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最高裁、1782条の国際仲裁への適用を大幅に縮小 (22/07/26)
1964 年に連邦議会は合衆国法律集第 28 編 1782 条(a)を改正し、連邦地裁が「外国または国際法廷での使用のために」一定の証拠の提出を命ずることを認めるようにした。 議会が 1964 年にこの法律の適用範囲を拡大し、「外国にある裁判所における司法手続」以外の行政手続および準司法手続を含むことを意図したことは疑いないが、議会が「外国または国際法廷」という表現に国際的な仲裁を含めることを意図していたかについては、裁判所の意見が分かれた。
最近のZF Automotive US, Inc. v. Luxshare, Ltd. 訴訟とAlixPartners, LLP, et al. v. Fund for Protection of Investors’ Rights in Foreign States訴訟ら連結訴訟において、最高裁は、2つの仲裁機関(ドイツに拠点を置く民間紛争解決機関に従って組織された仲裁パネルと二国間投資協定に基づき選定された国連国際貿易法委員会(UNCITRAL)の仲裁規則によるアドホック仲裁が「外国または国際法廷」を構成するかについて論じた。 いずれのケースでも下級裁は、これらの仲裁機関は1782条に基づく 「外国または国際法廷 」であると判断した。 しかし最高裁は、1782条に基づく「外国または国際法廷」は政府または政府間の裁定機関でなければならず、どちらの仲裁機関も「政府の権威を帯びて」いないことに基づいて、これらの仲裁機関は「外国または国際法廷 」ではないと判断した。
1. 合衆国法律集第 28 編第 1782 条における「tribunal(法廷)」の意味
最高裁が扱った最初の問題は、「1782 条における『外国または国際法廷』という表現が民間の裁定機関を含むのか、それとも政府または政府間機関のみを含むのか」であった。 この問題に取り組むにあたり最高裁は、「tribunal 」という語に焦点を絞ることから始めた。 最高裁は、辞書の定義から、この用語が「court(裁判所)」と同義に使用できることを認めたが、連邦議会の1782条に対する修正に照らすと、「tribunal」は「あらゆる裁定機関」を指すものとして広義に理解されるべきであるとした。 注目すべきは、最高裁がこのtribunalの広い意味自体が民間の裁定機関を排除するものではないことを認め、最高裁のその分析がそこでは終わらないと説明したことである。 むしろ最高裁は、「foreign or international」というフレーズが「tribunal」の意味を修飾していると説明したのである。 したがって最高裁は、1782条で使用されている 「tribunal 」は、「政府の権限を行使する裁定機関」を意味すると判断した。
最高裁は、1782条の「tribunal」が政府権限を行使しなければならないという判示を、1782条の歴史に目を向け、連邦仲裁法(FAA)の法令と比較することで支持した。 1964年に連邦議会は、1782条を修正し、「judicial proceedings」というフレーズを「procedures in a foreign or international tribunals 」というフレーズに置き換えた。 最高裁は、「tribunal」を政府の権限を行使する機関に限定したのは、連邦議会の修正と整合的であり、同法が対象とする公的機関の種類の拡大を示唆するものであると説明した。 最高裁によれば「1782条の主要な目的は友好」であり、連邦裁判所が外国および国際的な政府機関を支援することを許可することは、外国政府に対する尊敬を促進し、相互援助を奨励することになる」のであって、これは理にかなっているとのことであった。 法廷に民間仲裁機関を含むよう定義することは、1782条のこの中核的な目的を促進せず、国内仲裁の文脈では、仲裁前の証拠開示を封じ、仲裁パネルにのみ証拠開示を要求することを認めるFAAとの「著しい緊張」をもたらすことになるであろう。
2. 国際仲裁裁判はいつ「法廷」として認定されるか?
1782条は外国または国際法廷が政府または政府間であることを要求しているとした上で、最高裁は次に、問題となっている2つの仲裁機関が政府権限を行使しているかを検討した。 最高裁は、問題の仲裁機関はいずれも法廷として適格ではないとし、アドホック仲裁パネルが、ドイツの民間仲裁パネルよりも「難しい問題」を提示している状況にあると判断した。最高裁のその結論の根拠、特にアドホック仲裁に関しての根拠は、将来の1782条申請者に、仲裁機関が1782条の下で法廷として適格であるかについての指針を与えるものだ。
最高裁は、アドホック仲裁パネルの1782条のもとの法廷としての潜在的地位を評価する際に、「関連する問題(relevant question)」を「各国がアドホックパネルの政府権限行使を意図したかどうか」と設定した。 そのような意図はなかったと結論づけた上で、最高裁は、「政府および政府間機関は様々な形態を取り得る」ことを認識し、「主権者がアドホック仲裁パネルに公的権限を付与する可能性」に対して扉を開いておくこととした。その際、最高裁の判決は、関連する主権者が仲裁機関に政府権限を行使させることを意図したかという問題に関連するいくつかの以下に述べる要素(最高裁の表現では、「indicia(指標)」、「indications(示唆)」、「features(特徴)」、「other evidence(その他の証拠)」を認識した。
1. 仲裁機関が既存の機関であるか、紛争を裁定する目的で設立された機関であるか。
最高裁は、アドホック仲裁パネルは投資家対国家の紛争を裁く目的で設立されたものであり、既存の法廷ではないと述べている。
2. 仲裁機関が国際条約そのものによって設立されたのか、それともその主権者が設立に関与しているのか。
最高裁は、条約がアドホック仲裁パネルを創設したのではなく、むしろパネルの形成と手続きを規定する一連の規則を参照しているに過ぎないと述べている。
3. 仲裁機関が主権者に所属しているか。
裁判所は、アドホック仲裁パネルは主権者から「独立して機能」し、当事者によって選ばれた個人で構成され、主権者またはその他の政府または政府間組織との「公式な提携」を欠いていると述べている。
4. 仲裁機関が政府からの資金提供を受けているか。
最高裁は、アドホック仲裁パネルは政府からの資金提供を受けていないとした。
5. 仲裁手続が公開されているか。
最高裁は、特別仲裁パネルの手続は機密性を維持していると述べた。
6. 仲裁判断が公開されているか。
最高裁は、アドホック仲裁パネルによって出された裁定は、両当事者の同意がある場合にのみ公開されることに留意した。
7. 法廷の権威が、主権者が 「パネルに政府の権威を着せた」ために存在するかど。
最高裁は、当事者が仲裁に同意したためアドホック仲裁パネルは権限を持っており、権限を付与されたためではないと述べた。
最高裁の意見は、仲裁機関が政府権限を行使しているかを判断するための前述の考慮事項に言及しているものであるが、最高裁はこれらの考慮事項に順位をつけようとはしていない。また最高裁は、これらの要素が網羅的であるとも、強制的であるとも示唆していない。 したがって、最高裁の意見を受けて、一部の1782条申請者は、仲裁機関が1つ以上の前述の特徴を有する場合、外国または国際仲裁手続で使用するための証拠開示を求め続けることが予想される。 1782条と仲裁の間の物語はより限定された形ではあるが続く。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン
外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
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