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特許訴訟の最新情報 (21/03/26)
並行特許訴訟を考慮したIPRの裁量拒絶に対する新たな異議申し立て
2020年8月31日、大手テック企業4社は、米国特許商標庁(以下「USPTO」)のAndrei Iancu 長官に対し、並行する特許訴訟を考慮した当事者系レビュー(以下「IPR」)申請を35 U.S.C.§314(a)の下で拒絶するUSPTOの裁量権に異議を唱える確認訴訟を提起した。Apple, Inc. v. Iancu, Case No. 5:20-CV-06128-EJD, Dkt. 1 (N.D. Cal. Aug. 31, 2020). そのわずか2週間後、非営利団体US Inventorが率いる自称中小企業発明家数名が、長官の裁量権の強化を求めて訴訟に参加することを提案した。Dkt. 28. その後まもなく、US Inventorは、USPTOがこの問題に関するルールを公布するまであらゆるIPRを開始することを禁止する仮差し止め命令を求めた。Dkt. 34. 2021年2月5日に裁判所は訴訟参加の申立てを却下し、さらに、仮差止の申立てをmoot(争訟性がない) として却下した。原告らのクレームの最終的な結末は、毎年提出される数百件のIPR申請の裁定に大きな影響を及ぼす可能性がある。
I. 原告らによる「NHK-Fintivルール」への異議申し立て
原告らは長官がIPR拒絶に特許公判審判部(以下「PTAB」)が最近下した2つの判決、NHK Spring Co. v. IntriPlex Technologies, Inc. とApple Inc. v. Fintiv, Inc. を 先例として指定することで不適切な裁量ルールを採用したと主張する。これらIPR開始の拒絶に関してPTABが明確にした6つの裁量要素は、並行する地方裁判所の訴訟の段階、類似性、およびメリットに関するものであり、次のとおりである。(1) 裁判所が停止を認めたか、または認める予定であるか (2) 裁判所の審理日とIPRの最終審決書の期限との近さ (3) 裁判所と当事者らによる並行手続への投資(4)提起された争点間での重複 (5) 同じ当事者らが関与しているか (6) その他、メリットを含む審査部の裁量に影響を与える事情。Apple Inc. v. Fintiv, Inc. No. IPR2020-00019, Paper 11 at 6-6 (P.T.A.B. Mar 20, 2020); NHK Spring Co. v. Intri-Plex Technologies, Inc. No. IPR2018-00752, Paper 8, at 20 (P.T.A.B. Sept 12, 2018)を参照。
原告はこの「NHK-Fintivルール」が、弱い特許を排除するというIPRによって提供される「weeding out(除草)」のメカニズムに反していると主張している。Apple, Inc. et al., Case No. 5:20-CV-06128-EJD, Dkt. 1 at 2. 彼らはこのルールがアメリカ発明法(AIA)に違反し、恣意的かつ専断的であり、行政手続法(「APA」)に違反していると力説している。Id. 61-77.
第一に、彼らはルールが、告発された侵害者に訴状が送達された後にIPRの申請を提出するまでの1年間の法定期限を含む、いくつかの特定の法律に具現化されている議会の判断を覆すものであるとを申し立てている。Id. 61-67. 彼らはこの期限が「申立人に対する訴訟が開始されてから 1 年以内に IPR が提出される限り、IPR は適切である」という議会の判断を体現するものと主張している。Id. 原告らは連邦議会が、明示的な規定を設けないことで、並行する地方裁判所の訴訟手続きを考慮したIPRの開始を拒絶する長官のあらゆる裁量権を否定したと主張している。Id.
原告は次に、PTABの裁量要素が不確実で不確定的であるために、ルールが恣意的かつ専断的であると強く主張した。Id. 68-75. 例えば、原告らは裁判期日の近さというルールの2つ目の要素は審理がいつ開始されるかに関しての推測を呼び起こすものであるとしている。Id. 原告らは同様に、争点の重複という4つ目の要素の適用はPTABによって一貫して行われてはいないとも指摘している。Id. ここで原告らはPTABが、重複する問題のIPRの開始を認めるか否かについての判断を、審理日がどれほど先であるかについてのPTABの認識のみに基づいて選択的に行っていると主張しているのである。Id.
