お客様にとってもっとも関心のある知財や独禁法・金融・労使関係などの最新の話題をお届けします。
御社の法務・経営戦略にお役立てください。

-
クラスアクション訴訟の最新情報 (21/04/23)
最高裁判所、クラスアクションの新たな当事者適格要件を検討
クラスアクションの最終段階において、当事者適格要件を満たさなければならないのは誰か、またその要件とは何か。最高裁判所は12月、これらの問題に取り組んだ第9巡回区控訴裁判所の意見に対し裁量上訴を認めた。この決定によりクラスアクションにおける当事者適格に関する現行のルールが大きく変わる可能性がある。
Ramirez v. TransUnio訴訟では、消費者のクラス(集団)が公正信用報告法(FCRA)に違反してクラスのメンバーの信用報告書に誤ってテロリスト警告を掲載した信用調査会社を訴えた。Ramirez v. TransUnion LLC, 951 F.3d 1008, 1016 (9th Cir. 2020), cert. granted in part sub nom. TransUnion LLC v. Ramirez, 2020 WL 7366280 (U.S. Dec. 16, 2020). TransUnion社は、代表原告が具体的かつ特定の損害を被ったことを認めた。しかしTransUnion社は他のクラス構成員が、「第3条の当事者適格のもと憲法上最低限必ず要求される被害の表示」を満たしていないと主張した。Id. 第9巡回区控訴裁判所はこれに同意し、重要な決定として次のように判示した。 (1)全く先例のない問題という点で、「規則23に基づいて認定されたクラスの各メンバーは、クラスメンバーに個別の金銭的損害賠償が与えられる金銭賠償訴訟の最終段階において、第3条当事者適格の基本的要件を満たしていなければならない」と第9巡回区控訴裁判所は判断、Id(強調追加) (2) クラスのメンバーは確かに Spokeo II. の下の当事者適格要件を満たしていた、Id. at 1024-25; Cert. Pet. App. at 16-18. (3) クラスが適切に認定されていた、そして(4)クラス全般にわたった損害賠償が適切に与えられた。TransUnion社は、第9巡回区控訴裁判所の意見のうち最後の3点について上訴した。Cert. Pet. App. at 16-18.
重要なのは、第9巡回区控訴裁判所にとっては全く先例のない問題である、すべてのクラス構成員は金銭的損害賠償の段階で第3条の当事者適格要件を満たさなければならないという全会一致の判断が、原告がこの判断に異議を唱えなかったために上訴されていないことだ。Ramirez, 951 F.3d at 1016. 上訴人であるTransUnion社は、Ramirezのクラス構成員全員が当事者適格を有していたという2つ目の(全会一致ではない)判断に申し立ての多くの部分を集中させた。参照:Cert. Pet. App.at 16-18.ここでの裁判所の判断は、単に法令に違反したことだけでは当事者適格を与えられる理由にはならないとしたSpokeo IIが生んだ一連の判例の中で最新のものとなる。Id.at 1017, 1024(Spokeo, Inc. v. Robins (Spokeo II), 136 S. Ct. 1540 (2016) を引用)。最後にTransUnion社は彼らがデュープロセス条項に違反していることを理由に損害賠償についても争っており、規則23(a)の典型性の要件が満たされていないことを根拠にクラス認定を求めて上訴した。参照:Cert. Pet. App. at 16-1. ただ、損害賠償と典型性に関する裁判所の判断が、全国的な影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。Id. 最終的には、クラスアクション訴訟担当者らは、クラスの中の誰が当事者適格を証明する必要があるのか、またその証明がなされたかどうかということに広範な影響を与えるであろう裁判所の当事者適格問題への判断を注視する必要がある。
上訴人も被上訴人も、巡回控訴裁判所の最初の結論に多くの言葉を割いてはいないものの、この判決はクラスアクションの最終段階での請求者に対して新たな当事者適格要件を創造する可能性から、注目に値するものである。参照:Cert. Pet. App., Cert. Pet. 第9巡回区控訴裁判所はこれまで、差止命令による救済を求めるクラスアクションの初期段階および最終段階において、代表原告のみが当事者適格を必要とするとしてきた。Ramirez, 951 F.3d at 1023(In re Zappos.com, Inc., 888 F.3d 1020, 1028 n.11 (9th Cir. 2018); Bates v. United Parcel Serv., Inc., 511 F.3d 974, 985 (9th Cir. 2007) を引用)Ramirezは、この巡回控訴裁判所が、最終判決の段階で個々の金銭的報酬を受け取る前に、各メンバーが当事者適格を持たなければならないとした初めての事例である。Id. at 1023. 巡回控訴裁判所は、反対意見を述べた裁判官も同意を示したその理由の中で、この判断は「最高裁の判例と、我々の司法制度の基本的な性質に明らかに従った」ものであるとした。なぜならばそうでない判断をすることは「単なる手続き上の手段であるクラスアクションを、個々には金銭判決を受けるに足るだけの損害を示すことができなかった個人が連邦裁判所から金銭判決を得るための媒体へと変える」ことになるからだと述べた。Id. at 1023-24, 1038.
