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過去最高数へと到達する勢いを見せる米国証券取引所上場非米国企業に対する
連邦証券クラスアクション (21/01/29)
2020年前半に非米国企業に対して起こされた証券クラスアクションの数は例年に提出された訴訟件数を上回った。最新のAIGの報告書によると、2020年前半に起こされた111の主要な訴えのうち、35は非米国企業に対するものであり、これは提訴件数のうちの31.5%を占め、2019年前半の割合よりもはるかに高いものである。AIG, US Securities Class Actions: International US-Listed Companies, H1 2020, at 1 (AIG、米国証券クラスアクション、米国上場国際企業、H1 2020, at 1) (2020年6月26日)
https://www.aig.co.uk/content/dam/aig/emea/united-kingdom/documents/Financial-lines/ class-actions/class-actions-q2-2020.pdf.
事実、これらは「2011年の逆さ併合に関連した訴訟が相次いで提起された際以来に見られる」最も高い割合で、 Cornerstone Research, Securities Class Action Filings: 2020 Midyear Assessment, at 1 (2020)(Cornerstone Research、証券クラスアクション提出文書:2020年中期アセスメント、1(2020))「外国による訴状提出の年間平均割合の5年間平均である16%」よりもはるかに高いのである。Kevin LaCroix, First Half of 2020 Securities Suits Against Foreign Issuers Outpaced Overall Filing Levels, The D&O Diary (Kevin LaCroix、2020年前半の外国債者に対する証券訴訟が全体の提訴水準をしのいだ 、The D&O Diary) (2020年9月13日)。注目すべきはこれらの訴えの大多数はアジアに所在する企業、特に中国に対して提起されたものであることである。AIG, at 1.
結果として、証券クラスアクションの非米国企業に対する合計提訴件数は歴史上最高の数字になろうとしている。そのインパクトは実際の文脈内だとさらに顕著に見て取れる。非米国企業は米国証券取引所に上場しているすべての企業のうち16%である。米国証券取引所に上場している企業のうちわずかな割合の非米国企業に対して提起されたその証券訴訟は合計提訴件数の31.5%を占めており、非米国企業が国内企業より米国証券法の下、訴訟を提起される可能性が高いことを示している。実際、S&Pの500のファームに対する主要な訴えの提起Core filingsは減速しているようである。Cornerston、2参照(そのような提起は「2015年以来最も低い年間レート4.8%という割合で起こった」。
法的背景
米国証券法の訴えの提起に最も使われている証券取引法の10条(b)は 国法証券取引所で記名されている、もしくは記名されていないあらゆる証券の購入、または販売に関連する」証券取引委員会規約の「どんな人をもが直接的、間接的を問わず…あらゆる操作的や欺瞞的な方策、もしくは違法な計略を使用や雇用をすることを違法」とする。15 USC. § 78j(b). Morrison v. National Australia Bank, Ltd.訴訟で最高裁判所は外国企業の証券取引法の範囲を検討し、「証券取引法に10条(b)が治外法権的に適用されるとする断定的な指示はなく、…したがって適用されないと結論付けた。」とした。561 US 247, 265 (2010). そうして裁判所は断定的に証券取引法の範囲を「「国法証券取引所で記名されている、もしくは記名されていないあらゆる証券の購入、または販売に関連する」欺瞞的な行為のみ」に限定した。Id. at 266.