地方裁判所はゴールドマンの棄却の申し立てを却下し、クラスを認定
ゴールドマンは当初、申し立てられた虚偽表示は「合理的な株主がそれに依拠するにはあまりにも一般的で漠然としている」と主張して裁判で訴状の却下を求めた。Id. at 260. 地方裁判所はこの議論のほとんどを「ゴールドマンの発言の大部分は起訴が可能な重要性の問題を提起するものである」として否定はしたものの、特定の発言に関しては重要性がないものとして棄却をした。Id.
証拠開示後、原告は FRCP 23 に基づいてクラス認定を求めた。これに対してゴールドマンは、上述のBasic推定に異議を唱えた。Basic推定の下では、原告が「被告の虚偽表示は公に知られており、被告の株式は効率的市場で取引されており、原告らが虚偽表示が行われた後、真実が明らかになる前に市場価格で株式を購入した」ことを立証すれば、裁判所はすべてのクラス構成員が疑惑の虚偽表示に依拠していたということを推定することができる。260-61 (Ark.Teachers Ret. Teachers Ret. Sys. v. Goldman Sachs Grp. (ATRS I), 879 F.3d 474, 484-85 (2d Cir. 2018)を引用)。) 被告は、ゴールドマンが行ったように、申し立てられた虚偽表示が株価に何の影響も与えなかったことの証拠を提出することで、この推定を反証しようとすることができる。Id. at 261 参照。
連邦地裁はゴールドマンの主張を却下し、クラスを認定した。控訴で、第二巡回控訴裁判所は、第一審裁判所が「『証拠の優越』基準の適用に失敗した」し、Goldmanが提出しようとした特定の追加証拠を無関係なものとして不当に却下したとして、これを無効とした。id. at 261参照。差し戻しにおいて、地方裁判所はゴールドマンの証拠を評価し、ゴールドマンはBasic推定を反証できなかったと再度判断し、クラスの認定を再度行った。Id. at 262.
最後に原告らはこのルールがAPAの下、手続き的に無効であると主張する。Id. 76-77. 彼らはNHK-Fintivルールが実質的なルールにあたり、APA の下notice-and-comment(手続きまたは告知コメント)を必須としたが、一度もそれを受領しなかったのだと主張している。Id.
II. USPTOの裁量権を拡大し、すべてのIPRを禁止しようとする訴訟参加提案者らの尽力
原告らと同様に、訴訟参加提案者らは、PTABによるその場しのぎのルール作りとPTABの予測不可能性に不平を漏らした。Apple, Inc ., Dkt. 28-1 (N.D. Cal. Sep. 14, 2020) しかし原告とは対照的に彼らは、特許発案者らの対抗大企業を相手にしたIPR手続に関連する費用が増大していることを訴え、裁量的な否定の頻度を増加させようとした。Dkt. 34.
これに関連して、訴訟参加提唱者らは長官の「裁定的なルールの作成」は違法であるとの宣言を求め、notice-and-comment(手続きまたは告知コメント)ルールの作成の強制を求めた。Dkt. 28-1. at 22. 訴訟参加提案者らはまた、PTABの審査部が裁量的考慮事項を分析した過去の判断のいずれをも先例として扱うことを禁ずる差止命令をも求めた。Id. 彼らは主にこの議論を最近の連邦巡回控訴裁判所の判決Facebook, Inc. v. Windy City Innovations, LLCに基づいて行い、ここでの判決が「特定の判断を『先例的』として記している長官の現在の慣行が、必要とされているルールの作成とみなされるのではない」ことを明確にしているのだと主張した。Dkt. 28-1 at 11; Dkt. 34 at 11. 最後に訴訟参加提案者らはIancu長官に対し、notice-and-comment(手続きまたは告知コメント)ルールの作成が完了するまでいかなるIPR審理の開始をも禁止することを求める仮差止め命令を申し立てた。Dkt. 28-1 at 22.
2021年1月14日に裁判所は訴訟への参加提案者らによる訴訟への参加および仮差止命令を求める申し立てについての審問を行った。3週間後の2月5日に裁判所は、「元の訴訟当事者らの裁決を不当に遅延させ、彼らに不利益を被らせることになる」という理由をも含め訴訟参加提案者らによる訴訟への参加の申し立てを却下した。Dkt. 101 at 10. 裁判所はさらに、仮差止命令の申し立てをmoot(争訟性がない)として却下した。
当事者らは、2月4日に却下の申し立てと略式判決の申し立ての準備書面の作成を完了させたが、まだ審理の期日は設定されていない。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com