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  • 高裁、証券集団訴訟における被告のクラス認定への異議申し立て能力の拡大を検討 (21/03/26)

2020年12月11日、最高裁判所はGoldman Sachs Group, Inc. (以下「ゴールドマン」)が1934年証券取引所法第10条(b)及び規則10b-5(b)に違反して特定の虚偽表示を行ったと主張し、ゴールドマンの公開株式の価値が下落することとなった証券集団訴訟、Arkansas Teacher Retirement System v. Goldman Sachs Group, Inc. 955 F.3d 254 (2d Cir. 2020)でゴールドマンによる裁量上訴の申し立てを認めた。最高裁は、2つの重要な問題を検討する。それは第一に、裁判所は、クラス認定の段階で、被告がクラス全体にわたって依拠した推定を反証したかどうかを判断する際に、申し立てられた虚偽表示の性質そのものを考慮することができるかどうか、第二に、どの当事者がこの問題について説得の責任を負うか、という点である。

2020年4月7日、第2巡回裁判所は、この訴訟で2回目となる控訴の基礎となる意見書を発表した。Ark. Teachers Ret. Sys. v. Goldman Sachs Grp., Inc. (ATRS I), 879 F.3d 474 (2d Cir. 2018)訴訟では、第二巡回裁判所は当初、ゴールドマンがBasic v. Levinson, 485 U.S. 224 (1988)訴訟にて「株主らがその株式を市場価格で購入することを選択するにあたり、ゴールドマンの重要な虚偽表示として申し立てられている記載に依拠していた」とされた推定を反証することに成功したか否かを評価する「証拠の優越」基準を連邦裁が適切に適用できなかったとして、クラス認定を認める地方裁判所の意見を取り消し、差し戻した。Ark. Teacher, 955 F.3d at 254. 差し戻しにおいて、地方裁判所は再び「ゴールドマンは証拠の優越にをもってBasic推定を反証することができなかった」と判断し、そのため「もう一度クラスを認定する」とした。Id. at 258. 第二巡回控訴裁判所は地裁を再び支持し、最高裁はゴールドマンの裁量上訴の申し立てを認めた。

この裁判所の決定は、集団訴訟の対象期間やクラス規模の縮小が潜在的な損害賠償額、ひいては当事者の和解計算に大きな影響を与える可能性がある訴訟において、証券集団訴訟の被告が認定段階での原告クラスを絞り込む能力を拡大するかもしれない。一般的に、証券集団訴訟被告がクラス認定に対抗するのは難しい。なぜなら、推定された原告クラスは、同じ証券を購入し、証券の市場価格に依拠し、同じ市場での事象によって損失を被った同じような立場の投資家から構成されていることが多いからである。しかし、最高裁判所がゴールドマンの味方をした場合、証券集団訴訟の被告らはクラス認定の段階で、申し立てられた虚偽表示は訴訟対象となるには「一般的」すぎると主張することができ、証券集団訴訟被告らが認定に異議を唱えることができる方法を効果的に拡大することができるかもしれない。被告らが申し立てられた虚偽表示のいくつかまたはすべてに対しそれらが証券詐欺の根拠としては「一般的」すぎる(しばし「puffery(誇大広告)」と呼ばれる)と主張する頻度の高さを考えると、この判決は相当数の事件に影響を与える可能性がある。



原告らの主張

原告らにより申し立てられた虚偽表示は、2006 年から 2010 年にかけてのゴールドマンの発言であり、特に、ゴールドマンの「評判は当社の最も重要な資産の一つであり」、「我々には利益相反を特定して対処するように設計された広範な手順と管理があり」、「当社は、当社を支配する法律、規則、倫理原則の文言と精神を完全に遵守することに専念している」と主張したものであった。Id. 原告は、実際にはゴールドマンは当時、「公表されていない利益相反が渦巻いていることを知っていた」ためにこれらの発言が虚偽であったと主張した。Id. at 259.