上訴人の主張の大部分は2番目の判断にある。第9巡回区控訴裁判所はRamirez訴訟で原告に有利な結論を出すために第9巡回区控訴裁判所がSpokeo IIIで確立したSpokeo IIの再審判決である2つの部分からなるテストを適用した。Id. at 1025-26 (引用:Robins v. Spokeo, Inc. (Spokeo III), 867 F.3d 1108, 1111 (9th Cir. 2017)) 法令違反が当事者適格を満たすに十分な損害をもたらす場合を判断するこの審理は、まず、関連する規定が「純粋に手続き上の権利 」としてではなく、原告の具体的な利益を保護するために設けられたものであるのか否かを問う。Id. もしもそうであれば裁判所は次に、違反が実際に害をもたらしたか、または害をもたらす重大なリスクを提示したかどうかを判断する。Id. Ramirezの裁判所はこのテストに従い、「(上訴人が)多数の潜在的な債権者らや雇用者らに報告書を公開した事実は、すべてのクラスメンバーの具体的な利益に危害を加える重大なリスクを示すのに十分なものである」ために原告の適格性は明らかであると結論づけた。Id. at 1028. しかし、上訴人は意見を異にした。Cert. Pet. App. at 18-19. その最高裁準備書面において信用機関は原告は違反行為が実際に害を及ぼしたこと、または害を及ぼす重大なリスクをもたらしたことを示すことができなかったと主張するためにSpokeo IIを引用した。Cert. Pet. App. at 18-19 (引用:Spokeo II, 136 S.Ct. at 1550.) また、上訴人は、クラス代表者以外の他のクラス構成員が「(クラス代表者に)降りかかった不利な結果を被った」か否かについては「純粋な推測」であると判断した第9巡回区控訴裁判所の反対意見を好意的に引用した。Cert. Pet. App. at 25 (引用:Ramirez, 951 F.3d at 1041 (McKeown, J., dissenting in part)).
重要なのはこの訴訟のユニークな根底にある事実である。Ramirezで巡回控訴裁判所が指摘したように、信用組合の行為は「非難に値する」ものであり、「(信用組合が)消費者の信用報告書にテロリスト警告を軽々しく記載し、責任を取ることも、引き起こした損害を認めることも一貫して拒否していることに、陪審員が『激怒』していたのは当然であった」。Id. at 1037-3. しかし、反対意見が強調していることからも注目に値するのは、「クラスの他のメンバーに関連する...証拠が欠けており、この欠陥は推測では解決できない」ことである。Id. at 1038 (J. McKeown, dissenting).
これらの詳細な事項が裁判所の論拠にどのような影響を与えるかはまだ不明である。しかし、裁判所がクラスアクションの最終段階でクラスメンバーの当事者適格性要件を取り扱うか注意したい。そして、裁判所が4年前にSpokeoで取り上げた法令に基づくクラスアクションでの当事者適格について再検討することを予期しておくべきである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com