Morrison訴訟での判断に照らして、公取引をする非米国企業は米国証券取引法のもとの責任負担を限定的にするために、彼らの証券を米国証券取引所で販売することを避けた。代わりに多くはその証券を店頭市場で米国の米国預託証券(「ADR」)としてのみ取引する。こうすることで彼らが米国証券法の法的責任から逃れられると信じて。この見解は第九巡回裁判所のStoyas v. Toshia Corp., 896 F.3d 933 (9th Cir. 2018), cert. denied 139 S.Ct. 2766 (2019)訴訟における2018年判決によって覆された。
Stoyas訴訟で第九巡回裁判所は、東京証券取引所で取引されている「Toshibaの普通株の直接的な購入」に対する、店頭市場でのToshibaのADR取引は米国証券法の対象であったのかどうかを検討した。Id. at 939. それらが米国証券法の対象であったことを決定するに際して、第九巡回裁判所はADRは米国証券取引法上、証券であり、id. at 943、Morrison訴訟判決が証券取引法の対象となる取引の2つのカテゴリーを詳しく述べている「取引テスト」を定めたとした。それらのカテゴリーは、(1)「内国為替上場証券に関わる」取引、もしくは(2)「米国で行われる」取引である。Id. at 944. 取引の最初のカテゴリーに関して、第九巡回裁判所は米国証券取引法は店頭市場を規制するものの、OTCリンク(問題となっている市場)は米国証券取引法の下「取引」であるとは考えられないとした。次に2つ目のカテゴリーでは、最高裁判所が取引が「国内の」ものであったか否かを判断するためのテストを明らかに表現しなかったということに言及し、第九巡回裁判所は第2巡回裁判所のAbsolute Activist Value Master Fund Ltd. v. Ficeto, 677 F.3d 60 (2d Cir. 2012) 訴訟判決での「撤回不能な責任」テストを採用した。それは取引のタイミングとロケーションの両方を決定することになる「当事者らが撤回不能な責任を負った際に証券取引は発生する」ことを規定している。Id. at 948 (Activist Value, 677 F.3d at 67を引用). このテストはMorrison訴訟判決における国内取引としてみなすために原告に対して「購入者が米国内で証券に対しテイク・アンド・ペイする撤回不能な責任を負った、もしくは販売者が米国内で証券を引き渡すという撤回不能な責任を負った」ことを納得のいくように主張することを要求する。Id. したがって第九巡回裁判所は、もし、適切に申し立てられれば問題となっているADRの販売はMorrison訴訟判決における米国証券取引法対象の2つ目のカテゴリーの取引に分類されるかもしれないとしている。Id. at 949.
トレンドの要因と含意
Morrison訴訟判決の含意は非米国企業の米国証券取引は米国証券取引法の対象ではあるものの、この判決はそれ以降のクレームの着実な上昇の理由ではないようである。数名の論評者はStoyas訴訟などのケースのインパクトはすべての非米国企業に対する訴訟の増加というグローバルトレンドにおいて一役買っているのかもしれないと主張する。なぜならそのような訴訟が非米国企業に対するクレームの範囲を、彼らが米国証券取引所に上場していなかった場合においても拡張しているからだ。
米国証券取引所に上場している非米国企業のほうが国内企業よりも米国証券侵害で提訴される可能性が高いことを統計は示しているものの、この増加は企業のロケーションとはほとんど関係がなく、むしろ彼らが従事する業界との関係が深いものであると主張する者もいる。例えば多くは訴訟のリスクの高い業界である製薬やテクノロジー業界などで事業活動を展開している。しかしながら、米国上場中国企業とその他アジア企業が他の外国よりもより頻繁に訴えを提起され続けているため、米国上場アジア企業は彼ら独自の訴訟リスクカテゴリーを構成するかもしれない。
増加した訴訟の含意、すなわちそのようなクレームの解決、もしくはその他の処理といった金融負債の負担リスクの増大とは別に、このトレンドは保険料へも大きな変更をもたらした。最近まで保険会社は非米国企業の重役と役員に彼らの国内のカウンターパートに比べかなりの割引額で保険(「D&O保険」)を提供していた。しかし、非米国企業に対する証券訴訟の頻度とその重大性の増大に対応するために、保険会社らは現在さらに法外なD&O保険の保険料を非米国企業に対して請求している。
結論
非米国企業に対しての起こされる証券クラスアクションの増加というトレンドに減速の兆しは見られない。そのような企業らは米国の非米国企業に対しての米国証券訴訟を監視し続け、彼らのD&O保険の選択肢を査定し、特定の業界は他と比較して一般により重大な訴訟リスクにさらされていることを理解しておくべきである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com