこと、陪審員、そして弁護士自身らの訴訟に関する事実と問題点に関する第一印象を知ることだ。裁判所で許された場合には、当事者らは陪審員候補者らに対して予備尋問の一環としてPRACTICE AREA NOTES (cont.) 9で記載しているように、陪審員が自身の回答について内証に議論することを好む場合にそれを示す機会を含めた文書での質問をすることを求めるべきである。
最後に、訴訟関係者らは「正当な理由」による拒絶についての情報が存在する場合、それを裁判所に対して明瞭に表現する準備を整え、どっちつかずの場合には専断的陪審員の拒絶を使う準備をしておくべきである。性、人種、民族性もしくは宗教による専断的陪審忌避はバトソン・ドクトリン(Batson doctrine)により法の下禁止されており、弁護士らは人種や性によってなされた統計的仮定をある特定の陪審員らの態度についての事実情報のかわりに使おうとしている場合にこの規定を順守するよう気を付けないといけない。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com