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倒産・再建訴訟に関する最新情報 (23/03/24)
再編を目指す外国企業には、一般的には債務者に優しい米連邦破産法の利点を利用するために、(i)第11章の再編、(ii)第15章の外国手続の承認という2つの主要な選択肢がある。
I. 米連邦破産法第11章 再編
債務者は第11章の下、その事業内容、負債、資産を再編するために、任意で請願書を提出する。 第11章に基づく申立てを行うと、債務者の全ての債権者に対して自動停止(automatic stay)が適用され、債権者は債務者から金銭の回収や資産の差し押さえを試みることが禁止され、債務者に対していかなる法的措置も開始・継続することができなくなる。
米連邦破産法第11章の手続きは、経営難に陥った企業に対し、以下のような多くの利益を提供するものである。 (1) 破産裁判所から緊急の救済を受け、営業と従業員への支払いを継続する。(2) 資産を回収するために、対審手続きとして知られる訴訟を開始し、破産裁判所によりその紛争が迅速に解決される。 (3)訴訟を待たずに、文書や宣誓証言を含む即時かつ広範な証拠開示を得る。(4) 満了していない契約やリースを引きつぐ、または拒絶する。つまり、債務者は、有益と思われる契約やリースを継続するか、不利な契約やリースを排除するかを選択できる。(5) 先取特権やその他の利益を排除して、不動産を売却する、そして (6) 破産中に債務者が事業を運営できるように資金調達を実施する。
II. 米連邦破産法第15章 付随手続き
米連邦破産法の第15章は、外国倒産処理手続き、すなわち 「外国主手続き(foreign main proceeding)」の対象となる企業の米国資産の管理について規定するものである。債務者は、他国で破産手続が係属している場合、第15章に基づく手続を提出することができ、外国での手続が承認されると、米国の破産裁判所は外国の裁判所の判断に従う。(外国の裁判所の判決が米国の公序に明白に反する場合は除く)第15章では、米連邦破産法に根拠を持つ一部の訴因など、特定の救済は受けられないが、自動停止など、その他の救済は、裁判所が申し立てや外国訴訟の承認を認めたときに、後から効力を発揮する。
11章は本手続きであり、米国の破産裁判所は少なくとも理論的には、どこにいても、債務者のすべての資産に対して権限を持つ。 一方、第15章は付随的な手続きであり、米国の破産裁判所は、米国に所在する債務者の資産に対してのみ管轄権を有する。
III. 米国破産手続きの利点
第11章であれ、第15章であれ、米国の破産手続きには次の重要な共通原則がある。
米国では、破産裁判所は衡平法上の裁判所である。つまり、破産裁判官は、すべての当事者にとって公平かつ公正であろうとする方法で破産を管理する権利を与えられているのである。
さらに、米国の破産裁判所の手続きは透明性が高く、公開された訴訟事件一覧表(時には自由にアクセスができるウェブサイト上にて)により、破産事件で提出されたすべての文書にアクセスすることができる。本手続きにより、公聴会への出席や、事件のすべての利害関係者への十分な通知の提供が強いられている。
最後に、米国における破産手続きは一般に迅速であることが知られており、数日で審理が終わる緊急動議が認められている。通常の動議であっても、通常は数週間以内に審理が行われ、審理中に判決が下されなかった場合であっても、一般に速やかに裁決がなされる。対審手続や争訟を通じて破産裁判所に持ち込まれた訴訟についても、破産裁判所は一般に、他の米国の連邦裁判所や州裁判所よりもはるかに速い迅速な時間枠でそのような争いを審理し、裁決する。
米国の破産裁判官は、外国の債務者にとって重要な考慮事項である外国法の解釈にも対応することができる。実際、破産裁判所が外国法を解釈することはますます一般的になってきており、破産裁判所は米国連邦手続き規則のもとでこの実施権限を有している。実際には、この規則により破産裁判所が訴訟手続きのどの段階においても、外国法の専門家の証言を聞いたり、外国法を解釈した文書(英語に翻訳されたもの)を分析したりすることが可能となっている。また、裁判所が独自に外国法を調査することもこの規則により認められている。
破産手続きは、外国の債務者にとって非常に現実的な選択肢だ。米国での破産手続を利用するためには、外国の債務者が米国に居住しているか、住所、事業所、または財産を持っている必要がある。 裁判所はこの規定を広く解釈しており、債権者や銀行口座などに対する請求、たとえ破産そのものを目的としてそれが開設されたものであったとしても、米国内にわずかな財産があるだけで十分なものとされている。
このように米国での破産手続きは、アクセスしやすく、外国の債務者に貴重な利益をもたらすものである。また、米国の破産裁判所は、国境を越えた破産手続きを管理するための手段を備えているのである。
IV. 外国人債務者及び債権者に対する管轄権
しかし、米国の破産裁判所による破産事件の紛争解決における一つの制限は、その米国外の当事者に対する裁判権である。とはいえ米国の破産裁判所は、債務者だけでなく、「どこにいても、誰が持っていても」債務者の財産の管轄権を有するという点で特別な存在である。
しかし実際には、破産裁判所は米国外にいる債務者の財産に干渉する者に対して、その裁定を執行することはできないのである。破産裁判所は、そのような人物に対する判決を執行するための人的管轄権を欠いており、そのような場合には、破産裁判所の命令を執行するために外国の裁判所の援助が必要となる。
米国の倒産は、外国の債務者に多くの利益をもたらすが、倒産申請先を決定する際には、その固有の事情も慎重に考慮する必要がある。 国境を越えた倒産手続きはまだ始まったばかりで、多くの問題が未解決であり、未知の領域が多くある。外国人債権者にとって、破産申請に関する選択肢と制限についての知識は、自らの権利を守るために極めて重要なのである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
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