お客様にとってもっとも関心のある知財や独禁法・金融・労使関係などの最新の話題をお届けします。
御社の法務・経営戦略にお役立てください。
-
第11巡回裁判所がForum Non Conveniensの原則を明確化 (20/10/16)
最近、連邦裁判所は頻繁に争議される多国籍の訴訟問題について重要な手引きとなる判決を下した:forum non conveniensの原則の適用である。2020年7月1日、第11巡回における米国上訴裁判所は、メキシコの裁判所が米国側の2者、及び他国側の37者によって起こされた訴訟にとってより都合の良い準拠地であったという地区裁判所の判決を覆した。Otto Candies LLC v. Citigroup Inc., 963 F.3d 1331, 1335 (11th Cir. 2020)を参照。第11巡回裁判所は国内地区裁判所が、内国原告による米国内の訴訟、という選択肢に対し誤って敬譲を「縮小」させ、また、米国側の被告が関連する資料及び証人のほとんどがメキシコに所在しているという申し立てを支持できない、としてて逆転、差し戻しを行なった。Id. Quinn Emanuelが原告側の弁護を務めたこの事件では国境を超えた訴訟を米国内で望む原告と、そうした訴訟を却下することを求めている被告側両方に向けた重要な意味合いが込められている。
概要
Forum non conveniensの原則では米国裁判所が別国の裁判所で訴訟手続きを行われるよう却下することを容認している。その他の判断含む、米国裁判所は(1)米国に自身の訴訟を持ち込みたいという原告の選択肢に対し正当な敬譲を与え;(2)当事者による資料や証人の入手先を分析(私益要因);そして(3)訴訟における米国及び非米国の利権を査定(公益要因)しなければならない。Id. at 1338.
米国裁判所はまたforum non conveniensの原則下での却下における現実的問題を、例えば原告側の申し立てに関連する資料の提供を被告側が同意する、など特定の却下条件による緩和を試みる場合もある。Id. at 1352. Forum non conveniensの原則は事実集約的審理であり、地区裁判所の判決は自由裁量の濫用基準を再検討することが条件となっており、上訴裁判所による破棄は稀である。
Otto Candies事件の原告達はOceanografíaの元債権者であるが、この企業は元々メキシコの州所有の石油ガス会社Pemexへ掘削業務を提供していた現在は破産しているメキシコ企業であった。原告達はCitigroupが、Oceanografíaへキャッシングサービスを提供するべくメキシコの子会社内で融資枠を設立したが、適切に監視をしておらず、捏造されたPemexの署名であることを知りながらOceanografíaに対し7億5千万ドルもの金額を融資したと申し立てた。2014年2月に詐欺が発覚すると、Oceanografíaは破産宣告を出し、原告達は11億ドル以上の損失を受けたのだ。
裁判地選択への敬譲
第11巡回裁判所は、米国フロリダ州南地区裁判所が2名の米国側の原告に対し、内国原告が、「非常に稀な状況下」における特別な推定を得る権利があるために米国内で訴訟手続きを行う選択肢へのより多い敬譲を与えなかったことによって法的過失を犯したと判断した。Id. at 1339ー 46. 代わりに、地区裁判所は米国の原告が非米国企業(Oceanografía)と事業活動を行なったため、不当により少ない敬譲を与えた—これは米国最高裁または米国巡回裁判所、共に承認していない状況であった。Id. at 1339ー41. 上訴裁判所はこうした国際商取引における米国の原告による裁判地の選択に明確な推定、特にただ1者の原告(Citigroup)が米国企業である場合、特例として認められないと判断した。 Id. at 1340ー43. 続けて第11巡回裁判所も、第9及びD.C巡回同様、2者の米国の原告の為の敬譲軽減は他に訴訟に関わっている37者の非米国の原告がいるため、その根拠が見られないと判断。Id. at 1343ー45 (Carijano v. Occidental Petrol. Corp., 643 F.3d 1216, 1228 (9th Cir. 2011); Simon v. Republic of Hungary, 911 F.3d 1172, 1183 (D.C. Cir. 2018)を引用.