原告の主張の大部分は、ゴールドマンがヘッジファンドの Paulson & Co. (Paulson)、(以下「Paulson」)に「債務担保証券を構成する担保の選択に積極的な役割を果たす」ことを認めていながら、投資家らに対して債務担保証券を「普通資産担保証券」として売り出したId. at 259という疑惑に基づいている。Id. 原告は、Paulson が債務不履行に陥ると考えていた住宅ローンを選択し、その多くは実際に債務不履行に陥り、Paulson が 債務担保証券に賭けることで約 10 億ドルの利益を得たのだと主張した。Id.また、原告は、Goldman 自身が投資家に販売した他の債務担保証券を空売りしたと主張している。Id.参照。 第二巡回控訴裁判所は「原告らの主張の核心は、ゴールドマンによるコンフリクト・フリーであるということの表明が人為的に株価を維持し、上昇させたこと、そしてゴールドマンによるコンフリクトの暴露」がゴールドマンの株価を下落させたのだということであるとまとめた。Id. 特に投資家は、政府当局がゴールドマンの利益相反疑惑を調査しているとの発表の直後にそれぞれ、ゴールドマンの株式が 3 度、個々の機会で急落したと主張した。Id. at 259参照。



地方裁判所はゴールドマンの棄却の申し立てを却下し、クラスを認定

ゴールドマンは当初、申し立てられた虚偽表示は「合理的な株主がそれに依拠するにはあまりにも一般的で漠然としている」と主張して裁判で訴状の却下を求めた。Id. at 260. 地方裁判所はこの議論のほとんどを「ゴールドマンの発言の大部分は起訴が可能な重要性の問題を提起するものである」として否定はしたものの、特定の発言に関しては重要性がないものとして棄却をした。Id.

証拠開示後、原告は FRCP 23 に基づいてクラス認定を求めた。これに対してゴールドマンは、上述のBasic推定に異議を唱えた。Basic推定の下では、原告が「被告の虚偽表示は公に知られており、被告の株式は効率的市場で取引されており、原告らが虚偽表示が行われた後、真実が明らかになる前に市場価格で株式を購入した」ことを立証すれば、裁判所はすべてのクラス構成員が疑惑の虚偽表示に依拠していたということを推定することができる。260-61 (Ark.Teachers Ret. Teachers Ret. Sys. v. Goldman Sachs Grp. (ATRS I), 879 F.3d 474, 484-85 (2d Cir. 2018)を引用)。) 被告は、ゴールドマンが行ったように、申し立てられた虚偽表示が株価に何の影響も与えなかったことの証拠を提出することで、この推定を反証しようとすることができる。Id. at 261 参照。

連邦地裁はゴールドマンの主張を却下し、クラスを認定した。控訴で、第二巡回控訴裁判所は、第一審裁判所が「『証拠の優越』基準の適用に失敗した」し、Goldmanが提出しようとした特定の追加証拠を無関係なものとして不当に却下したとして、これを無効とした。id. at 261参照。差し戻しにおいて、地方裁判所はゴールドマンの証拠を評価し、ゴールドマンはBasic推定を反証できなかったと再度判断し、クラスの認定を再度行った。Id. at 262.



ゴールドマンはクラス認定を控訴し、第二巡回控訴裁判所はこれを認める

ゴールドマンは、第二地方裁判所の判決を二つの主な理由で控訴した。第一に、ゴールドマンは第一審裁判所が、原告はそれぞれの申し立てられた虚偽表示が会社の株価の人為的なインフレを引き起こしたということを主張する必要はなく、会社が真実の発言をしていた場合、下落していたであろう株価の既存の物価インフレーションを維持できていたということだけを申し立てればいいという「インフレ維持」責任論を適切に適用できなかったと主張した。id. at 264参照。ゴールドマンは、申し立てられた虚偽表示は「一般的な発言」に過ぎず、証券詐欺責任のインフレ維持理論を支持するのに十分なものではないと主張した。Id. at 264-65 参照。第二に、ゴールドマンは、ゴールドマンの証拠が「証拠の優越をもってBasic推定を反証することができなかった」ものであるとした連邦地裁のその判断は裁量権を濫用したものであったと主張した。 Id. at 264.

