お客様にとってもっとも関心のある知財や独禁法・金融・労使関係などの最新の話題をお届けします。
御社の法務・経営戦略にお役立てください。
-
第9巡回控訴裁、証券詐欺および支配者責任請求の棄却を支持 (22/04/26)
2022年3月23日に米第9巡回控訴裁は、Twitter社とTwitter社役員2名に対する証券取引法10条(b)と規則10b-5に基づく証券詐欺の請求、および役員2名に対する証券取引法20条(a)に基づく請求を棄却したカリフォルニア北地区からの命令を支持した。虚偽であるとされている声明は、Twitterの収益性の高いモバイルアプリプロモーション(「MAP」)製品の特定のプライバシー機能におけるバグと、その「問題」を「修正」したというツィッターの声明に関するものだ。第9巡回控訴裁は、棄却を検討した結果、問題となった声明が作成された時点で重大な虚偽または誤解を招くものではなかったことから、原告は10条(b)、および規則10b-5に基づく請求をもっともらしく主張することができなかったと判断した。その代わりに、合理的な解釈をすれば、その声明は、TwitterがMAPのためのユーザーデータの共有を停止したことを示しただけのものであり、根本的なバグを修正したことを示したわけではないものであるとした。第20条(a)の請求が、第10条(b)および規則10b-5の請求から派生したものであるために、第20条(a)の支配者責任の請求も棄却された。
背景: 2019年10月24日、Twitterの四半期決算報告では、MAP広告システムに影響を及ぼすソフトウェアバグが開示され、2500万ドルの収益不足が報告された。一部のアナリストはTwitter社の株を格下げし、株価は20%以上下落した。決算報告から5日後の10月29日、投資家はTwitterとTwitterの役員2名に対し、2019年7月から9月にかけてTwitterのMAPシステムに関する声明と不作為を通じて証券取引法に違反したとして、カリフォルニア州北部地区で暫定的なクラスアクションを起こした。広告主がユーザーにアプリのダウンロードを促すMAPという製品は、広告主がユーザーデータにアクセスできる場合に最も効果的である製品だ。問題となったバグは、このデータ共有をオプトアウトしていたユーザーのデータを開示することとなったものであった。虚偽または誤解を招くとされた記述には次のものが含まれた。
1. 2019年7月26日の株主書簡および2019年7月31日のTwitterのForm 10-Qにおける、同社が 「広告プラットフォームと[MAP]の安定性、パフォーマンス、柔軟性を高めるための作業を継続」しているが、「まだそこに到達しておらず」、この作業は「幾らかの四半期にわたって行われ、収益には徐々に影響を与える 」という記述。
2. 個人の被告であるSegalの、同社は[MAPの改善に関して]「まだその作業の途中」であり、「まだ、その影響は緩やかに現れるであろうと(彼は)考えているような状況」であるとの発言。
3. 2019年8月6日の「パーソナライズされた広告の配信方法、および特定のデータを信頼できる管理・広告パートナーと共有する際の、設定の選択肢に関する問題を最近発見し修正した。」とのツイート、そしてTwitterのヘルプセンターによる「これらの問題を2019年8月5日に修正した。」との主張。
4. 2019年9月4日の投資家会議での、「MAPの作業は継続中 」であり、Twitterは 「既存のMAP製品の販売を継続 」しているとの声明。
2020年12月10日、カリフォルニア州北部地区は、2021年1月15日までに修正することを条件に、請求を棄却した。原告は、訴状を修正するのではなく控訴した。
第9巡回控訴裁の判決: Weston Family Partnership LLLP v. Twitter, Inc. 29 F.4th 611 (9th Cir. 2022) において、第9巡回控訴裁は、原告が請求を十分に述べることができなかったとした。
まず、第9巡回控訴裁は、社会におけるTwitterの特殊な役割を認め、「社会は、(ある部分ではTwitterのおかげで)最新のニュースを瞬時に知れる状態に慣れたのかもしれない」という事実に着目しながらも、これは証券法が即時の更新を要求していることを意味しているわけではないと述べた。また、Twitter社はMAPプログラムのバグによる不具合を直ちに投資家に通知する義務があったとする原告側の主張を退け、裁判所は、そのような義務を設けること自体が混乱を招くと指摘した。裁判所は、「企業は、社内でのすべての開発について、特に製品開発という紆余曲折を伴う場合、即座に最新情報を提供する義務はなく... 実際、そのようなことをすれば、証券市場は不安定になり、一瞬の出来事で株価が乱高下する可能性があるからだ。」と説明している。
原告は、2019年7月の声明が、開発が 「順調」であるという誤った印象を与えたと主張することで開示義務を主張しようとした。裁判所は、同社がMAPに関する作業の「まだ途中」であること、「MAPの作業は進行中」であることなどを含む同社およびその役員の実際の声明を検討し、その声明はプログラムが「軌道に乗っている」ことを示唆するものではないと判断した。むしろそれらの声明は、MAPの開発について、ほとんどすべての製品開発と同様にそれには「浮き沈みがあった」ものの、同社は進歩を続けていたという「漠然とした楽観的な評価」を伝えているのであった。裁判所はまた、7月の声明を「非常に不正確で曖昧なものであり、客観的な検証が不可能である」とも判断した。したがってTwitterは、特に以前の声明が 「限定的で曖昧」であったために、ソフトウェアのバグを直ちに開示する法的義務を負ってはいなかったのであった。
また、原告は、被告が2019年7月のMAPの進捗に関する声明を出した時点でソフトウェアバグを知っていたことを適切に主張することもできなかった。原告は、Twitterが「最近問題を発見し修正した」という2019年8月6日のツイートに依拠して、Twitterは7月にバグを知っていたに違いないと主張した。しかし、第9巡回控訴裁は、「時間的な近接性」だけでは、具体性をもった主張の要件を満たさないとしている。さらに、8月6日の声明が、被告が7月に問題を知っていたに違いないということの示唆であるとの主張をするために、原告は、8月6日のツイートと関連するブログ投稿を、修正された「問題」がソフトウェアのバグであることを意味すると解釈した。裁判所は、問題となった声明を文脈から再度検討し、8月のツイートとブログ記事は、いずれもユーザーのプライバシーに関する懸念に対処したものであると判断した。したがって「修正された」問題は、バグ修正ではなく、プライバシー漏洩に関するものであり、修正のタイミングは、7月にバグについて被告が知っていたことを知らせるものではなかった。
最後に、原告の請求は、問題とされた声明(その多くが「進行中の」作業に言及している)が将来予測であり、証券取引法のセーフハーバーに該当するという独立した理由によって棄却された。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com