上訴裁判所は続けて、非米国の原告による米国内での訴訟選択においても、敬譲軽減とはなるものの、敬譲の主張権利があると強調した。Id. at 1345ー46.
また、(上訴裁判所は)地区裁判所への差し戻し時に、メキシコの裁判所を所望する非米国の原告を退けて米国の原告が米国裁判所での手続き続行を承認すること(例:訴訟の「分割」)がCitigroupを含む全当事者にとって不都合である事実を考慮するべきであると指示した。Id. at 1345.
私益及び公益について
第11巡回裁判所は、地区裁判所が(a)Citigroupの米国における行為がOceanografíaの詐欺達成を促進させたという原告の申し立てが真実であると受け入れず、メキシコでの活動に焦点を当て;(b)既に証拠が揃えられており、その所在が内部及び米国政府による詐欺調査に入っていながらも、抗弁に関する資料及び証人がメキシコで必要であるというCitigroupの供述を認め;そして(c)そうした私益を通じて(Citigroupに対抗する)原告へ負担を強いたことにより、過ちを犯したと判断。Id. at 1346ー51.
メキシコ内で資料及び証人の入手が必要であるというCitigroupの申し立てについて第11巡回裁判所は、被告達側が、非米国裁判所が訴訟にとってより都合の良い場所であるという証拠とそれに関わる詳細に渡った説明を行わなければならない、と判決を下した。(例: 海外でのみ入手可能である数多くの特定資料、及び/または簡単に渡米ができず、さらには米国の承認を著しく上回る海外に所在する主要証人、を記述した宣誓供述書の提出). Id. at 1348ー49
(inter alia, Simon, 911 F.3d at 1186 (Digitization, moreover, has eased the burden of transcontinental document production and has increasingly become the norm in global litigation.)を引用).
公益要因に関して上訴裁判所は、地区裁判所に対して 訴訟におけるメキシコの関心と米国による関心、どちらも全体的に比較するよう指示し ー これによって州または地区の関心のみならず ー 原告の訴訟地判断へと向けた。 Id. at 1351ー52. 米国による関心に関して上訴裁判所は米司法省及び米国証券取引委員会が共にOceanografíaでの詐欺事件について調査しており、訴訟の米国との関係を表している。Id.
棄権条件について
最後に第11巡回裁判所は 地区裁判所によるCitigroupがメキシコにおける資料及び証人への妥当な入手法を提供する、という棄権条件について、その条件詳細を特定していないとして幾つかの現実的問題が生じると言及した。Id. at 1352ー54. こうした困難は裁判所がどのように、あるいは何に基づいてこの条件に関する紛争を解決するか、も含まれており、とりわけメキシコの裁判所が第1管轄権を持つ可能性がある場合はなおさらである。Id. at 1353ー54 (In re Union Carbide Corp. Gas Plant Disaster, 809 F.2d 195, 205 (2d Cir. 1987)を引用).
第11巡回裁判所は従って地区裁判所に対し、もし開示条件が満たされなかった場合に、原告が米国での訴訟を復帰させることができる特別な状況とは何か、を検討するよう助言した。
終わりに
第11巡回裁判所による判決は米国の原告が、自身の国際商取引または訴訟における複数の非米国の原告を含有しているか否かにかかわらず、裁判地を指定するにあたっては強い推定を得る権利を強固とした。これに加えて、この判決は 被告側が 海外の裁判地がもたらす便利さを示し、また米国外で資料及び証人が必要だと主張する場合、推定だけではなくそれ以上が必要であるという基準を明確に打ち出した。最後に、判決は forum non conveniensの原則における実現困難さについて言及し、これが非米国管轄における開示への妥当な入手法を意図的に提供する被告に依拠、かつ付随しているとのべた。従って、原告は米国内に国境を超えた紛争を持ち込む場合、こうした訴訟の棄却を所望する被告は彼らの訴訟における当判決で打ち出されたforum non conveniens原則下の含意を慎重に判断するべきである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com