ゴールドマンは、一つ目の主張の裏付けとして、原告が価格インフレを維持すると主張できる虚偽表示には 2 つのタイプしかなく、どちらのタイプにも原告が特定した「一般的な」虚偽表示は含まれていないと主張し、 id. at 266参照、したがって、地方裁判所は、クラス認定の段階で、これらの「一般的な」発言は責任の根拠とするには不十分であると判断すべきであったと主張した。巡回控訴裁判所は、特にゴールドマンが引用した典拠のいずれにもインフレ維持理論の適用を特定の発言に限定したものがないことを指摘してゴールドマンの主張を却下した。Id参照。巡回控訴裁判所がより懸念したのは、ゴールドマンによる特定の発言をその表面上は株価に影響を与えたとはいえない「一般的な」発言とみなすことでBasic推定を反証するという提案が、「本当は重要性の観点を規則 23 にこっそりと持ち込むための手段」でありid. at 267、「重要性は......クラス認定の段階では適切な考慮事項ではない」とする原則に反したものであったということだ。(id. 267 (Ark. Teachers Ret. Teachers Ret. Sys. v. Goldman Sachs Grp. Inc. 879 F.3d 474, 484-85 (2d Cir. 2018)を引用。) 裁判所はまた、「主張されている虚偽表示が一般的すぎるかどうかは…共通の問題が個別の問題よりも優勢かどうかという問題とは何の関係もない」ために、ゴールドマンのテストは FRCP 23(b)(3)に反していると指摘した。Id. ゴールドマンの提案したテストが「潜在的に実益のない申し立てを除外する可能性がある」のだとしても、裁判所は、「規則23条は本案問題の雑草取りではない」と指摘した。Id. この論を支持するために、裁判所はAmgen Inc. Plans & Tr. Funds, 568 U.S. 455, 474 (2013)訴訟の「本案の問題は、ある範囲内で考慮されうるが、それはクラス認定のための規則23の前提条件が満たされているかどうかを判断するために関連性のある範囲内に限られ考慮されうるものである」という主張に依拠した。Id. at 268 (斜体箇所は原文の通り).

ゴールドマンはまた、「ゴールドマンの理論を否定することは、裁判所が本案で負けるべきだと考えているクラスの認定を可能にすることであり、実益のない訴訟が次々と起こることになってしまう」というポリシーベースの議論を行い、そして特に、株価が下落した場合には、原告は過去の肯定的な発言をすべて特定し、それがインフレ維持の理論を支持すると主張することができる、ということを主張した。id. at 269参照。裁判所は、「クラス認定が、裁判に至る経済的リスクを理由に、実益の有無にかかわらず、被告に多額での和解をさせるよう圧力をかけることができる」ことを認める一方で、ゴールドマンによるparades of horribles(起こりうる負の事象に続く負の連鎖の説明)には心動かされなかったとし、以下のように説明した。(i) 発言があまりにも一般化されすぎているために実益を欠くクレームはクラス認定の段階には到達せず、 id. at 269 (ii) 被告には略式判決で重要性の観点を攻める第二の機会があり、(iii) 被告はゴールドマン自身が行ったように、「Basic推定を反証しようとする際に」特定の発言の「価格影響を反証する証拠を提示する」ことができると。Id. 巡回控訴裁判所は、クラス認定の段階での虚偽表示の「一般性」を評価するようにとのゴールドマンの要請を却下したことから、連邦地裁がゴールドマンの証拠がBasic推定を反証するには不十分なものであったとしたその判断において裁量権の濫用はなされていないとした。Id. at 270-74参照。

さらに、この問題を扱うにあたり、第二巡回控訴裁判所はゴールドマンが「説得の責任を負う」と認識しており id. at 272、それは「今回のように株主がBasicを行使した場合、問題はどちらの側がより優れた証拠を持っているかではなく、被告がその推定に反証したか否かである」ということを意味しているのである。Id. at 272 n.19.



