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特許訴訟に関する最新情報 (23/03/24)
2018年にトランプ大統領によって連邦判事に任命されて以来、Alan D Albright判事は、特許訴訟を迅速に裁判にかけることで知られる原告に優しい判事として評判を得ており、テキサス州Wacoを特許訴訟の温床として有名にしている。Albright判事の特許訴訟事件一覧表は当初、目覚ましいペースで増加し、2019年には全米特許出願件数の7%から2021年には23%に増加し、次点の連邦判事、テキサス州東部地区のRodney Gilstrap首席判事が担当する全米特許出願件数の3倍以上となった。ここ数ヶ月、Orlando Garcia前首席判事とAlia Moses現首席判事による一連の常設命令により、この数字は減少している。これらの命令の効果は、テキサス州西部地区Waco支部で新たに特許訴訟を提起する原告の減少によって立証されている。本稿では、Orlando Garcia首席判事(当時)による最初の2022年7月付の命令の発令から8ヶ月間の動向を探る。
2022年7月付命令によるWaco支部に提起された訴訟の無作為割り振り
2022年7月25日、当時のテキサス州西部地区首席判事Orlando Garciaは、Waco支部に提出された新しい特許訴訟は、テキサス州西部地区の12人の裁判官の間で無作為に割り当てられることを宣言する命令を出した。参照:Order Assigning the Business of the Court as it Relates to Patent Cases (Garcia, C.J.) (W.D. Tex. July 25, 2022) . 当初、訴訟関係者は、原告は自分の訴訟がAlbright判事に無作為に割り当てられる確率を8%しか期待できず、これは1人判事支部に特許訴訟を提出することによって以前は得られていた確実性からは大きな変化となるため、Waco支部での提訴件数が激減すると予想していた。しかし統計によれば、そうではないことが判明した。その後3ヶ月間、Waco支部に提出された210件の特許訴訟のうち、50%がAlbright判事に割り当てられていたのである。
2022年11月9日、当時のGarcia首席判事は、首席判事の職を退き、上級判事の地位に就く数日前に、その後の命令を出した。この新しい命令では、Albright 判事に「Waco支部のすべての訴訟と手続き」が割り当てられるとの言明がされていた。参照: Amended Order Assigning the Business of the Court (Garcia, C.J.) (W.D. Tex. Nov. 9, 2022) (強調追加). 11月の命令発令後、Waco支部の新規特許訴訟のうち、Albright判事に割り当てられる割合は一時的に増加し、2022年12月には約80%の高水準に達した。しかし、原告の弁護士は、新しい文言が先の7月の命令と矛盾していることや、12月にAlbright判事への特許訴訟の割り当てが急増したのが11月の命令によるものかについて、限られたデータではそれがまだ立証されていなかったために、11月の命令に対して懐疑的な姿勢を崩さなかったようである。
2022年12月16日、新しく任命された Alia Moses首席判事は、修正命令で矛盾する命令に対処し、Albright判事が「特許訴訟を除く、Waco支部の民事訴訟事件一覧表の 百パーセント(100%)」を割り当てられることを明確にした。参照:Amended Order Assigning the Business of the Court (Moses, C.J.) (W.D. Tex. Dec. 16, 2022) (強調追加). Garcia判事(当時)による7月の命令と11月の命令の間の明らかな矛盾は、新首席判事によってようやく対処された。しかし、この明確化とされている対応が、Waco支部に提出された特許訴訟の割り当てに影響を及ぼすとすれば、それがどのようなものかについては、引き続き不明な状態であった。
Waco支部における特許訴訟割り当てのデータ
12月の命令が出された後、Waco支部に提出された新しい特許訴訟のうち、Albright判事に割り当てられる割合は、12月の最高値80%から、2023年2月15日の時点で60%以下に減少した。これは、修正命令が特許訴訟の割り当てに実際に影響を与えたことを示している。さらに、Albright 判事が担当する全特許出願における割合は、2022 年を通して 18%未満に低下し、2022年1月から7月までの国内特許出願における割合である24%から低下した。一連の命令がもたらす完全な影響はまだ分からないが、初期評価では、特許訴訟割り当てに関する修正命令は、Waco支部への特許出願の流入を減速させると思われる。2022年7月25日から2023年2月15日までのデータでは、Waco支部の新規特許出願の大半をAlbright判事が引き続き担当していることから、Waco 支部に出願された特許訴訟が引き続きAlbright判事に割り当てられていくかについては不明である。
今後に向けて- 特許原告の戦略
このような統計に直面し、Albright判事に対する既存の関連訴訟を持つ原告は、その新しい訴訟をもがAlbright判事に割り当てられる可能性が高くなることを期待し、新しい特許侵害訴訟の民事事件記入表でこれらの訴訟について言及しはじめている。一部の原告は、訴状を提出した直後に「関連訴訟通知書」を提出するというアプローチさえとっている。この戦略の影響は、2022年7月25日から2023年2月15日の間にAlbright判事に割り当てられた特許訴訟の41%が、合計4人の原告(その全員が7月の命令以前にAlbright判事に対して活発に訴訟を起こし、特許訴訟を係属させていた)によって提出されたという統計によって証明されている。
結論
テキサス州西部地区の首席判事からの命令は、Waco支部に提出された新しい特許訴訟のうち、Albright判事に割り当てられる割合を減少させたが、現在までのデータでは、命令が当初の予想よりも少ない影響を及ぼしていることが示されている。時間が経てば経つほど、特許原告は、Waco支部に提出されたその新しい特許訴訟がAlbright判事に割り当てられる可能性を高めるための戦略を見出そうとし続けるであろう。確実に言えることは、今後の訴訟当事者らが、将来の訴訟を成功させるためにWaco支部の特許訴訟の割り当てに関するデータを注視し、追跡し続けるということである。
クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
この件につきましてのお問い合わせ先
マーケティング・ディレクター 外川智恵(とがわちえ)
chietogawa@quinnemanuel.com