反対意見

サリバン判事は、原告が虚偽であると主張することの事実的な基礎となったゴールドマンの利益相反疑惑に関する情報に着目し、これらの情報は原告らによって特定された 3 回の大幅な株価下落の前に 36 のニュース記事で一般に公開されていたが、それら36の暴露記事はゴールドマンの株価に影響を与えはしなかったとして反対意見を述べた。Id. at 277 参照。サリバン判事はまた、裁判所が「申し立てられている虚偽表示の性質」、つまりゴールドマンの用語で言えば「一般性」を考慮することを拒否したことにも異議を唱えた。id. at 278 参照。サリバン判事は、「被告がBasic推定に異議を唱え、虚偽表示が株価に影響を与えなかったことを証明する証拠を提出した場合、審査裁判所は、株価への影響を評価するために、申し立てられた虚偽表示を自由に検討することができる」と主張し、クラス認定の段階では重要性を検討できないとする多数派の判断を否定した。Id. at 278. Sullivan判事は、このような審理は重要性の評価に似てはいるものの、「そのことによって不適切になるわけではなく」、「申し立てられたゴールドマンの虚偽表示の一般的な質は、議論の余地のない事実」である事前の開示が株価に影響を与えなかったことと相まって、「是正的な開示後の株価下落は、訴状で申し立てられた虚偽表示以外の何かに起因するものであったという結論を明確に強いるものである」と結論付けた。Id. at 278-79 (斜体箇所は原文の通り) したがって、Sullivan判事は、判決を無効としクラス認定を取り消したであろう。



最高裁に係属している問題

当事者らは最高裁が検討すべき2つの問題を提起した。当然のことながら、それぞれが異なる特徴を持っている。

まず、ゴールドマンは、第一の問題は、証券集団訴訟の被告が、「重要性という実質的な要素にも関連する証拠であっても、発言が証券の価格に影響を与えなかったことを示す際に、申し立てられた虚偽表示の一般的な性質を指摘する」ことによってBasic推定を反証できるかどうかという点であると主張している。 Pet. for Writ of Cert., Goldman Sachs Group, Inc. v. Ark. Teacher Ret. Sys. (No. 20-222), at I (問題が提示されている). 原告らは、この問題を被告が「重要性よりも価格への影響を重視した議論の方向へと導きさえすれば、被告の発言が重要でなかったことを示すことでクラス認定に対抗できるかどうか」の問題であると考えている。Br. in Opp., Goldman Sachs Group, Inc. v. Ark. Teacher Ret. Sys. (No. 20-222), at i (問題が提示されている). ゴールドマンはまた、もしも裁判所に申し立てられた虚偽表示を面と向かって評価する権限が与えられなかった場合、「インフレ維持の原告が容易にクラス認定を得ることができるようになる」ことへのを恐れを改めて述べている。Pet. at 26. これに対し、原告らは、被告らが実益のないクレームに対して有している様々な保護を指摘している。Opp. at 21-24.

第二に、両当事者らは、Basic推定を反証しようとする被告には証拠提出責任のみの負担があるのか、それとも説得責任の負担をもがあるのかについて論争し、また熟考したのち、第二巡回控訴裁判所は後者の意見を支持した。Pet. at I; Opp. at i. 参照. ゴールドマンは、この問題については巡回区間で意見が分かれていると主張しており、第 2 巡回区と第 7 巡回区はBasic推定を反証するために被告には説得の負担があると判断しているが、第 8 巡回区では、被告が推定を反証するための証拠を提出したとしても、説得の負担は原告に残るのだと論じている。Pet. at 21-24. ゴールドマンの見解では、「証券詐欺の私訴原因…とBasic推定は司法の創作物」であり、「推定を指示された当事者には、推定を反証するための証拠を提出する責任がある」が、そのような証拠は「説得責任の転嫁をせず、元々説得責任のあった当事者にその責任を残し続けるものである。」ということを規定する連邦証拠規則301条Pet. at 23、を変更するような法令や証拠規則は存在しない。これに対し、原告は、第2巡回区と第7巡回区が実際に原告の主張を却下したことを認めているが、第8巡回区はその見解を述べていただけであり、真の巡回区の分裂はないと主張している。Opp. at 27-29. 本案について、原告はHalliburton Co. v. Erica P. JohnFund, Inc. John Fund, Inc. 573 U.S. 258, 279 (2014) における判決を引用し、被告は価格影響の欠如を示すことでBasic推定を反証できるとし、ここでの「示す」という表現が被告が「価格影響の欠如を説得力をもって示す証拠によって実際に推定を反証しなければならない」ことを意味すると解釈している。Id. at 29 (強調原文の通り)

この申し立てに関しての議論の場はまだ設定されていないが、2021年3月までに審理される可能性は低い。



クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン



この件につきましてのお問い合わせ先

マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com

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